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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

金色のガッシュ!! 感想 9

金色のガッシュ!! 感想 9


15巻 Level.~Level.

・ゴーム戦
「ウソぴょん」などと言い出すミール。
素の乱暴な喋り方のほうが好みです。
奥義を破られ、送還されるアースは消滅の恐怖に怯える。
怖い、助けてくれと叫ぶ姿が痛々しい。
皆が皆、「やるべきことはやった」と満足して微笑みながら消えるわけではない。
色んな退場があった方が楽しめる。
ただ、ファウード編を突破してここまで生き残ったキャラが担当するのは……。
エリーの言葉によって希望を取り戻したのがせめてもの救いか。
奥義を邪魔されたり真っ向から破られたり恐怖に叫んだりするせいで、実力があるはずなのに強キャラ臭を感じにくい。
異なる一面を見せて深みが出たものの、相手に打ち勝つまではいかなかったのが残念です。

・VSクリア・ノート&ヴィノー
真っ先に思ったことは、「髪の毛鳥の巣みたい」。
ヴィノーは赤子なのに呪文を使いこなす。
アンサー・トーカーもびっくりの高性能赤ん坊。
彼についてはツッコんでは負けな気がする。グスタフ枠ですね。
アシュロンの真の姿は予想通りカッコいい。
やっぱりドラゴンはロマン!
風貌を裏切らぬ実力を披露する。
これが竜族の神童。
術の威力と素の身体能力を合わせて恐ろしい力を発揮する。
エルザドルもクリア戦に備えて修行していたら、この域に到達できたんだろうか。
……あの時点のバリーじゃ絶対勝てないな。
アシュロンの力が圧倒的だから目立ちませんが、リーンもリーンで強力な呪文ガンガン使ったり相手の詠唱直後の隙をついたりしてるんですよね。
化物同士の戦いについていってるので十分おかしい。
クリアとアンサー・トーカー持ちのデュフォー&ゼオンがいなければ、このペアが蹂躙して終わったんじゃなかろうか。

アシュロンとリーンをも圧倒するクリア。
「我がライバル」というのはただの皮肉か? それとも本心か?
完全体の反応を見ると後者かもしれない。
「皮肉のつもりだったが、心の奥底では認めていた」だといいな。
ガッシュが止めに入り、クリアが魔物を滅ぼそうとする理由を尋ねる。
理由は単純、そう生まれてきたから。
本能や使命に従って滅ぼそうとしている。
シンプルで分かりやすい。
「さあ、全てをかけろ! 僕はその上をいく力でお前達を、魔物を滅ぼす!!」
この台詞には燃えました。
この時、きっと偉大さを感じさせるラスボスとして君臨してくれると興奮しました。

・アシュロンの夢
アシュロンの語る魔界像はかなり理想に近い。
アシュロンが王になってもいい世界が築けただろうな。
皆が仲良くできる魔界。
力の強い者が弱い者を助け、賢い者が知恵を他の皆に教える。
色んな種族が助け合う、差別のない世界。
さすが竜族の神童、王候補に相応しい模範解答だ。
アシュロンの体格で小人族のビールを飲んだらあっという間になくなるのではと思いましたが、その分畑を手伝うからいいか。
頭一つ残っていれば生きていられる?
とんでもなくタフだな。
バリーはどうやってエルザドルを倒したんだ……。
アシュロンとリーンの出会いももっと詳しく見たかった。
飄々としている男も、さすがに真の姿に驚愕したか。
「何もない」彼はスリルを求めて力を貸した。
彼らの戦いも気になる。
アシュロンをかいくぐってリーンに怪我させた魔物って、相当強かったんじゃなかろうか。

・作戦会議
アシュロンの奮闘でクリアが撤退したため、修行パートに突入。
指導教官はこの方、デュフォー!
淡々と頭に指突っ込んでるのに、ブラゴに対しては何故か笑顔。ブラゴもピキピキきてる。
「心のどこかでパートナーに対し、余計な気遣いが生まれている」
ほほう。
シェリーを気遣っているんですね。

・修行の成果
「キャンチョメにアンサー・トーカー無しなのは当然だけど、バオウは使用可!?」と驚きました。
冗談でも何でもなかった。
後から考えると、バオウ解禁くらいしないと太刀打ちできない。
ガッシュに勝てる力を得て浮かれるキャンチョメ。
忠告するデュフォーの言葉には重みがありますね。
彼自身、強大な力を秘めていたために人生を狂わされたわけですから。

