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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

うしおととら感想 1

うしおととら感想 1

『うしおととら』は少年漫画の中でもトップクラスに好きです。
熱い主人公コンビや恐ろしい悪役などの活き活きとしたキャラクター、張り巡らされた伏線、壮大かつ燃えるストーリー!
特にラスボスである白面の者の威厳、狡猾さや邪悪さ、読者に与える絶望の深さなど、どれをとっても最高級。
「絵が……」と敬遠するにはもったいない。
どんどん引き込まれていきます。



序章 うしおととらであうの縁

主人公である蒼月潮と、もう一人の主人公、とらが出会った話。
一回目と、最終巻まで読み終えてから読むのと、外伝の「永夜黎明」を読んだ後で読むのとでは印象が大幅に変わります。
正直、一回目は「絵が見づらい。本当に名作として何回も名が挙げられるほど面白いのか?」と不届き千万なことを考えていました。
この時点ではここまで引き込まれるとは予想していませんでした。
紫暮の年齢に驚愕。
「しゃこん」という擬音が味がある。
妖怪のおどろおどろしさ、髪の伸びたうしおの妖しさが印象的です。
「イノチってなんだよ! 動けるってコトだろ?」
という台詞は非常に重要ですね。これがあるから後の変化が光る。
危険な妖怪をいつか滅ぼすといううしおの決意は、ある意味実現したと言えます。
ここから全ては始まった。

第一章 石喰い

「おまえはわしが食うんだっ!」と言ってうしおを助けに行くとら。
この後そのパターンで散々苦労することになるのでした。
とらは強くてカッコいい上にお茶目さも兼ね備えているとかずるい。
石化しかけて涙を流す女生徒の表情があるから、恐怖に負けまいとする麻子が際立つ。
人間が危機に陥ってようと、助ける気はないとら。
自分より他人の命を優先するうしお。
簡単にわかり合うのではなく、考えをぶつけ合い、少しずつ距離を縮めていくから重みが出る。

第二章 絵に棲む鬼

うしとらへの距離がまず一歩近づいたのを感じた章です。
心優しい父親が鬼になるまでの経緯と、なった後の執念が。
一人ぼっちになった羽生礼子の死んだ目が。
うしおの輝く目が。
そして、初めて礼子が顔を上げた場面がガツーンと心に響きます。
夕日を浴びながら殴り合いには時代を感じます。
賢一が荒れていたのは己への不甲斐なさに苛立っていたためかもしれません。
礼子の父親はただの悪者というわけではありません。
礼子が死を選ぼうとしたら狼狽えますし、守りたいという気持ち自体は本物です。憎悪によってねじ曲がり、危ない方向へ行ってしまいましたが……。
怨念から解放された表情が優しげで穏やかなのが切ない。
薄い闇に覆われていた絵が光に包まれるのが粋な演出です。
憂いを帯びた礼子の表情も美しいですが、やはり笑顔が素晴らしい。

第三章 とら街へゆく

とらの文明への挑戦が笑えます。
ガムがくっついてとれなくなったり、車に喧嘩を売られたと勘違いしたり、恐ろしい妖怪のコミカルな一面が見られます。
日崎御角と井上真由子はそっくりという情報が序盤から出ていたんですよね。
とらと真由子の出会いが印象的。
何度も口にする「おまえはわしが喰うんだ」という台詞の意味が、終盤はガラリと変わるんですよね。
自分が間違っていたと知ったら素直に謝れるうしおはいいヤツです。

第四章 符咒師 ヒョウ

復讐者、ヒョウさん登場。
妻と娘を謎の妖に殺され、敵討ちを生きる目的にしています。
妖と戦うことを生業としているため主人公側の人間と言えなくもないのに、とてもイイ笑顔をします。
普段のクールな態度と激した時の叫びや表情の差が激しい。
『うしおととら』は眩しい笑顔も、絶望や狂気にゆがんだ笑みも、どちらも素晴らしい作品です。
女子供に害をなす輩は人間だろうと容赦無し。
親子連れにからんだチンピラを半殺しにして、許してくれと懇願されても却下し、躊躇せず殺そうとする。
止めに入ったうしおが仇の妖の情報を掴んでいると勘違いし、喋らせるため目を抉ろうと……ストップ! ヒョウさんストップ!
それ以上はダメです!
助けられた親子はどう思ったんだろう。

うしおは嘘が嫌いだと後で述べられるのに、わりとあっさり嘘を……と思いましたが、微妙なラインです。
顔面を切り裂かれたのも、とらが人を喰う気満々の危険な妖怪であることも事実です。
うしおの行いは正しいとは言えませんが、責められない。
何度か助けられて上手くやっていけると信じたら襲ってきて、殺されかけて、それでも受け入れろとは言えない。
読んでいる方もショックでした。ニュース見て「にうすだにうすだー」→「わしにゃ、おめえに対する憎しみしかねーよ!」だからな……。
うしおは明るく真っ直ぐですが、いつもいつもそうじゃない。
道から逸れることもあります。そこを殴ってでも戻してくれるのが麻子ですね。
男勝りで手が出るタイプですが、むやみやたらと暴力を振るうことはしないので好印象。
放っておけばとらを仇だと思い込んだヒョウが始末する。いつ人を襲うかわからないため、安全を考えればそのままにしておくのが一番いい。自分だけでなく他の人のためにもなる。
しかし、それでは心は晴れないまま。
うしおは危険を知りつつも、一番大切なことのために行動する。

