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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

うしおととら感想 2

うしおととら感想 2



第十二章 遠野妖怪戦道行

うしおの母に恨みを持つ妖怪達が潮を襲撃。
かつてはもっと冷酷だったと指摘され、揺らぐとら。
止まったり戻ったりしつつ距離を縮めるから説得力が増します。
とらが中国から来た事、字伏と呼ばれていたこともさりげなく明かされます。
途中河童に傷薬を塗ってもらうのですが、この河童に和む。うしおに「サンキュ」と言われ「さんきゅ?」と言ったり手を振ったり。いい奴だなおい。

野村のじいちゃんも好きです。妖怪達に襲われた時のリアクションとか、事情を聴いた時のやりとりとか。
慣れてきたと語るうしおは、「妖怪を殺すことにかい?」と尋ねられると、勢い良く否定する。
「ちがうわい! 妖怪がマジにいることにさっ、殺すことに慣れるかよっ」
「たとえバケモンだって殴った手の方が、イタイこともあらあ」
ここでしっかり否定できるのがうしおのいいところ。
何のために戦うのか、見失ってはいません。
余を殺すことが目的で戦いを始めたのかとバーン様に問われ、否定したダイを思い出す。
「クリームパン!」の笑顔が眩しい。
「妖怪もこの味がわかりゃあ、人間と少しは仲よくできんのによ!」
という台詞に同意。

平穏な時間は続かず、妖怪に襲われたうしおは死を覚悟する。
そこへ飛び込んできたのは雷信、かがり!
カッコいいんだから!
うしおを殺せば助けてやるという提案を、受け入れようとするうしお。
そんなこと言われて頷ける二人じゃないよな。
二人は共に死ねることを誇りに思うと告げ、敵に突進。
絶体絶命のところにとらが来てくれた。
予想できたけど、おいしいところを持って行ったな。

東国の妖の長に会ってうしおの母が恨まれる理由を聞く。
オマモリサマのとりなしもあり、うしおの人柄を信用した長は、とらと一鬼が一騎打ちをし、とらが勝てば一切手出しは無用と告げる。
始まる前からここまで決着の見えている喧嘩も珍しい。この時は「強い奴が出てきたら真っ先にかませ犬になるんだろうな」などと思っていました。ごめんなさい。
妖怪達の行動に引っかかる部分をとらが指摘してくれたのでスッキリ。
敵わないから息子に八つ当たりと言われると相当情けないな。筋違いです。腕っぷしを誇っているわりに、言ってることとやってることが違うと言いたくなる。
尤も、敵視するのも八つ当たりだけじゃありませんが。
白面に味方しているように見える女の息子が、妖怪を殺すための槍を持っていたら、敵と思い込んでもおかしくない。
守っているわけではないと今まで思いつかなかった、もしくは理由を訊き出そうとしなかったのは、とどめ刺すのを邪魔されて頭に血が昇って敵だと思い込んでそのまま……という感じでしょうか。
強固な信頼関係を築いて白面に立ち向かったのではなく、あくまで手を組んだだけで、分かり合えていなかった。

マヨヒガに入った者は何か一つ持って帰ってもいいと言われたうしおが選んだのはおいしそうなおにぎり。
他に役立ちそうな武器も金もあるのに。
とらや雷信達を見ながら「ほしいもんはもってるしよ!」と傷だらけの顔で笑ううしおの笑顔が眩しくて……徳野さんの気持がわかる。

第十三章 お前は其処で乾いてゆけ

凄い章名がきました。ラスト近辺の章名やサブタイも素晴らしいですが、前半の章名では「風狂い」と同じくらい好きです。
なまはげもどきの妖怪の凶悪さが生々しくて恐ろしい。
しばらく共に旅をすることになる大学生、香上と片山のコンビは、情けなく頼りないのですが、だからこそ共感しやすく、振り絞る一かけらの勇気に胸を打たれます。
少女の皮を被る為に自分の皮を剥いで近づく猿を背中から突き刺し、うしおが静かに告げる。
「おまえはそこでかわいてゆけ」
少年漫画の主人公とは思えない台詞。それを納得させるだけの迫力。
最期の瞬間子猿の顔が重なりますが、人間になりたがった理由を思い出せず、大切なことを忘れたままでした。
やりきれなさが残ります。

第十四章 鎮魂海峡

かつて沈没した勇雪丸に乗り込むことに。勇雪丸という名前が好きです。
船長の「オレたちの分まで生きてくれよ」「君がゆく航海にも、幸あれ……」という台詞が心に残ります。