・まさかの
キャンチョメ&フォルゴレにスポットライトが当たったと思ったら、パピプリオとルーパー再登場。
本当に、この二人は予想外のところに現れる。
まさかラスボスとの最終決戦が近づく中で出てくるとは。
彼らを初めて見た時、残り十名の中に入ると予想した読者が何人いることか。
紙粘土でライオンを作ろうとするキャンチョメに対し、カバが好きだと答えるフォルゴレ。
この時点では「何言ってるんだ?」と首をかしげました。ライオンの方が強くてカッコいいというキャンチョメに同意。
ちなみに私は狼が好きです。
キャンチョメから友達と言われて無邪気に喜ぶパピプリオが可愛い。
すっかり保護者目線のルーパーもいい味出してる。
掘り下げられると退場が惜しくなります。初登場時からは考えられないくらい愛着が湧いた。

クリアの保護にストレス溜めてストライキするゴームが可愛い。
「ゴー! ゴーゴー!」って……ミールも呆れている。
でも、帰ろうとするパピプリオとエンカウントした姿は紛れもなくボスキャラ。
終盤の大ボスのような威圧感。
パピプリオがさりげなくディオガを使用している。
百人の子供に選ばれるだけあって、終盤まで生き残った子は皆立派な実力を身につけています。
体を張ってパピプリオを逃そうとするルーパー。
何故そこまでするのかと問われると……。
「私はあなたの、お母さんだから」
亡くした息子と重ねて、愛を注いできた。
まさかこの局面で、ここまでパピプリオ&ルーパーペアが掘り下げられるとは。

友達を傷つけた相手に、キャンチョメの新たな呪文が炸裂する。
相手の呪文を消したり、返したり、ここまででも大概ですが……反則的な呪文が牙を剥く。
シン・ポルク。
使い手がキャンチョメ&フォルゴレだったからよかったものの、もし外道なペアがこの術を使えたらと思うとぞっとする。
それくらい危険です。
散々いたぶって精神崩壊まで追い込めますから。
最強の術を消されて驚愕・狼狽するゴームとミール。
ミールは足を巨大な拳で殴られ、悲鳴を上げる。ゴームは作り出した異空間を消され、ガタガタ震える。
目を閉じても、耳をふさいでも、触れただけで幻に支配される。
そして、幻でも痛みは感じる。
……凶悪すぎる性能。
アンサー・トーカーほどではないにせよ、物語の展開に困りそうな能力です。

羽を千切られ、叩き落とされるゴーム達が見たのは、恐ろしい獣の姿。
強く、たくましく、絶対的な強者。
キャンチョメが「こうなりたい」と願ってきた姿なんだろうな。
今まで仲間がやられる光景を散々見てきて、嫌というほど自分の弱さを思い知らされたなら、力に執着するのも無理はない。
震えるゴームとミールに思わず同情してしまう。ミールは弱弱しく「あ、あ……」と声を漏らすだけだし、ゴームは何も言えないし。
あれほど不気味で憎らしく思えた敵に抱く感情じゃない。
彼らにやられそうになったパピプリオまで止めに入るレベルです。
しかし、力に酔いしれるキャンチョメは聞かない。まだまだ痛みと苦しみを与えるつもりです。
自分に逆らった者がどうなるか思い知らせるために。
このままキャンチョメが王になっていたら、間違いなく独裁者になっていたな。
助けられたパピプリオまでもが逃げるほどですし。

暴走するキャンチョメに、フォルゴレが己の過去を語り出す。
道化た振る舞いの裏にはすさんだ過去がありました。
「助けてやったんだぞ! 礼ぐらい言ったらどうだ!?」
今のキャンチョメが言いかねないセリフだ。
フォルゴレと同じ道を辿る寸前でした。
両親からも銃口を向けられ、スターになっても怖がって近づかないって、どれほど荒れていたんだ。
今までフォルゴレがしぶとく立ち上がってきたのはただのギャグ補正と思っていましたが、素で強い肉体を持っていたからか。
弱い自分に戻りたくない、強いライオンでいたいキャンチョメに、フォルゴレは優しく語りかける。
「私はいつだってカバさんだった。私の姿は、キャンチョメの目には、カッコ悪く映ってたかい?」
キャンチョメの暴走を体を張って止めたフォルゴレは本当にカバさんだ。
怯えられるライオンではなく、つながりの中で生きるカバです。
ライオンの目を得たバリーも、最終的に優しさに目覚めたことで、さらに大きくなりました。
「戦う力がいくら強くても、それだけでは足りない」というテーマは、物語を通して描かれています。

ようやく己を取り戻したキャンチョメが粋な計らいを。
花畑を作り、蝶や小鳥を生み出す。
無邪気に戯れるゴームが可愛い。
友達の印に石に描かれた小鳥をもらい、メチャクチャ喜んでる。
実に心温まる光景をぶち壊す鬼畜の所業。
さすがラスボス、空気を読まない。
無敵のフォルゴレが子供のようにワガママを口にして、キャンチョメとの別れに打ちのめされる。
ついでみたいに消されたパピプリオが哀れです。
もう少しそちらの描写も……!

