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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

END ROLL

END ROLL

せがわ様制作『END ROLL』の感想です。

人を傷つけても何も感じなかった少年が、夢の世界で優しい人々との交流を通して更生していくRPG。

こんな方におススメ
・寄り道大好き!
・会話が変わっていないかこまめに話しかけたくなる
・暗い展開や重い要素も耐えられる

こんな方にはおススメしません。
・ハッピーエンド至上主義
・主人公が責められるのは嫌だ
・期間限定のイベント・アイテムはちょっとなぁ……後でまとめて回収したい

主人公のラッセルは重い罪を犯し、更生プログラムの実験台にされました。
薬を注射して見る夢の世界で過ごすうちに心が変化していきます。
同時に、穏やかだった世界に不穏な影が……。

このゲームはまず寄り道・サブイベントが豊富。
仲間が技を覚えるなど強化されますし、キャラクターの過去・内面が掘り下げられるので積極的に関わるべきです。
注意すべきは期間限定のものが多いことですね。
クリアする前にまとめて回収したかった。
進行に伴い、会話も細かく変わります。
町の人の頼みを聞いて同行という形が多いのですが、頼みを聞く前、仲間加入後、達成後と挨拶回りが楽しい。
仲間と二人で映画館に入るイベントもあり、鑑賞後の感想を聞けます。 
 
サブイベントや会話の根底にあるストーリーはどうかと言いますと、一日目の、町を訪れた直後のほのぼのとした雰囲気からは考えられない重さを見せます。
冒頭の紹介文に嘘は書いていません。
更生したからといってハッピーエンドにはならないだけです。
何しろタイトルが『END ROLL』。終わった後の話です。
ラッセルは取り返しがつかないことをしてしまい、もはや変えられません。
普通主人公が責められたら「主人公は悪くないだろ」とか「悪い部分はあるけど、そこまで言われるほどじゃない」と思いますが、この作品では言われても仕方ない。
人を殺しても心の痛みをろくに感じなかった主人公が罪悪感を得るための実験ですから、現実で批判されるのは当然ですし、己を責める気持ちが芽生えて夢に反映されるのは望ましい展開と言えるでしょう。
主人公に非があっても責められるのは真っ平だという方はプレイしない方がいいと思います。
冒頭で「イカレ野郎様」呼ばわりされますから。
いきなりイカレ野郎と言われて驚きました。
「とんでもないボール投げてくるな」「何やらかしたんだ主人公」と思いつつ進めるうちに「イカレ野郎呼ばわりされても仕方ないわ」と納得します。
火刑になるべきは貴様だと言われた時も反論する気は全く起きませんでした。その通りとしか言えねえ……。
だからこそ、辿る結末も明るく楽しく夢いっぱいになるわけがない。
「〇〇が救われてほしい」と思うことがあっても、救われるようならそもそも登場しません。
それでもかまわんという方におススメしたい作品です。

物語を彩る音楽やキャラクターの動きも見逃せません。
曲はイベント、戦闘、どのシーンも合っていて、世界観を描き出す役割を果たしています。特に演出に痺れたのは哀悼者戦。ボス戦の曲は全部好きです。
ドットの動きも細かく、戦闘中は動いて攻撃する姿が可愛いしカッコいい。
イベントシーンでも目を閉じたりしゃがんだり。
会話の量だけでなくこういったところでも作りこまれています。



 
ここからは各キャラについて。
ラッセル:いきなりイカレ野郎様呼ばわりされるのも納得の主人公。
ボス戦ではバフかけてからひたすら殺意を込めて殴ってました。
今まで倒してきたボスの名前を踏まえて彼が最後になったもの・称号を考えると、「あぁ……」となります。

タバサ:ひたすらいい人でメンタルに弾丸を撃ち込んでくる。
怖がりで荒事には向かない性格だが、ラッセルの力になろうとしてくれる。
そんなに人が良くて大丈夫かとツッコみたくなる。その答えは作中で示されています。
戦闘面では豊富な属性攻撃を持ち、単体攻撃も全体攻撃も可能で、安定した火力担当。
最初から最後までパーティーにいました。
ガーデニア:明るくて前向きで優しくて可愛くていい子。
だからこそ「なぜ天使じゃないんだ……」という理不尽な怒りを抱いてしまう。
ガーデニアマジ天使、と言えればよかったのに。
戦闘ではMPがすぐ切れるのであまり入れませんでした。
コーディ:最初「ツンデレ?」と思いましたが、思ったより素直でした。
全体回復を覚えさせて補助や回復をしていました。
第二武器が魔法少女っぽくてそちらばかり使っていた。
ガーデニアが天使ならコーディは女神ということで。
ドグマ:そっけない言動のそこかしこからにじみ出るいい人感。
第二武器が強い上にロマンがある。
イベントがコーディとの二択になるのが残念。