第十五章 汝 歪んだ夜よりきたる

吸血鬼特有の妖しさが伝わってきます。吸血鬼の呟く詩も雰囲気作りに貢献している。
今回の話はとらとヒョウさんがメインで吸血鬼を退治するのですが、ヒョウさんは吸血鬼より闇夜が似合うような気がする。
追い詰められた時の、
「お前は…子供を殺した…理由は、それだけで充分だ」
と告げる彼の凄まじい笑顔が……!
自分の魂も大切な者達が死んだ時に死んだと言う彼ですが、狙われた親子が無事であることを確認してかすかに笑みを浮かべたので、完全には死んでいないと思います。
うしおとの出会いがきっかけとなったのかもしれない。

第十六章 湖の護り神

ポイントなのは体を真っ二つにされても生きていられるとらの不死身っぷり、土地の守り神のサンピタラカムイ、槍の力を抑える赤い布の効果ですね。
ここで香上・片山と別れることになりますが、楽しかったと語るうしおがすげえ。

第十七章 霧がくる

「オレが頑張ってみんなが助かるなら……!」なうしおに対し、「人間は自分が大事、自分さえ助かればそれでいいだろ」という徳野さんやとらの反応があるから重さが増します。
主人公の考え方を一方的に持ち上げるのではなく、疑問を投げかける。
それでもなお戦うことを選ぶのが彼らの強さだと思います。
物を溶かす霧の妖怪シュムナが何気に強いです。実体がないため攻撃がまともに通じない。
妖怪や人の魂を吸い込む別世界への入り口、冥界の門に入れてしまわねばならないのですが、簡単にはいかない。
うしおのまっすぐな目に負けた徳野さんは、母の言葉を思い出し、命をかけて冥界の門にシュムナを押し込む!
駆け寄るうしおに「ボーズ…オレは…オレは…まっすぐ…立ってるか…?」と最期に問いかけて。

うしおが誰かを一方的に助けるだけでなく、相手も立ち上がる様が勇気を与えてくれます。
藤田氏いわく「マッチ売りの少女がかわいそうなことになるのが気に食わない」ということで誕生したうしおととら。
しかし、最終巻では「少女が戦わなきゃ」と告げています。おそらくうしおたちがマッチ売りの少女の世界に行けば、勇気を得た少女が立ち上がり、うしおの助けも得て自ら運命を切り開くことになるのでしょう。

第十八章 婢妖追跡~伝承者

獣の槍伝承候補、関守日輪登場。
主人公的に批判的なキャラは、内容が尤もだと思えるなら深みが出るので魅力を感じます。
出るキャラがことごとくうしおに惚れてもつまらないので、否定的なのは歓迎しますが、言いがかりに近いため引っかかる。
対抗心剥き出しで勝手なこと言った挙句殴りかかるからなぁ。
必死で修練を積んで候補の一人にまで上り詰めたのにいきなり出てきた少年に持っていかれたら腹立つのは仕方ないでしょうけど、ぶつけ方が酷い。
槍の使い手を選ぶ基準がよくわからない。
黒くなる前のアイツが使えたなら日輪が使えてもおかしくなさそうですが……うしおと会ったからか。

二人目の候補、秋葉流が登場。
単行本の巻末クイズで伝説となった存在。
「流兄ちゃん!」と血涙を流すうしおにシンクロした。
こういう掴みどころがない実力者は、ちゃっかりおいしい場面を持っていくイメージがあります。
うしおとともにいるとらに興味を持ち、勝負を挑む。
うしおと一緒にいる理由を問われたとらの返答は「あいつといると退屈はしねえな」。
流の反応からすると、後の展開はある程度決まっていたのでしょうか。

その後白面の者の手先、婢妖に乗っ取られたバスの暴走を止めることになるのですが、錫杖や独鈷、結界を駆使して乗客を無事脱出させます。
日輪もこうしてくれればなあ。槍にこだわるよりやることあるだろ。
追い詰められたうしおの力を見た流は、候補から降りて行動を共にすることに。
自分のせいで乗客を巻き込んだという自責の念に襲われたうしおに発破をかける流。
うしおにとってはまさに頼れる兄貴分となったのでしょう。

