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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ネウロ感想 3

ネウロ感想 3
鎧の兄弟~細胞から愛をこめて




鎧の兄弟

まずは温泉旅行編から。
春川教授が登場したり、ネウロの弱体化が示されたり、さりげなく重要な情報が詰まっています。
弥子やネウロといったメインキャラは全員好きで、それ以外のキャラからベストスリーを挙げるならば春川が入ってきます。
「1と0の狭間に……私の目的がある」
この時すでに彼の最終目的が示されていたのですね。
ライスを慰めた直後に犯人だと指差すのには笑いました。普通ならワンクッション置いて犯人を示しそうなものです。
「恐怖という鍵」のトリックはかなり好きです。
都市に住んでいる人々が田舎を旅して言う台詞など、優越感だと言われると否定できない部分があります。
無意識のうちに自分を上に見ているところは誰しもあるかもしれない。
ただ、ライスまでいくと過剰です。
「クラスで相手にされない中学生が小学生の遊び場に割り込んでガキ大将気取っているみたい」
と弥子にもツッコまれます。

続いて鎧の兄弟編へ。
ネウロに脅され弥子に憐れまれる自分が情けなくなり、怒って出ていく吾代。
社長との会話などで少しずつ掘り下げられて、いいキャラになっていきます。
土下座最中の渡し方は難しい。あんなに飛ばないぞ。実写で見てみたい気もします。
今回の黒幕はサイ編で箱にされたライターの台詞を使い、さらに掘り下げる。
以前出た要素を拾って活かすのが抜群に上手い。
「真実であれ嘘であれ……入手した情報の価値は操る人間によって何倍も違ってくるんだ」
同じ情報でも上手く使えば影響力は段違いだろうな。
「人は誰でも自分の情報を正しく把握してくれる人間を求めている」
己の情報を把握(+活用)してくれる相手……ダイ大のバーン様とミストバーンを連想しました。
早坂兄もいい悪役です。
「自分の『底』という情報は決して部下には見せてはならない」
底を見せない、底知れなさを漂わせたまま退場する悪役、ラスボスは素敵ですよね。
ただ、全てをさらけ出して見栄や体面もかなぐり捨てて行動する悪役もそれはそれで熱いし捨てがたい。
頷ける台詞が多いです。

「ピンクのパンダが黒い部分を渡そうとしてくる」と言われて「少し可愛いじゃないか」と頬を染める笛吹。
あなたの方こそ可愛いじゃないかと思った方は多そうです。
嫌味に見えるキャラが可愛いもの好きというのはベタですが、それがいい。

「従う価値のある主人のもとなら黙っていても奴隷は仕事をこなしてくれるのだ」というネウロの台詞は、使っている語は「奴隷」ですが、彼なりに吾代を認めていると思える。
早坂兄の豹変を楽しみにしていたら「つくろった笑顔が消えたのが豹変したみたい」ときて、裏をかかれた気分です。待ち構えていたらすかされた。
「次はどんな悪い事して遊ぶ……? どんな計画でも従いてくぜ」
「そうだな……おまえは私の忠実な部下だからな」
でしんみりした直後にプロフィールのとろんとした顔に笑いました。
シリアスムードがぶち壊されます。
二人ともクールに決めたのに、直後にこれか。
武器の発注主、巻末パズルなどHAL編に向けての情報が出されています。

細胞から愛をこめて

最後の自分像編は最終回候補の一つだっただけあって盛り上がります。
いつ終わることになってもいいように複数の終わり方を考えていたというのは凄い。

噛み切り美容師編は弾丸を口に含んで吐きだすネウロに色気? を感じました。
ネウロの絵は時々艶めかしい気がします。そういう漫画やキャラではないのですが、何と表現したらいいのやら。
弾丸が植物に変わる様が毒々しい。
同じ「かみ」という読みなのに「噛」「守」「神」と変化していくサブタイトルが上手い。コミックの各巻のサブタイトルも好きです。
警戒心を見抜くのも隙をつくのも一流の美容師ならではというやり方で面白かった。かなり強引なはずなのに納得してしまう。
犯人の主張は相変わらずぶっ飛んでいます。顔芸もとい豹変も相当ハジけていますが、このレベルの犯人は他にもたくさんいるのでそこまでインパクトはありませんでした。

噛み切り美容師編で一番重要なのは犯人ではなく、ネウロの最後の台詞だと思います。
「期待外れだヤコよ、貴様の日付はいつになったら変わるのだ?」
あまり表に出してませんでしたが、彼なりに弥子を評価していたことがうかがえます。
だからこそ、失望している。
果たしてネウロが弥子を必要とすることがあるのか。
ネウロには無い力があるのか。
答えはすぐ後の自分像編ではなくHAL編で出ます。
最初このやりとりを見た時、弥子の力は自分像編で発揮されると思ったので、自分像編での彼女の見せ場に少し物足りなさも感じました。おあずけされた気分で。
その分、HAL編での見せ場に盛り上がることになりました。