・シン・ポルク
反則的な性能ゆえに無敵に思える呪文ですが、そうでもないんですよね。
まず、公式ではアンサー・トーカーを使えば簡単に破れると回答されています。
ガッシュ・清麿ペアが負けた時もアンサー・トーカーは使用禁止でした。
具体的にどう破るかというと、目を閉じ、耳をふさいで、本体の位置をアンサー・トーカーで探し出す。
そして、石を投げてぶつければ、キャンチョメは泣いてダウンするとのこと。
脳に働きかけるので、石のような物体だと止められない。
いくら無敵に見える幻を生み出しても、キャンチョメ本体が無敵になるわけではないんですよね。
他にも、クリアに倒された時のように、遠距離からの狙撃には対応できない。
発動前に攻撃されればどうしようもありません。

呪文の性質以外にも考えねばならないのは、使い手の傾向です。
公式で「術を使うにしては、策の練り込みが浅い」と言われていますし、私としては頭脳より性格が弱点になりうると思います。
合理的かつ徹底的に相手を追い詰めるキャラならば死角がほぼなくなるでしょうけど、良くも悪くも優しいキャンチョメ・フォルゴレペアでは、おそらくなくせない。
発動すれば瞬時に片づくわけでも、自動的に理想の展開になるわけでもないので、キャンチョメがイメージできなければ上手くいきません。
それはフォルゴレが立ちはだかった時に証明されています。
すぐ退かされそうなものですが、踏みとどまってキャンチョメを止めましたから。
練習試合や模擬戦ならば、相手もある程度痛めつけられたら折れるでしょうけど、絶対に負けられない戦いではどうか。
強さと優しさ、覚悟を備えた本物の強者が全力で立ち向かう場合、仕留めきれるか?
ですので、シン・ポルク=無敵、キャンチョメ=最強と言われると疑問に思います。

・離反
魂となったキャンチョメを生かしてほしいと頼むゴーム。
何で魔物を滅ぼすつもりのクリアと組んでいるか謎でしたが、ゴームだけ生き残らせると言う約束だった。
親も友人もいないゴームだけを生かし、クリア自身は自害する。一人で一生を終えろなどという無理無茶難題聞いてられない。
「ケチ!」と抗議するゴームが可愛い。
ラスボスにケチと言い放つゴームもゴームなら、「ケチだと!?」と律儀に反論するクリアもクリアだ。
こういう掛け合いをもっと見せてほしかった。

クリアに逆らおうとするゴームにミールが怒る。
ああいう相手に出会ってしまった以上、楯突いても痛い目を見るだけ。逃げても捕まるから大人しく従っておけばいい。
彼女の台詞と背中の傷を考えると、裏社会の人間に目をつけられて、逃げようとしても捕まって、暴力を振るわれてきたんでしょうか。
猫を被っている口調だったのは、「逆らおうなんて考えてませんよー、だから暴力を振るわないで」というアピールだったのかも。
ゴームの意見を跳ね除けた彼女ですが、結局はゴームとともにクリアに刃向った。
さらっとクリアに嫌がらせしたのはナイス。
魔物との別れは滝のように涙が流れるケースが多いですが、彼女はさばさばとした態度。
しかし、ゴームのことをどうでもいいと思っているならば、危険を冒して反逆なんてしないわけで……彼女も相手のことを大事に思っていました。

16巻 Level.304~Level.323

表紙でさりげなくピースしてるグスタフ。
渋い外見に反してノリが良い。

・最終決戦
クリアとの戦いを目前に、世界中の人々が祈る。
空を見上げるグスタフは何を思っているんだろう。
敵として登場した人物すら、魔物のことは大切に思っている。
熱いシーンですが、ツッコミを入れたくなるコマもちらほら。モヒカン・エースさんとか。
仮面を外したチータの姿をロデュウに見せたかった。
彼女は強く生きてるぞ。

