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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ネウロ感想 4

ネウロ感想 4
電人HAL 前編


学校の試験編ではネウロが弥子に靴を舐めるよう命令。
こんな主人公、ジャンプではあまり見ません。
パートナーを奴隷と呼び、嬉々として靴を舐めさせようとするな。一応認めているとは思えない態度だ。
勉強を教える事を快く引き受ける笹塚と弥子のコンビが好きです。
「追い込めば何でもできる、そこに人間の素晴らしさがあるのだ」
いやあの、追い込みすぎると潰れると思います。
春川教授の再登場が嬉しかった。
温泉編ではいかにも怪しげな犯人とミスリードさせるための人物かと思っていましたが、ただのゲストキャラでは終わらない。
学生ら三人組との交流にもほのぼのしました。
犯人だけでなく、弥子の通う学校の教師達も濃い。
英語で話しかけてきた外国人教師に向かって「日本語でしゃべれや、ここ日本だぞ」と言い放ったり「高校の英語は……ただの暗記だ!」と断言したり、藤原先生はハジけています。
平野さんが大変な目に遭いましたが、おまけページで結婚してくれたので救われました。
彼女が巻き込まれただけで終わったら後味が悪くなっていたかもしれません。

造られた放火魔編は作者コメントが意味深。
決して現実の後を追ってはならず、かつ少しだけ先を行く必要がある。
……難しいです。

つぼみを愛でる笛吹に和みました。
春川教授の講義の内容が興味深くて次の講義が気になりました。
ドーピングコンソメスープみたいなネタがあるかと思えば、こういう内容もくるから油断できない。
穂村の「家たん燃え」には突っ込むまい。
ここで葛西の名が登場していますね。
一回目の人気投票で、犯人と一般キャラクターで分けられていました。
後者はネウロが一位、弥子に笹塚が続きまあ予想通りだったのですが、犯人の方はカオスです。
アヤはともかく、至郎田の人気が……これがDCSの力か。

春川とHALの会話によって物語は一気に進みます。
「私」「君」の呼び方に気づかず、読み返して感嘆しました。
教授と親しかった学生達がHALの尖兵と化して教授を攻撃する。
テスト中のやりとりに和んだだけにキツイ。
頼まれたはずの買い物があんなものだったのは、HALの指示なのか、本人の意思を反映したのか。
教授の危機を目撃した、彼に好意を抱いていた江崎のとった行動。
・重傷を負った教授の身を案じる
・ナイフを奪い、その場から遠ざかる
・泣きながら死なないでと叫び、救急車を呼ぶべく階段を上る
・口にナイフをくわえて教授めがけて階段から飛び降りる
とどめを刺しやがった……!
「操られてる人間に逆らえば江崎さんも攻撃されてしまう! 逃げてー!」などと心配したら彼女も操られてました。
「教授 教授 教授」と呼びかけてからのダイブが怖すぎる。
春川教授への評価が「変人だけど味があっていいキャラ」になってきたと思ったら退場。容赦ないよ……。
教授を好ましく思っていた彼女が最後の一撃を食らわせたというのが惨い。
事件が終わっても彼女は覚えていないんですよね。
もし思い出したらと思うとぞっとします。
『私の名前はHAL……“電人”HALだ!』
元ネタは『2001年宇宙の旅』ですね。
探偵事務所に鉄球が突っ込んでからのモノローグにしびれました。
「この事件で私達は……世界を救ったのかもしれない」
実際、HALを止められなければ世界はガタガタになっていたと思います。
作られた存在が制作者や人間全体に牙を剥く展開はありますが、下僕を増やし世界を手中に収めていくやり方がえげつない。
どんな人間でも欲望・願望がありますから電子ドラッグに抵抗しようがない。
今の社会でパソコンやネットを使うなと言われても、触れないでいるのは難しいでしょう。

学生三人との会話はいつ襲ってくるかと予想し、裏をかかれました。
いかにも怪しい動きを見せるフェイントを仕掛けて、この場は何事も起こらないかと思いかけたら豪快に襲ってくる。
ページをめくったらドッキリ、の使い方が抜群に上手い漫画です。
「まー人それぞれですよね」は、あらゆる状況で使える名台詞だと思います。

人の欲望を解放し、犯罪へ導く電子ドラッグ。
春川がそれを作った目的について、弥子とヒグチでは意見が食い違う。
何かの通過点に過ぎないと考える弥子と、犯罪者だらけの世界を見たかっただけと主張するヒグチ。
この違いが後で出てくるんですよね。