アヤと弥子の関係は好きです。お互いを大事に思っているけれどどこか危うい。明るさ全開の友情とは違う味があります。
「これ以上好きにさせないで。また……殺しちゃうから」という言葉は冗談に聞こえません。

自分像編開始の際の
『世界には想像を超えた犯罪者が存在する』
という言葉は、血族編にもつながりますね。
さりげなく笛吹はブラックコーヒーが飲めないと明かされる。
偉そうなキャラが甘いものが好きなんてあざといな。

誰がサイか見抜けませんでした。
家の住人達は由香以外印象が薄いので、誰に化けてもそこまで驚かないだろうと思っていました。
そしたら正体を明かすシーンで「そんなのアリかよ!」と叫びました。
笹塚の怪しげな素振りはミスリーディングだろうとは思っていましたが……。
死んだ老婆に化けるくらいですから『彼女』に化けてもおかしくはないのですが、月に趣を感じる、風流を解する心を持っているとは思えなかったのでわかりませんでした。
由香や弥子の目線を改めて考えれば、おかしくはない。

「死の間合いから逃れた!」→即死のコンボに笑いました。
いいところ見せたかと思いきやそんなことはなかった。助かるかと一瞬思わせて即退場。
笹塚を事件の担当にした笛吹の作戦立案能力が光ります。鎧の兄弟編でも人の配置や手配の迅速さなどが評価されていました。着々と読者の評価も上方に向かっています。
笹塚の実力も十分発揮されます。
だからこそ、彼らの上をいくサイの恐ろしさが際立つ。
サイの攻撃に備えていたネウロの周到さも頭脳キャラらしくて見事。
かつて瞼で容易く弾丸をとめたネウロは、ショットガンで撃たれて血まみれになるほど弱体化していました。
ネウロの力が落ちるに従って弥子が戦力となることが求められる。ネウロにはない能力、強さで状況を変える必要が出てくる。
見せ場の分担ができて上手いと唸りました。
「美術品の価値を決める大きな要素の一つがそれに宿った製作者の感情の強さだ。その感情に共鳴する人間が多いほど……大きな感動を生みだすんだ」
このサイの言葉も世界を彷徨い色んな物を盗み出してきた、怪盗キャラらしい台詞だと思います。
最後の自分像のボロボロの一体とこぎれいな一体の姿は最期の光景に似ています。
ネウロを最後まで読んでから綺麗な像へ受け継がれるものを考えてみると、異なる印象を受ける。

サイの脳裏を横ぎる影は手に見えます。この時点で黒幕まで決まっていたのでしょうか。
化物に近づく人間と人間に近づく化物の戦いに、読んでいて怖ろしく緊張したことを覚えています。
どちらも譲れない、他者の介入できない戦い。
戦う場所がいっそう盛り上げる。
街の明かりが遠く、二人の孤独さが強調されているようですから。
ネウロが手首を切り落とされた時、ハラハラしました。
主人公で、魔人。命を落としたり負けたりはしないだろうと思っていても、緊張感があります。
気を揉んだ分、ネウロが一撃で逆転した時にカタルシスがありました。
「図に乗るな。腐っても未だ我が輩、魔人の領域だ」
この微笑が魔獣みたいです。肉体が弱っても精神は強いまま。
サイとの格の違いを感じさせます。魔界の強者たる貫録がある。
ボディブロー一発でサイをダウンさせる。
弱体化してもまだまだ強い。

弥子はサイの肉体より観察力が怖いと思った。
しかし、恐れるばかりだった今までと違って考えを進めます。
他人を観察して自分の中身を知ろうとするサイのやり方に言及したのは意外といいますか、印象に残っています。
「誰だって……他人を見て自分と比べて相対的な自分の能力や立ち位置や考え方……つまり自分の正体を確認するのだ」
もう少し話がしたくなった、という弥子は確実に進歩しています。
ネウロもいっそう人間に興味を抱くようになりました。好ましいとまで言っています。
「人間は短い時間を生きるからこそ……必死になって進化の可能性を探し求める」
「懲りずに自らの可能性を求めるがいい、人間よ。究極の『謎』を作り出す可能性を秘めた種族よ。その可能性を……我が輩はいつでも喰ってやる」
一話と同じ「手」というサブタイトルですが、ネウロの切り離された手だけでなく、「て+」という読みで絆が深まっている気がします。
サイの助手として働いているアイも、サイの正体(なかみ)を知りたがっている。
中身を知りたがっていた彼女こそがサイが己を取り戻すきっかけとなり、サイの中身そのものとなっていたと考えると感慨深いです。
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