・VSクリア第二形態
率直に言うと、外見はシャツの方がシンプルで好みでした。
ザレフェドーラを見てウン略を連想してしまい、シリアスな空気が台無しに。
段々クリアの性格や言動が荒っぽくなる。
それも、「力」が人格を持ち、支配しているから。
初期のクリアと区別するために何と呼ぶべきか……「力」でいいか。
少しずつ表に出てくるに連れて、私の中で嫌な予感が膨らんでいく。
姿を変え、力が増し、性格が荒々しくなるのはラスボスによくある現象です。
それだけならさほど幻滅はしません。むしろ、新たな一面にワクワクすることも。
「力」の場合、言い回しがそこらの悪党と大差ないから「もう少し頑張れよ!」という気分に。
仲間を守って退場したティオを虫けら呼ばわりされ、静かに怒るブラゴが素敵。
それ以上に「やるな」と思ったのは、シェリーです。
バリアに武器をブチ当てて詠唱を止める。
あの赤子が怯えておる……。女傑と呼びたい。

・VSクリア完全体
人の上半身が埋まっているような姿に、鬼眼王バーンを連想した。
術が意志を持ち支配するというと、バオウと似ています。
シェリーを抱きしめるようにして守るブラゴはカッコいいのですが、やせ細る姿が……。
普通に血まみれじゃ駄目だったのか?
体を削り取る描写はグロ規制に引っかかるのでしょうか。
完全体になってから、「力」の台詞の酷さがますます加速する。
「ゴミ」「クズ」「ボケ」。
涙が出る。
チンピラじゃないんですから……。
力尽きそうなガッシュが皆の姿を思い浮かべる時、一人だけ険しい表情のバリーに何と言えばいいのやら。

・金色に輝く本
絶体絶命の瞬間、本が金色に輝いた。
魔界の住人を救うため、必死に頑張るガッシュ。
彼を助けようと、魂となっている友達が駆け付けた。
真っ先に来たのが序盤に退場したダニーというのが……!
初めての兄貴分ですからね!
ウォンレイ、レイン!
レインのシンがすごいサイズだ。
アース、キッド、レイラ!
パムーンはシンじゃないのか。
そして……華麗なるビクトリーム様が物凄い勢いで目立ちまくる!
そのまま勢いに流されたい気持ちはあるのですが、一つ言いたい。
いつの間に友達になった。
敵のままだったろ、お前。
絶大な人気を誇るキャラだから登場したんだろうな。
アシュロンのシンは単純明快! 強い!
「力」もアシュロンのことは覚えているのか。
ここからは力任せでは倒せないので、近づいて攻撃する。
テッドとともに駆けるのを援護するのがチェリッシュ。燃える構図です。

お前らごときの力では壊せないと叫ぶクリアに答えたのは――!
「フン……てめえごときにオレの力をなめられたくはねえな……」
強大な力を持つ敵を「ごとき」呼ばわりする不遜な態度!
来たのはもちろんこの男!
ヴィンセント・バリー!
「体が随分大きくなってない?」という疑問が反射的に浮かびましたが、次のページではそうでもなかった。
迫力が半端なかったということですね。
いつもの指を揃えるポーズが懐かしい。
固い抜け殻のつなぎ目を正確に裂くことで、弱所を表に出せるとのこと。
弱所を見抜く目も、それを突く技術も健在。
「片手でクリアの攻撃凌ぎながらもう片方の手で抜け殻壊すってすごいな」
→「よく見るとクリアの拳が壊れてるしつなぎ目も複雑だー!?」
→「左手でクリアの拳を破壊しつつ右手でパズルみたいなつなぎ目を正確に裂いて解体する技術力ってどうなってんだ……」
他のキャラが『シン』で派手な攻撃をどっかんどっかん放つ中、すごさの方向性が違ってません?

・シン・ドルゾニス
地味と言われれば反論できない。
しかし、彼は元々大技を華々しくぶっぱなして押し切るタイプではない。
広範囲を大火力で薙ぎ払うのは別のキャラが担当すればいいんです。
バリーの弱所を見抜く目と、攻撃を届かせる身体能力や戦闘センスと合わさることで、最大の力を発揮します。
ただでさえ弱所突きで大ダメージを与えられる男に破壊力一点集中型の技を持たせたら、どう考えてもひどいことになります。
その結果が力ずくでは壊せない殻破壊だよ!
ですから、地味と言われればその通りですが、しょぼいかと問われれば力いっぱい否定したくなります。
地味と言われるのは、普通のドルゾニスとの違いが分かりにくいからでしょうね。
他のシンはでかくなったり数が大幅に増えたりと一目で分かりますが、シン・ドルゾニスは片手から両手になった以外はほぼ同じなので。
多くのキャラが登場する中で4ページかけて描かれ、台詞も複数あったので、かなり大きめの扱い。
嬉しい。