せっかく仇を見つけたと思って日本までやってきたのに、もう少しで殺せるというところまでいったのに、違うと知らされやり場のない苛立ちにまかせてうしおの顔面を殴り続けるヒョウさん。
彼がとらにとどめを刺そうとした時、うしおは投げられた武器の前に立ちはだかり、殴り返す!
槍の力に頼らず、体を張って武器の前に立ちはだかったうしおの男気が熱い。
うしおが止めたのは、復讐自体を否定しているのではなく、相手を間違えているからですね。
だから死んだ子が喜ばないと言われても反論する気にならない。
違う相手を討っても喜ばないと言われたら「確かに」と思います。

ヒョウさんは以前は妻子を愛する平凡な男で、一般人以外の何者でもなかった。
そんな彼が、一日中とらと戦い続けて追い詰めるほどの力を得た。
どんな日々を送ってきたか、傷だらけの手が雄弁に語っています。
幼い子供を抱き上げたり頭を撫でたりしたであろう手で、武器を握り敵を殴るのがやりきれない。
穏やかな姿からの変化が悲しい。
憎悪の闇の中を彷徨っていても、うしおの言葉と拳が届いて、踏みとどまれてよかった。
関係ない子供を助けたことが、化物になりきってはいない証なのでしょう。

ハンバーガーに関する台詞は、実際気に入った気持ちと、うしおを喰わない言い訳、それぞれどのくらいの割合なんでしょう。
ハンバーガーが何気に重要なアイテムになります。

第五章 あやかしの海

槍についた赤い布やうしおの母について、とらが人間につけられた名など、様々な情報が出てきます。
「見殺しにしただとぉ」のイメージ映像に笑った。確かに言いそうだ。
全力で戦って助けられなかったならともかく、何もせずにいたら激怒するでしょうね。
雷を槍に纏わせつつ切り裂く……カッコいい!
魂が解放される光景も美しい。
言うだけ言って帰っていった海座頭にちょっと待てと言いたくなった。

第六章 伝承

それまではトボけた態度しか見せなかった父、紫暮が豹変。
法力僧だと明かし、とらと対決。
普段の頼りない姿が一転、実力者の風格を漂わせる。
光覇明宗の使命、お役目様の登場、そして母の秘密を知るための旅に潮が出発。
話が動き出します。

第七章 ヤツは空にいる

つぶらな瞳の衾が登場。
目がキュートな彼のスマイルはトラウマものです。
勇の髪はどうなってるんだ?
とらに頼む、信じると告げるうしお。
着々と信頼が構築されていますね。
まかせっきりではなく自分も頑張るから一方的な関係にならず、観ていて心地よい。

第八章 法力外道

禍々しい坊様、凶羅登場。
紫暮は妖怪にまず大人しく封じられるよう諭すのに対し、凶羅はいきなり「死んでくれや!」ですから、妖怪よりよっぽど怖いよ。
さらに関係のない女店員を容赦なくブン殴る。ヒョウさんが目撃したらブチ切れて死闘開始の予感。

第九章 風狂い

うしおととらにのめりこむきっかけとなった話です。
山に住んでいた鎌鼬三兄妹は人間の工事によって住処を追われ、優しかった十郎は狂気と憎悪に染まり、人間を殺すようになる。
今住んでいる地から追い出されるわけにはいかないので、獣の槍で十郎を殺してくれと頼む雷信とかがり。
しかしこの時雷信は、事が済んだらうしおを始末するつもりでいた。
それほど隔たっていた相手を、やがて心から信頼するようになるのが熱い。

一戦目はうしおが一蹴されて即終了。
見開き「斬」の字がカッコいい。
十郎強ェ!
藤田氏いわく「鋭くて、速くて、強いものに憧れる」とのこと。
獣の槍使用時のうしおに完勝するとは。
十郎を追う最中の回想で、十郎がとても穏やかな表情をしているので胸が痛くなります。
「雷信兄さんやかがりとずぅーっと三人で暮らせたらいいなあ」
現在の寝顔も、本当は心優しい妖怪なのだと語っています。

大切な場所を奪われた辛さを知るうしおは、十郎達のために涙する。
「わるかったなあ、つらかったろうなあ」
人間でありながら住処を奪われた十郎達のために何も出来ず、せめて憎しみを受け止めようと思った。
手を差し伸べるうしおに十郎は微笑み、獣の槍に身を投じた。
悲しい過去を持つ敵の登場に、戦う→改心→仲間になる、という展開を予想していたので、衝撃を受けました。
うしおだけでなく、助けを求める声に応えた作業員達も彼の心を動かしたんだろうな。

第十章 童のいる家

小夜登場。
礼子の時もそうでしたが、死んだ目と生きている目の描き分けが上手い。
悪い妖怪をやっつけるだけでなく、人間の業も描かれる。
その上で人間を守るために戦うからこそ重みが感じられる。
とらが体を張ってオマモリサマを助けたのは以前からは考えられない優しさですが、まだ「困ってる奴を放ってはおけない」という領域まではいかない気がする。
一番大きい理由は、閉じ込められていた己と重ねたからでしょうね。
そして、小夜に選ばせる展開が熱い。
うしおは手を貸すものの、立ち上がるのは彼女自身。
自分で道を選び、歩もうとするから、胸を打つ。
ことあるごとに「ごめんなさい」と謝っていた彼女は、うしおに笑う力を与えられた。
後に重要な役割を果たすことになります。

第十一章 一撃の鏡

重要なのは、うしおと麻子、とらと真由子の関係の掘り下げと、雲外鏡のおんじ登場ですね。
おんじは最後の語りがありますから。
最期の言葉が「……女」なのは悪役としてどうよと思います。
欲望に正直になり過ぎだ。
夢オチにしようとした麻子と真由子ですが、無理があるだろう。
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