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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

からくりサーカス感想 10

からくりサーカス感想 10



ブリゲッラに殺されそうになった涼子は「アンタなんかよりもっとカッコイイ人形を知ってる」と発言。
アルレッキーノ、二回も「カッコイイ」と言ってもらえてよかったな。
とどめを刺そうとしたブリゲッラの前に立ちはだかったアルレッキーノの背中が頼もしい。
しかし性能の差はいかんともしがたく、連続攻撃を食らい、一方的に痛めつけられる。
ボロボロにされて座り込んだ姿が何故か好きなんですよね。
「潔く滅ぶがよい。それが美しさだ、アルレッキーノ」
昔の自分と同じことを言われたアルレッキーノの脳裏に浮かんだのは鳴海の姿。
「彼は言った。滅びるから美しいのではない。滅びを知ってもなお、己の存在を肯定できる……その姿こそが美しいのだと」
帽子を取り、闘志に満ちた眼差しで立ち上がる。
その姿こそが美しい。
平馬から礼を言われて命令だからと返す時もわずかに動じていますし、人形であっても変わることができるのだと思いました。

ブリゲッラもピンチになった時に仲間に助けを求めなかった理由を訊かれ、
「おまえなら、助けを求めるのか?」
と訊き返します。
こういうストイックな敵が大好きだ。

自動人形の身でありながら、主を助けるために人形破壊者の前に姿を現そうとするアルレッキーノ。
「私は、その御方のためならなんでもするのさ」
と言い切った。
鳴海から身体を切り裂かれてもまったく動じず、反撃もしない。
アルレッキーノの想いがまっすぐな分、鳴海の態度に少々腹が立つ。

コロンビーヌも抱きしめてくれた勝のために、自分を犠牲にして彼を助ける。
ディアマンティーナとの会話が怖いです。空気がピリピリしてる。
「ワタクシはフェイスレス様の恋人だ――っ!!」
相手が愛しているのは別の人なのに恋人気取り。造物主そっくり。
首をはねられ、このまま終わるのかと虚無感に襲われたコロンビーヌは勝に抱きしめられた。
ずっと、抱きしめられることが夢だった彼女。
念願かない、嬉しいなと繰り返す彼女と、何度も助けられたのに今まで信じていなかったことを悔やみ、涙を流す勝。
夕焼けのシーンなのに、なぜコロンビーヌを抱きしめる背景が雨のように描かれたのか疑問に思い、『藤田和日郎魂』を読んで解決しました。
大人型の頃に読んでいた恋愛小説の一節に「滝のような雨の中~」という一節があったため、それと対応しているのですね。
「首だけになって抱かれる」最期は最初から決まっていたらしいです。
それも納得の、満足のいく退場の仕方でした。

「もう一度笑って」と願うしろがねの思い浮かべた鳴海の笑顔が優しく、破壊力があります。
現実の鳴海は「オレはあの女を殺す!」ですから、差がキツい。
ミンシアの態度は鳴海以上にひどい。
鳴海に同行した時も「鳴海のせいで父が病気になった」と思い込んでいきなり襲い掛かってきましたし、抵抗しない相手に対して罵倒しながら殴りかかるのが武闘家のやることか?
サハラ戦で大勢の「しろがね」が死んでいくのを目撃して人格が変わってしまったのなら受け入れやすいのですが、刺々しい視線の一番の原因は「フェイスレスがエレオノールを狙っているせいで世界中がゾナハ病に苦しんでいる」からでも「パンタローネのせいで父が死んだ」からでもなく、「鳴海と一緒に戦うのは自分」という嫉妬からきていますから。

三牛親子の裏切りは腹が立ちますが、戦う力などろくに持たない一般人ならば無理もない。
それを知ったギイは暴露しない。過去の自分を思えば、三牛親子を裏切り者だなんて糾弾できるはずもない。
エレオノールを憎悪する鳴海を止めるため、彼は決闘を申し込みます。
「僕にとってはいかなる時、いかなるものにも優先する――大切な妹のような存在だ」
そのわりには、きちんと事情を説明しなかったせいでややこしいことになってしまったと思いますが。
死期が近いことを悟った彼は時間稼ぎのために一人残り、敵の大群を相手にすることに。
勝が一緒に来るよう呼びかけますが、拒否。
「今、人間達は命をかけて自分の舞台を踏んでいるのさ。ここは僕の舞台――そして君は君の舞台で命をかけろ」
胸の内で自分の妹のような存在に呼びかける。
「幸せにおなり……」
母の顔の人形に抱かれ、穏やかに微笑んで逝く。
最後の一ページが綺麗でした。

ヴィルマの退場は無理矢理因縁持たせた印象が強いため盛り上がりきれない。
アメリカで活動していたのがジェーン一人というわけでもないだろうに、宿命の対決みたいな構図に持っていこうとしてもなあ。
「黒のヴィルマの流星は……弾丸よりも速いのさ」
という決め台詞や最後に見た夢には熱くなった。
藤田先生の作品には「人間を殺した業を負う者は死ぬ」というルールが根底にあるように思えます。改心して主人公達の力になった者も変わらない。
生きて償う道も見たいところですが、描き方というか着地の仕方が難しいとも思います。
 
