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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

からくりサーカス感想 9

からくりサーカス感想 9



オリンピアに乗って火器を乱射する鳴海の姿はルシールの時と構図が似ています。
ギイはエレオノールを憎む鳴海を見、彼女を守るために戦うことも決意。
誤解を解こうと、エレオノールに罪はないと語りますが、鳴海は聞き入れない。
迫る掌の描写が凄まじい。
根底には苦しんでいる人々を助けたいという想いがあるからやりきれない。
「人間の怒りには、真っ赤に爆発するものと……静かにゆらぎながら……真っ青に燃え続けるものがあるのさ」
とギイがクピディアーに語るシーンは美しい。
ギイは熱いとかカッコいいとか言いたくなるけどそれ以上に美しいという言葉が似合う。

しろがねの世話をやく最古の三人があれこれ提案してはねのけられてしまう。
うろたえる三人に胸が痛む……。
彼らの忠誠を受け入れることはできないしろがねですが、
「これ以上人間を傷つけることは許さない」
と命じます。
この命令から最古の三人に変化が。

エレオノールを主とみなして仕える三人をハーレクインもディアマンティーナもバカにしますが、フェイスレスの表情はどこか憂鬱そう。
別人なのに同一視してこだわっているのは彼も当てはまりますからね。
鳴海の活躍を聞きたがるエレオノールに、身振り手振りを交えて語るアルレッキーノ。本人はどこまでも真面目ですから微笑ましい。
彼の鳴海への敬意は作中で幾度も語られます。

バンハート博士達がゾナハ病を治す機械を完成させた。
『うしおととら』のハマーを思い出しますね。戦闘能力は低くても、得意とする分野で力となる展開に燃える。
窮地に陥っても他者を勇気づけるバンハート博士が男前。
機械に鳴海から託されたぬいぐるみの名前をつけるのもしゃれている。
博士が惨殺されそうになった時、鳴海が到着。
「たかが人間かどうか! 思い知れ、バカヤロウ!!」
博士の分まで殴ってやれ、鳴海!

ブロム・ブロム・ローと鳴海の戦いは熱い。
「おまえにこの限界状況が越えられるわけはないのだ! おまえが人間の故になァ!」
「越えるさ……何度だって越えてやる」
彼は一人ではないのだから。
ロッケンフィールドやダール、ティンババティの想いをこめた攻撃で、ブロムを砕く!

銃弾から子供をかばったジョージですが、トムをはじめとして皆から怖がられてます。
かつては自動人形より人形みたいだったのに、阿紫花との会話で笑ったり、非合理だと言っていた煙草を吸ってみたり大幅に変化。
子供達の恐怖を和らげようと法安が芸をした時にはピアノを弾きさえする。
自分を恐れていた子供達は、笑いながら拍手してくれた。
トムから「ピアノをまた弾いてね」と言われ、何を思ったのか。
そこに襲ってきたのはしろがね-Oよりさらに高性能の、全身を機械化したOの一人。
ぽっと出の敵ではなくナイアあたりと戦って欲しかったです。サハラ戦でもジョージを馬鹿にしていたので。

「私は……ピアノをまた弾いてねと言われたんだ」
笑顔で同じ台詞を何度も繰り返すジョージ。よっぽど嬉しかったんだろうな。。
性能が上の強敵を倒した彼は、やりたいことが見つかったと告げ、仰向けに倒れたまま指を動かす。まるでピアノを弾いているかのように。
「さぁ、次は……あの子たちに何を弾いてやろう……」
最期を看取った法安に
「バカタレ……そんなくやしそうなツラで逝きおって」
と言わせるのが上手い。
穏やかな笑顔のまま石と化したはずなのに「くやしそうなツラ」と表現するんですよね。
やっとやりたいことを見つけたのに、そのために戦い守り抜いたのに、果たせない無念を感じさせます。