第十九章 畜生からくり

人形の不気味さが出ています。

第二十章 追撃の交差~伝承者~

三人目の伝承候補、杜綱悟。
彼は雷信と似ている。実力があって、正統派の美形で、人間出来てる兄貴というところが。
整った顔立ちがボコボコゆがむ様は強烈。容赦ないな。
改めて振り返ると、いっそう好きになったキャラの一人です。
候補では流のインパクトが強烈ですが、悟のような安定感のあるキャラがいてこそ、流の漂泊っぷりも際立つのだと思います。
こういう人物がいないとまとまらない。
「実力者で人格者で美形なのに影が薄くないか?」と思いましたが、登場初期の段階で苦悩と克服が描かれ、後はずっと人格も実力も安定しているゆえに出番たっぷりとはいかなかったんだろうなぁ。
もう少し活躍を見たかった。
最も槍に近いはずなのに婢妖にとりつかれたのは深い理由があると思いたい。
「なんだ、たいしたことないじゃん」で片付けるより、「このキャラは相当な実力者だが、敵はその上を行った」の方が盛り上がりますから。
候補者の中で一番崩すのが大変だから、槍が抜かれた頃から念入りに、じっくりと、浸食していったのかもしれない。
日輪:気負いすぎ、思い詰めすぎで隙をつきやすい
流:そつなく立ち回るが「大切な者達を守るために負けるわけにはいかない!」という気迫に欠ける
四人目:実力は高いが「彼女」が何とかする
特に、人々を団結させて対抗する適性は悟が一番高そうです。

純とのエピソードはダイ大を思い出しました。
妖怪に襲われた彼女を救った悟だが、返り血を浴びた姿を見て純は拒絶の悲鳴を上げてしまった。
誰かを救いたくて力をぶつけたら怯えられたってやりきれねえ。
「立派な優等生」で終わるのではなく、単なる打たれ弱さや脆さとは違う弱さ、傷を抱えていて、それでも進もうとするから応援したくなる。
杜綱兄妹は互いを思っているゆえに後悔が深く、よそよそしくなってしまい、それでもずっと相手を思っているところがいい。
彼が修行してきた理由は、使命もありますが、最大の理由は妹を怯えさせないため。
妹のために力を制御する訓練を重ねてきたからこそ、自分をコントロールできず妹を傷つけた、それどころか殺そうとまでした衝撃が大きく、絶望も深くなるわけで……。

回想では流が厳しい修行をこなす描写も重要です。
流と悟の関係も気になるんですよね。
「俺にはない人望がある」と言うなど、流は悟を認めている様子。
羨ましく思ったりしないのでしょうか。
本気で勝負したくならないのか?
やる前からこれまでと同じだと諦めているのか。
そもそも悟は全力でねじ伏せようとする性格じゃないから対象外か。

兄妹を救うため、うしおは人に戻れなくなる覚悟で体内に入って婢妖を倒すことを決める。
「流にーちゃん……男って一生のうちになん人の女の子の涙をとめてやれるんだろう?」
正直くさい! でも言葉の裏に覚悟があるから薄っぺらくは感じない。
帰りを待つ人間がいるのに、母の真意を知る目的があるのに、という気持ちも湧きますが、止められない。

珍しく感情を露にして止めようとする流が熱い。
己の身を顧みないうしおを止めようとして、退かないうしおに勝手にしろと言いつつ純に熱く語って、うしおが戻ってきたら喜んで……。
笑みの仮面の下から剥き出しの心が見えた気がします。
うしおとの出会いがきっかけで変わっていったのでしょう。
突然獣の槍に選ばれた少年の気持ちを語るシーンは、いいシーンだと思うと同時に「すんなり協力してくれた純より、心の傷を抉ったり殴ったりしてフォローもろくにしない日輪に言うべきじゃないか」と思いました。
純はうしおにぶつけた言葉を反省し、自分にできることをやろうとするので、見ていて好ましい。痛い目に遭っても必死に力になろうとするから応援したくなります。

脳で婢妖の大将、血袴と決戦。
白面の者の手下の中では珍しく武人系。
獣の槍使用時のうしおを翻弄するなど強さも段違いです。
「ワルいヤツか…ははは、自分が受け入れられぬ事象を、人間はよくそう名づけるよのう!」といい、「今までどんな者と仕合ったか知らぬが、未熟よのう」といい、風格があります。

嫉妬につけこまれた悟ですが、普通ならぶつけないでしょうから、あまり責める気になれない。
大抵の人間が抱かずにはいられない感情を利用した、白面の者の狡猾さを恐れるべきでしょう。
兄妹の和解のシーンは心が温まる。
悟が整った顔立ちを存分に発揮している。これまでゆがんだ笑顔ばかりだったからな。
ふと、純は今まで気持ちを伝えなかったのか疑問に思いましたが、普段「あの時はごめんなさい」と言っても「いいよ、謝る必要はない」とか「気にしていないさ」と返されて終わりだったのかもしれない。
恐ろしい姿に向き合ったからこそ、ちゃんと伝えたと実感できたのかも。
一方で流がうしおの問いに答える。
「おめえならきっと……望んだ数だけな」
ここの流とうしおの笑顔に胸がギュッとなります。
そして、変貌。
獣の槍の使い過ぎでうしおは魂を吸い取られ、次章へ。
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