ネウロを警戒すべき敵と認め、「脳細胞の申し子」と呼ぶHALに好感が持てます。
有利な状況下でも、強大な力を持っていても、油断しない敵は素敵です。慎重なばかりではなく大胆な手段も使い、目的に向かって突き進むと胸がときめく。
遊びまくって人生かけた計画を台無しにしてしまうラスボスは少し見習うべきだと思います。
といっても、弥子を傀儡とみなしたのは最大の失敗でした。
ただ、油断しすぎだと責めることはできない。食い気以外は普通の少女まで警戒しろというのは酷です。
この時点では彼女の真価を見抜くことは難しく、慢心とは言い切れない。彼女自身、状況を変えるような力があるとは思っておらず、無力感に苛まれていました。

巻末インタビューでは笛吹の可愛さが爆発。
最初は彼を苦手だと思っていた弥子もすっかりなじんでいます。
パフェを食べたりキュートなストラップをぶらさげたりストローの袋で花を作ったり、下手な女子高生より乙女ちっくでは。
好きなテディベアメーカーを問われて即答できるのは筋金入りだ。

ネット世界で対峙するHALとネウロ。
『欲望や願望というのは……生物の意志や行動を司る原動力だ』
欲という言葉だと悪い印象を与えますが、生きていく上で欠かせないのは確かです。
ただ否定するのではなく、良い面悪い面ひっくるめて見つめるのがネウロという漫画だと思います。人間に対する見方も同様。
静かな会話から一転、スフィンクス出現の迫力が凄まじい。
援護プログラムがスフィンクスなのは意味があるのでしょうか。
調べてみると王の守護者・死を見守る存在とあります。
ネウロを見下ろすHALの口調が穏やかなのが、苛烈な攻撃とのギャップを感じさせます。
『ネウロよ……人を遥かに超えた頭脳を持つ者よ。私は……生きなくてはならない』
「相手にも事情が」系のシリアスな犯人はアヤもですが、ここまで哲学者・求道者的な雰囲気を放つ犯人は今までいなかった気がします。

電子ドラッグが猛威をふるう状況に憤る笛吹の台詞が熱い。誇りが感じられます。
HALに敗れたネウロも、諦める気はありません。
「食事に勝ち負けなど存在しない。勝つか負けるかではなく喰うか喰われるかだ」
確かに。

中盤戦に突入し、銃犯罪部隊と対決。
緻密な計算に基づき射撃を行う集団を効率的に一網打尽に。
弱体化していようとネウロはやはり怖ろしい。
HALの目的は1と0の狭間の世界で生きる事。
背景が初夏を思わせる木々と葉であることに、読み返すとじんとなる。
弥子をただの操り人形扱いする彼は危害を加える気もない。殺しを楽しむ趣味はないとわかります。
ただ、己の目的を達成するためにはどれほど犠牲が出ようとかまわないと考えている。やはり止めなければならない存在です。

次は貫通願望を持つ江崎率いる部隊が待っています。
春川教授の体でトンネルごっこをしたらメチャクチャ興奮したらしい。
うっとりとして涎を垂らして、ますます教授が哀れだ。
一方ネウロはどうでもよさそう。ですよね。
指一本で片付けて最後のスフィンクスを壊しにいく。
上手くいくかと思いきやヒグチが洗脳され、敵に回りました。
敵に回った元味方はものすごく厄介な法則があります。
彼の願望は「人類すべてを犯罪者にしたい」。
以前弥子に語った推測は、彼自身の望みだった。
前後のシリアスな流れをぶった切り、ふんどしソムリエで笑った。
シャツをズボンに入れすぎた穂村に変な笑いがこみあげました。
原子力空母が「彼」と表現されてますが、船は「彼女」ではないのでしょうか?

カーチェイスから追跡してくる自転車の大群、車に飛び込んでくる人間砲弾、さらには人の橋!
はっちゃけた映画みたいです。
一連の場面はインパクトが凄まじい。
顔を轢かれるのがすごく痛そうですが、痛みは感じていないのか。
「追いながらにして追われる時、その敵は最ももろくなる」と言うヒグチは名将のようだと思いました。
ヒグチが犯罪者だらけの世界を望む理由が重かった。
両親が重度のネトゲ廃人で、嫌気がさしてデータを破壊したら両親は首を吊って死んでしまった。
「かまってほしくてさぁ! 天気とか成績とかどんなにくだらなくてもいい……現実の話がしたくてさぁ! それが悪い事かよ! そう思う事が犯罪かよ! だったら、だったら人間全員犯罪者じゃねーかッ!」
おまけで両親のブログが載っていますが、変化がリアルすぎて笑えません。
欲望もそうですが、ほどほどが一番ですね。
ヒグチの止め方が上手かったと思います。
ただ飛びかかっても弥子の力ではどうにもできない。かといって説得で全部解決するのも無理がある。
図星をついて怯んだ瞬間に、道具を奪う。言葉と行動の合わせ技ですね。
学生達と違ってヒグチの動機が「こんな過去が……」系なのは、大切な人のために罪を犯すキャラを出すことでHALの動機につなげるためだったのでしょう。

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