少しでも鳴海としろがねが一緒にいる時間を作りたくて列車を守る仲町サーカスの面々。
鳴海と仲町サーカスの関係が好転する様をもっと描いてほしかったと思います。
彼らの意気込みもむなしく冷たい空気が漂う中で鳴海が爆弾発言。
「おまえのロールキャベツのがマシだけどな」
いつ思い出したんだ!?
思い出してその態度ですか。
鳴海は大好きですが、しろがねへの言動はさすがに酷い。
仲間が大勢死んだのに自分一人が幸福や安らぎを得るわけにはいかないという戒めか。
態度を軟化させては、現在苦しんでいるゾナハ病の患者に顔向けできないという意識か。
宇宙から生きて戻れないことを覚悟しており、期待をなくすためか。
そのあたりの葛藤を詳しく描いてほしかった。

『暇乞い』
題名だけで……!
ハーレクインとブリゲッラの迎撃のために、パンタローネとアルレッキーノが最後の挨拶に。
最後の四人と比べると横のつながりが強い気がします。
特にアルレッキーノとパンタローネは終盤まで登場するだけあって、友情が感じられます。
「おまえは強い」
と鳴海に言い切ったアルレッキーノに涙が出そうです。
今までアルレッキーノの想いは一方通行でしたが、ようやく鳴海にも伝わった。
人間のために戦おうとしている二人になんと言えばいいのか、迷うしろがねにこう告げる。
「難しき事ではありません」
「我々は貴女様が為に存在するのですから……こうおっしゃってくださればよろしいのです」
「戦え、そして」
「勝て、と」
これらの台詞だけで涙腺が緩みます。
忠誠を貫く臣下にしろがねは命令する。
「……じゃあ、戦って、勝ちなさい」
「そして……かならず戻って来なさい!」
戻ってくるよう付け加えたことに感謝せずにはいられない。いい主人だ。

嬉しそうに客室からぴょんと飛び出した二人の、活き活きとした顔と身振り!
人形だとは思えません。
「“フランシーヌ様”に御命令を賜った……」
「ああ、初めて“戦え”と」
「うむ……うむ……」
本当に喜んでいることが伝わってきます。こちらまで嬉しくなってくる。
今までは戦う機能を真に活かしてはおらず、笑わせるために破壊を振りまくことばかりだった。力と目的が結びついておらず、すべて徒労に終わり、戦う意味も失っていた。
だが、ようやく心から望んで戦える。活かすことができる。

木彫りの鳥を涼子に渡すよう法安に頼むアルレッキーノ。
彼女から礼を言われた時、経験したことのない、不快ではない感覚を味わった。再び礼を言わせることができるかもしれないと作ったが、今となってはもう渡すことはできないだろうから法安に頼む。
「もしもそれをリョーコが気に入れば……その時の顔はおまえが見ておいてくれ、法安」
「私が前に感じたように、その顔が……そよ風に波立つ湖面に映る、星屑のように煌めいているかを」
何だこの台詞は。
カッコよすぎる。
他のキャラクターなら気取るなと言いたくなりますが、アルレッキーノならば自然。さらりと言ってのける。
自分が見てくれよ、頼むから。
きっとアルレッキーノの心に残る笑顔で感謝してくれるはずですから。

法安から一緒にサーカスをするよう誘われ、
「歌も……歌えるんだ」
と返すパンタローネが素敵。
「ああ、聞いてくれ法安。いつか、天幕の中でな」
だからやめてください。
フランシーヌ人形の最期を思い出します。
サハラ戦までは「魅力的な悪役だからこそ、強敵として華々しく散ってほしい」と思っていたのに、いつの間にか私の中では「倒されるべき敵」から変わっていました。

いよいよアルレッキーノとブリゲッラの再戦。ハーレクインとパンタローネの対決。
鳴海に対して使わなかった力も、ブリゲッラが相手ならばためらいなく振るえる。
『神をたたえよ』が強すぎる。「真夜中のサーカスの楽士たる証拠!」と言い切るだけはある。
サハラ戦で鳴海に使わなかったのは、失望しつつも敬意を捨てきれなかったためでしょうか。
近くにフランシーヌ人形がいたという理由もあるでしょう。
勝てると思われた時、ブリゲッラが素顔を見せて一瞬で身体を消し飛ばす。
読んでいて何が起こったか分からず、呆然としました。
彼の体には無数のミサイルが。
こんな武器を使っては達成感など味わえないから封印していた。
格闘技で敵を粉砕することが誇りであり、喜びであり、自分の全てだと言い切ったのは、己の能力への嫌悪から生じるものだった。ダイの大冒険のミストバーンを連想します。
体や顔を半分近く削られたアルレッキーノは倒れ伏す。
これで終わりなのかと叫びたくなりました。
あまりにもあっけなさすぎる……!
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