・決着
弱所が剥き出しになったところでヨポポ、パティ、ビョンコ出現。
ティオの助けで回復してからの……コルル!
彼女との戦いは出発点とも言えるものだっただけに、感慨もひとしお。
ウマゴンの力で宇宙へと翔け、キャンチョメの助けも借り、ゼオンに背を押され、他の魔物からも力を集めて最大の奥義を放つ!
リオウやザルチム、ロデュウはともかく、ゾフィスまでいる?
悪党のまま帰った奴まで力を貸してくれるのか。ゾフィスは友情パワーというより自分が死にたくないだけな気がしますが。
ここまできたら負けるわけがない。
クリアを倒し、皆に礼を言うガッシュ。
ロデュウが片手でガッツポーズしていたり、レイコムが笑顔だったり、細かく見ていくと面白い。

・クリアという人物
読み終えて抱いた感想を一言でまとめると……「皆の力でフルボッコにされるためのボス」。
ああ、「今更本を燃やし合うわけにもいかないガッシュ陣営の数を減らす」という役割もあったか。
力の大きさに反して、彼個人に対する印象は曖昧なんですよね。
名の通り、透明に近い。
「力」に支配される前:基本的に淡々と使命を果たそうとするが、ケチと言われて反論したり戦いに燃えてみたり、普通の人間や魔物に近い思考があるのかないのかよく分からない
「力」に支配された後:言葉が汚く、ただの乱暴者にしか見えない
本能に縛られた哀れな一人の魔物と見るには、支配前の性格が掴みづらく、悲哀などの感情が湧かない。
かといって、魔物達を粛々と滅ぼす装置・機械的存在と畏怖するには喋りすぎる。特に人格変化後は台詞がいちいち小物くさい。力に溺れた者の末路なんてあんなものかもしれませんが、終盤のボスとして魅力を感じるかというと……。
食事や睡眠のように、自然体で魔物滅亡を実行するなら不気味さを感じたでしょう。
あるいは、趣味に熱中する少年のように、明るく楽しく爽やかに魔物を滅ぼそうとするなら、恐ろしいと思ったかもしれない。
逆に、使命や力に支配される人生に葛藤・苦悩を見せたならば悲哀を感じたでしょうね。
そこまでいかずとも、疑問や虚しさをにじませていたら、「力」に支配された姿とのギャップが大きくなって印象に残った可能性が。
全て消えて生きることとなった結末を考えると、コルルみたいに生まれつきの能力や性質に苦しむなどの人間味をしっかり見せていれば「解放されてよかった」と喜べたかも。
出発点となった彼女との対比も効きますし。

公式によると、終盤まで行動しなかったのは、ヴィノーの育児をしていたからだそうです。
赤ん坊を大切に育てるラスボス。斬新です。
そういう姿を見たかった。
「素のクリアはただの少年で、倒さねばならないのは『力』そのものなんだ」と実感できたでしょうから。
アシュロンのことは認めていたようですから、その辺を掘り下げられていたらもっと魅力を感じたかも。
ゴームとの関係でもよし。
天涯孤独のゴームを仲間に引き入れた背景には、能力の便利さだけでなく境遇に対する無意識の共感が……などと深読みしてしまう。