閑照:若いはずなのにおじいちゃんという印象がついてしまった。
全体属性防御が役立つ。
ミレイユ:好きです。
「突進して抱きしめたい」好きではなく、「こういうキャラもいてほしかったんだよね」という方向で好きです。
日記を読んで一気に好きになりました。
特に描写の細かい部分。ゾクゾクした。
普段の優しさが演技だったら話は単純ですが、本物でしょうから味がある。
ザクセン:最初は「可愛くて一途な女性に慕われてうらやましいなちくしょー」という感じでしたが、病院イベントの後だとコメントに困る。
パーティーに加入しないのが残念ですが、仕方ない。
ユーミ:腕っぷしの強いお姉さん。
加入が終盤なので特性を活かせなかった気がする。
情報屋:ラッセルに対して辛辣。ただ嫌っているのではなく、ラッセルのことを理解し、導こうとしている。

ここからはサブキャラ。
フェアリア:「おっとりしているが怒ると怖いお姉さん」枠。
パーティーに加入してほしかった。
ワープを利用しようとしたら一回目で『ラッセル』に飛んでしまい、彼女の仕業じゃないのに怖いイメージがついてしまいました。
その後レイモンドとのやり取りでやっぱり怖い人だと思った。近寄りがたい。
レイモンド:The・スケコマシ。
二丁拳銃はロマンを感じる。
ぼったくりの印象が強い。
ユエ:苦労が多そう。頑張れ。
ウォルター:口が悪い。
魔導士っぽい服装をしている。技のエフェクトもそれっぽくてカッコいい。
実験台にされている死刑囚&その夢の世界の住人相手ならば、突き放すのも当たり前だと分かっています。
ですので仲良しごっこをやれなどとは思いませんが、もう少しマイルドさも見せてほしかった。

隠しボスを倒した時のメンバーは、
ラッセル:バフ&攻撃!
タバサ:淡々と攻める。
コーディ:全体回復しつつ、たまに攻撃。
閑照:属性攻撃に備えて入れた……が属性攻撃はこなかったので攻撃したりアイテム使ったり。

最後の相手はタバサになりました。
家が一番近く、最初に挨拶した住人なので。
……それだけでなく、彼と挑んだ初めてのボス戦や夜のイベントを見て、「これはこういうゲームなんだ」と実感したためでもあります。

ここからはネタバレもあります。

前半は人の命を奪っても平然としているラッセルの怪物っぷりが、中盤から徐々にどうしてそうなったかが描かれていきます。
悲惨な環境が描写され、怪物へと育った経緯に納得できます。
彼が手にかけた相手も、何も悪くない者だけではなく、罪を犯した人間やクズが含まれていることが判明。
だからといって、ラッセルは悪くないと言うつもりはありません。
はっきり言い切れるのはユーミの件くらいです。閑照やミレイユも、本人の意思や恩返しだったにせよ断言はできない。
何より、理不尽に命を奪われたタバサ、ガーデニア、コーディ、ドグマのことを考えると……。
もちろん、境遇に同情したくなります。
環境が酷く、両親は最悪。あんな境遇で道徳心や倫理観を身につけろと要求するのは酷です。「普通は簡単に人の命を奪ったりしない」と言うのは容易くても、彼はその「普通」を学ぶことができなかった。
それでもラッセルは越えてはならない一線を越えてしまった。
そんなことは彼自身が誰よりも知っていて、TRUE ENDにつながります。
  
ラッセルの境遇には同情するけど所業は受け入れられない、結末も納得という結論に至ったのに考えてしまう。
幸せを実感したのが数日間、それも夢の中というのは残酷な話です。
夢の住人達についても考えたくなります。
確実に、本物とは違います。ラッセルの願望や、実験のための誘導・調整で動かされている部分はあるでしょう。
しかし、何もかも都合よく作られている人形ではないと思います。
一番ラッセルにとって都合のいい展開は、「プログラム完遂のため、ある程度罪悪感を覚える」→「その後は住人が突き放して距離を置き、心が痛まないようにする」ですから。
彼らの感情はどこから湧き上がったのかなど、考え出すとなかなか止まらない作品です。
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