阿紫花vsパンタローネも熱い。
見逃そうとするパンタローネに対し、阿紫花は以前「どけ」と言われて従ってしまったことを思い出し、戦いを挑む。
フランシーヌ様を笑わせることが使命であるパンタローネを挑発し、相討ちにまで持っていく。
使命を優先するキャラクターは阿紫花との出会いによって変化がもたらされますね。
法安とパンタローネの会話も渋いです。
命を受けるべき相手の言葉を守れなかった。
彼らが人間を殺戮してきたのは主を喜ばせ笑わせるためだったが、しろがねから禁じられ、その命令すら守れない自分に作動している意味はない。
抵抗しないから破壊しろと言われた法安は岩を持ち上げ、おろします。
誰かの命令を忠実に守る機械――道具に「いい仕事をする」道具や「悪い仕事をする」道具はない。仕事をするのは人で、そこには上手か下手かしかない。
いい使い手の使う道具は壊れても修理すればまた役に立つ。
人間ではなく「道具」でも生まれ変わることができると思っている法安は、サーカスにくるよう誘います。
アニメでも見たかったやり取りです。

自国にこだわっていた曹長が国家の枠を超え、人類のために戦おうとする姿勢に好感が持てる。
ギイも足をやられてほとんど動けなくなっても戦い続ける。
鳴海が助けに来ると信じ、皆に生き延びろと告げて。
ボロボロになったギイを殺そうとする人形たちですが、それを阻止したのはパンタローネでした。
人間を傷つけるなと命令されたから戦うまで。
こういう忠誠一筋な悪役は読んでいてテンションが上がります。
人間のために足止めをするパンタローネですが、敵の数が多すぎるため敵の攻撃に傷ついていく。
鳴海は破壊されそうになった彼を抱え、脱出します。
情報を引き出すという目的があるとはいえ、サハラで死力を尽くして戦い、仲間を殺した憎い敵を連れていくのかと驚きました。
同時に安堵も覚えました。ギイを助けたことが大きかったのでしょう。

勝を追ってきた涼子がアルレッキーノと出会う。
この二人の組み合わせは大好きだ。
もっともっと見たかった。
殺されそうになった涼子をアルレッキーノが助けて心温まる交流開始かと思いきや、
「おまえは私の見えぬ所で死ねばよい。私の前から疾く消えよ」
ドライでした。
人間を傷つけるなという命令があったから助けただけで、それ以上のことはしない。
簡単に情に目覚めても違和感あるので、好ましい流れです。

涼子も引き下がらない。
今にも殺されそうになっている友達がいるから、諦めるわけにはいかない。
勇気を振り絞って挑発する。戦闘力の無い少女が精一杯の意地と機転を見せる展開、いいな。
立ち止まり、「……なんと言った、人間?」と聞き返すアルレッキーノの顔が怖い。
そして、平馬を助けるシーンの、腕を交差させる姿勢がカッコいい!
「人間が傷つくのを見過ごしても……フランシーヌ様が笑ってくださらなくなるそうだ」
とO二名を秒殺。
強い!
「フランシーヌ様」の存在があるからこそ強さを取り戻したのかもしれません。
オンボロ人形だとバカにしていた相手に瞬時に斬られたO二名は……。
Oは性能に驕り、慢心しきっている印象を受ける。

重要なのは戦闘後。
「あ……ありがとう!」と眩しい笑顔とともに礼を言われたアルレッキーノは、奇妙な思考を自覚します。
今までどんなに頑張っても敬愛する主人を笑わせることができなかったのに、人間の少女は彼に礼を言い、笑いかけてくれた。
アルレッキーノ……。
悪役が感謝されて戸惑う展開が最高に好きです。
その時点では優しさに目覚めていないと、もっと好きです。
照れ隠しではなく本気で「人間が死のうとどうでもいい」「別に助けたわけじゃない」と思っていた状態から、助けよう、守りたいと思うようになるのがツボなので。

巻末おまけで「ゾウより強い奴と戦いたい」と泣きべそかいてるブリゲッラが可愛い。
「ゾウから下りたら?」というツッコミに笑った。
「!! クジラとは強いのか!?」
とえらい勢いで食いつくブリゲッラは天然だと思います。
そのままクジラを釣りにいくのもシュールですが、なぜ小舟の上でもゾウに座っているんだ。
そんなにゾウが好きなのか。
というか、ブリゲッラの性別がわかりません。
男だとばかり思っていましたが、よく考えると一人称が「わたし」で、外見も顔を隠しており、どちらともとれます。
アニメでは男の声でした。
他にも勉学青年版ハーレクイン、トップブリーダーとしての自信を喪失したドクトル・ラーオなど、おまけが充実。
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