・最後の戦い
サンビームとシスター・エルの関係が進展した模様。
ファウード編で前フリはありました。
デュフォーの別れ際の笑顔が爽やか。この表情で「頭悪い」と言われるとショックだろうな。
卒業式を迎えた後、王を決めるための最後の戦いへ。
ブラゴは実力も人格も最後の相手に相応しいのですが、何故か盛り上がりに欠けるような……。
理由を考えてみました。
・清麿達が優位
アンサー・トーカーの存在が無慈悲。
一進一退の攻防の末に辛勝ではなく、順調に追い詰めて順当に勝利。
これでは盛り上がりづらい。
デュフォーみたいに同じ能力を持っていたり、クリアみたいに皆でぶん殴る敵なら許されますが、アンサー・トーカーを持たない相手にタイマンで使うのはちょっと……。
特に無情なのが清麿のこの台詞。
「『勝つための答え』を出し続けても、少しずつしかダメージを与えられない。少しでも気を抜けば……すぐに一打逆転の手を打ってくる!」
相手を認めつつも、自分達が優勢であること前提ですから。
食い下がったシェリーはよくやった、本当に。
・金色化の後
魔界の皆がガッシュを認めて力を貸した後でブラゴ達が勝ったら微妙な空気になると思う。
・石版編以降の絡み不足
ブラゴとシェリーは王を決める戦いについて説明して、敗北を味わわせた相手ということで、因縁があります。
ただ、清麿の「初めて、ライバルというものを感じた」という台詞には違和感が。
その時は読んでいてライバルという印象は受けなかったような……。
事情を説明されたばかりで、戦いを勝ち抜いて王になるという覚悟ができていなかった時期ですし。
石版の魔物編はちょうどいいくらいの関わり具合でした。
孤高のライバルとして適度な距離感を保ちつつ、王になるための強大な壁だと感じさせました。
ファウード編ではまともに関わりませんでした。
ガッシュと清麿の覚醒、ゼオンとの決着などの転換点があったストーリーで、会話らしい会話がなかったので、残念です。
クリア編は……新呪文を覚えるなどして大幅に強くなったのですが、クリアの脅威を知らせる材料にされていた感が。
ブラゴが普通に仲間になったのはありがたくもあり、物足りなさもあり。
あんな脅威を前にしてごねるほど頑固じゃないですし、話をスムーズに進めてくれないとそれはそれで「そんなこと言ってる場合じゃないだろ」と思うでしょう。
それは分かってますが、孤高のライバルとしてやってきたわけですから、理由を描いてほしかった。
ファウード編ではすんなり協力したわけではなく、シェリーに説得されてましたし。
・クリア編における扱い
石版の魔物編での描かれ方と差があり過ぎませんか?
ミールに警戒されたり、クリアに一矢報いたり、実力に関してしっかりフォローされてるんですけどね。
実力に関して散々すごいと強調されてるのに扱いが悪い印象を受けるのは、キャンチョメの新術の説明に使われたり、ガリガリにされたり、そういった描写が強烈だったためか。
石版の魔物編での多数の敵を蹴散らした姿と、インフレに置いていかれそうになって必死でついていく様子の落差が激しすぎて、凋落したと感じてしまうのかもしれない。
シェリーが完全体クリアの力に闘志を失ったのが引っかかります。
戦う理由を失いかけたゾフィス戦を乗り越えて、ブラゴを絶対に王にすると決意して、クリア戦に備えて散々修行してきて、敵がものすごく強いことも覚悟の上で挑んだはずの彼女が、今更折れるか?
いくら敵の力が強大でも、もうダメとか勝てないとか言うのは……。
ラストバトルの相手を務めるならば、ここで折れてほしくなかった。
・双方の影響や変化
ブラゴとシェリーの内面や両者間の絆、このペアとガッシュ・清麿との関係などは石版の魔物編である程度完成している。
それ以降のブラゴ・シェリーは戦闘力が大幅に変化したものの、他の部分の変化はあまり目立ちませんでした。
戦闘力の上昇以外に、内面の掘り下げや関係の変化が描かれていれば違ったかもしれない。
ブラゴのガッシュへの関心は、力に関してはファウード編ラストのバオウに言及するなど描かれましたが、できれば信念や考え方に触れてほしかったです。
・王の姿
ブラゴが王になろうとしていることは伝わってきました。
問題は、どんな王になりたいのか、どんな世界を作りたいか、ろくに語られていないことだ。
力でねじ伏せる王だと、初期のバリーと思いっきりかぶります。
王を決めるための戦いの最後の相手なのに、肝心の内容がハッキリしない。
これに関しては「強き王」の一言で説明できるバリーがうまい感じでした。
最初の「強き王」は腕っぷしが強いという意味だけですが、途中から心の強さも加わる。
・何も考えずに強い奴を倒していくだけで王になれる!
→何者にも屈しない「強き王」になる! ガッシュと再び戦う!
→己を倒した敵にこだわらず、王という高みを目指す
→王の道を捨て、王をも殴れる男に
強き王を目指すようになったのも、王の道を捨てたのも、ガッシュ達の姿があってこそ。
ガッシュ側もバリーとの戦いで大きく揺さぶられました。
優しい王になる覚悟を決めた状態で敗北して、悔し涙を流し、決意を新たにした。
内面の変化や双方向の影響が描かれたことで、出番自体は少なくても因縁……ライバルらしさを感じさせました。
ガッシュの「優しい王様」と対になるような王の姿をブラゴも宣言して、物語の中で変化していけば、対比が効いて盛り上がったかもしれません。
弱い奴を切り捨てる「厳しい王」になるつもりだったが、シェリーやガッシュ、清麿の影響で、いい意味で「厳しい王」を目指すとか。
一言で表現できる、ガッシュと対になる王の姿を語っていればなぁ。
簡潔にまとめるなら内面の……特にブラゴの掘り下げを……!

色々述べましたが、必死にブラゴを勝たせようとするシェリーと、ブラゴが彼女にかけた言葉には燃えました。
「よくやった……シェリー」
「よくぞここまで戦ってくれた……よく……このオレについてきてくれた……」
「お前がパートナーでなければ、オレはここまで戦えなかった」
背を向けたまま、ブラゴは彼女の手を握る。
「お前がパートナーで……オレは幸せだった」
最大限の気持ちの表明だ。
息の合っていたペアの魔物は皆、パートナーに対してこう思っていたのではないでしょうか。
ガッシュやゼオンは言うまでもなく、キャンチョメ、ウマゴン、ティオ、バリーも。
手を握った意味は……ブラゴはシェリーを好きだったんだよ言わせんなはずかしい。
公式でツンデレ大将軍呼ばわりされますからね。
真面目な話、恋愛感情100%ではなく、共に歩んできた相手への友情、戦友としての信頼、努力を重ねてきた姿への敬意など、様々な感情が混じり合っての「好き」でしょうね。

・アナウンス
結局、語りかけてきたのは何者だったんだろう。
最後にパートナーに財産か記憶か選ばせるのは違和感が。
ここまで戦ってきて今更財産を選ぶ人間がいるのか?
最初に「その子が王になればパートナーにも財宝が与えられます」と言う方が、ひとまず戦ってみようとする人間は増えるんじゃないか。
壊れたものが元通りというのも唐突に感じられます。
戦いを肯定する結論にもっていくためでしょうけど、取ってつけたように聞こえる。

・手紙
全ての魔物に肉体を与えたのか。
ガッシュらしい。
でも、クリアに関しては、別人同然になったのを「生きている」と言っていいのか、疑問に思います。
ゴームとキャンチョメ、パピプリオが仲良しになってる。
ベルギム・E・Oのインパクトに持っていかれそう。
本を読むブラゴに、怯えるゾフィス。少し哀れだ。
ダニーとウォンレイが仲良さそう。
バリーとロデュウの前に座るキース、居心地悪いだろうな。
二人とも顔怖ッ。
周りを威圧しているように見えますが、違うと思いたい。
グスタフにいい男と認められたバリーが、今更チンピラじみた真似をするとは考えづらい。
「キースだが教室内の空気が最悪です」的なノリで描かれただけで、実際はバリーは威張るつもりはないんじゃないか。
気まずいだろうな、キース。
憎いバリーを倒したいと言ってましたが、自分が作動させた装置のせいで脱落したと知ったら喜ばない気がする。
ただでさえ使いたくなかったのに、バリーが相手ならなおさら……。

アシュロンとエルザドルが仲良く酒を飲む姿に和む。
バリーも混ざってほしい。己の力を誇り、相手を認め、高みを目指す者同士、熱い友情を築けるはず。
成長の証としてエルザドルから受けた傷をあえて残しているほどですし。
ザルチムも楽しそうでよかった。
ユノにすごむゼオンに危うさを感じる。
兄弟仲が良くなったのは歓迎すべきですが、反動で暴走してないか?
ガッシュの姿を見て優しさを知ったんですから、もう少し穏やかに……。
ゼオンはガッシュに対する仕打ちは反省して謝罪しましたが、チェリッシュやロップスなど他の相手にはどうなんだろう。
最後にユノがあの場にいたのはガッシュに許されたからでしょうけど、その相手に対して辛辣なんですよね。
あの言動からすると、「ガッシュ許さん!」が「ガッシュに害なすヤツ許さん!」になっただけで、そのまま留まっているように見える。
ガッシュを大事だと思うなら、彼の笑顔を守るために他の人々も思いやるべきなんじゃ……。
といっても、過酷な訓練の日々を送ってきた子供にそこまで要求するのは酷だと分かっています。
魔界で穏やかに過ごす中で、少しずつ周囲に目を向けてくれれば。
外道な敵のままなら反省も謝罪も不要で盛大に倒されるだけで十分ですが、「和解して改心していいお兄ちゃんになりました」的な描かれ方なので、自分の行いと向き合ってほしいです。
ロップスとチェリッシュに話しかけているコマでもあれば、「和解した」もしくは「仲直りを試みている」と解釈できただろうな。
戴冠式を終えたガッシュは王の仕事を学び、アースから法律について勉強中。
いつか人間界へ行く方法を見つけ、清麿に会いに行くつもりだという。
ぜひとも実現させてほしい。

・戦いに対するガッシュの結論
ちょっと待ってください。
戦いを通して得た物が多いから、肯定するのは分かる。
ただ、問題点も色々あったのに、その程度の言及で済ませるのか?
「酷い部分を変えることができました」あるいは「必ず変えてみせる!」の後で肯定するならいいのですが、問題点をスルー気味で肯定しているので引っかかる。
洗脳されて罪を犯すこととなった、被害を受けただけのココは?
石化して苦しんだ魔物達は?
クリアみたいな奴が勝ち残って魔界の住人を消す危険性がある王様特権は、どう考えても変えるべきでしょう。
何より、コルルの「戦いたくない者に別人格を与えて無理矢理戦わせる」という話はどうなったんだ。
彼女と同じ苦しみを味わわせないために王になることを決意したのに。
ゼオン戦では父親の仕業と思われた、戦いを強制させる存在を超えるという目標は?
ルールやシステムを改善した、もしくは変えていく描写があれば納得できましたが、あのままだとまた似たようなことが起こるんじゃないか?
「王を決める戦い自体をなくすことはできず、全て否定するつもりもない。ただし、コルルのような事態が起こらぬよう、変えるべき部分を修正する」的な結論ならば……。
もっとシンプルに「昔は真っ当なシステムだったがクリアの影響でおかしくなって戦闘を強制、クリアを倒して修正された」ではいけなかったんでしょうか。

公式によると、コルルは人格を植え付けられたわけではないとのこと。
あくまで彼女個人の問題に過ぎなかったのか……。
確かに、戦闘に乗り気じゃなかったキャンチョメやウマゴンは普通に暮らしていました。
本に現れる呪文は魔物自身の力を現したものですし、彼女に元々あったと言われれば頷ける。
それならそれで、作中で触れてほしかった。戦う理由の原点だったわけですから。
「力」に支配されるクリアが言及したら説得力が大きかったかもしれない。
「人格を植え付けられたのではなく、生まれつきの性質によるものだ。誰がどんな王になろうとなくせない。戦ってきたのは無意味だったんだよ」
とガッシュ達が戦う理由を否定し、揺さぶりをかけるクリア。
「魔物の本質は闘争で、僕も含めて滅びるべき危険な存在なんだ!」
そう主張する彼に、戦う理由を見つめ直し、答えを出したガッシュ達が反論。
持って生まれた素質ではなく優しい心から生まれた『シン・ライフォジオ』をコルルが使うことで、ガッシュ達の言葉を裏付ける展開に……ダメか。

・集合写真
不満を述べたものの、魔物達の集合写真には満足。
ウィンクしてるリオウがじわじわくる。
王になるという使命から解放されて、こんな表情ができるようになったんだな。
隣にザルチムがいるのもいいですね。
ちなみに、バリーの近くにはキースがいます。
彼には頑張ってほしい。バリーのライバルと見なされるくらい、でかく、いい男になってくれ。
エルザドルも近い。
魔界に帰った後のエルザドルとバリーの会話を見たかった。

他のパートナーも手紙を受け取っていました。多くの者が笑みとともに涙を流しています。
悪党だった人間もいい笑顔してる。
ラウシンは服役中なのか?
チータの姿をロデュウに見せたかった。
ベルンはいも天を一気に食ってるのか。
ミールもにやりとして嬉しそう。

一番強烈だったのはグスタフです。
口まで開けて、思いっきり泣き笑いしている。
バリーとの別れでもあくまで静かに涙を流していた彼が、盛大に表情を崩している。
涙しているパートナーは他にもいますが、一番泣いてないか!?
ここでグスタフに対する印象がガラリと変わりました。
それまでは「感情を見せない男だから、別れの際は涙を見せなくても良かったんじゃないか?」と思っていましたが、「涙を流してもおかしくない」と考えるように。
グスタフの涙腺を弱所突きした手紙の文面が気になってたまりません。
どんな内容だったんだ……!?
教えてくれ、頼む!
この表情をバリーに見てほしかった。

改めて読み返すとやっぱりバリーとグスタフがカッコよかったです。
バリーが登場した時間は短いですが、クリア戦での扱いなど存在感は大きい。
最後の結論にツッコみたいところもありますが、何だかんだで「みんな幸せに暮らしました、めでたしめでたし」と感じられるのがよかったです。
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