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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

うしおととら感想 6

うしおととら感想 6



第五十二章 鳴動天 開門す

小夜が最大の活躍をします。
冥界の門、開門。死者の魂が戻ってくる。
人間も妖怪も生者も死者も、皆が力を合わせて白面に立ち向かう!

胸に穴をあけられたとらの姿を見て涙するうしお。
そして槍の破片に「槍よ! 来い!」と呼びかける。ああ燃える。
獣の槍が復活し、再び白面に挑む!

第五十三章 約束の夜へ

この章名だけで降参。
復讐者、ヒョウの戦いに終止符が打たれる。
「子供を喰うのか、キサマ…やってみろよ。オレの目の前で…今一度…喰ってみろよォ!」
と告げるヒョウさん。とてもイイ表情。
どこにでもいるような優しげな男性との落差が哀しい。
地獄を目にして血塗られた復讐者に変わり果てるほど、憎悪は深かった。
雷を吸い込んだ浄眼を自ら抉り出し、霊刀の生えた口に押しこみ、符の縫い込まれた腕を喰いちぎらせる。
そして、渾身の『禁』で体内から爆ぜさせる。

ハイフォン…レイシャ…今こそ…禁

鳥肌が立ちました。
自分が喰われる前提の策。最初から生きて帰る気はなかった。
体も命も復讐のために捧げる姿は壮絶。
復讐を貫いてほしいと思うか、やめてほしいと思うのか、キャラの性格や状況によって変わりますが、ヒョウさんに関しては命を落とすことになろうと完遂できてよかったと思う。
ヒョウさんの笑顔が穏やかで、ようやく復讐の長い旅路が終わったのだと感じさせます。
彼の前には家の扉が。
あの日開けると暗黒の淵が広がっていましたが、開けた先に待っていたのは微笑む妻と娘。
彼は、昔娘にあげるつもりだったブリキの玩具を懐から取り出します。
ずるいよヒョウさん。そんなボロボロになっても持ってたなんてよお……!
長い長い年月、暗黒の夜を彷徨い続けた復讐者が辿りついたのは、約束の夜だった。
憎しみだけではなく、背後の母子を守ろうとして戦ったんですよね。
きっとうしおに出会って変わったから、母子を守ろうという心があったから、自分の家に帰ることができたのだと思います。

紅煉が最期まで憎まれる悪役を貫き通したのも素晴らしい。
散々人間も妖怪も殺してきた外道が、「死にたくねえ」と絶叫して滅ぶ。
因果応報、最期までクズだったからこそ、ぶっ倒されて最高にスッキリする。
「紅煉! なぜ来ない!? 紅煉ぇぇん!!」という白面の台詞に、ヒョウさんの戦いには個人の復讐以上の意味が込められているのではないかと感じました。
紅煉との戦いはヒョウさんのもの。
しかし、紅煉を討つことでうしお達の助けになった。
孤独な戦いが全体に影響を及ぼした。

第五十四章 太陽に 命 とどくまで

ここからは一話ごとにいきます。

娘 静かに舞い降りぬ

緩急のつけ方がすごく上手い。
ガンガン押していくだけでなく、静かな流れから盛り上げていく。
真由子の服がとらと初めて出会った時のものになってる。
とらの胸に開いた穴は、白面の攻撃が原因ではなくうしおの「あばよ、バケモン」が原因ですね。
うしおの次に喰ってやる宣言に対して「ずーっと食べないつもり」のやりとりにグッと来た。
とらも否定しないんですよね。
守ってくれると言われて否定するのも熱い。
今倒せばいい、からの「お前とわしなら……」で気づくシーンに快哉を叫びたくなる。
うしおから「喰った」ものに気づいたか。
胸の穴がふさがり、とら復活。
やはり、彼がいなければ!

最強の悪態

苦戦するうしおのもとへ、とらが駆け付ける。
目を輝かせて呼びかけたものの、とらの険しい表情に息を呑むうしお。
自分から決別したため、もう以前のように接してはくれないと思ったのでしょうね。
言葉を失っているうしおに、とらが悪態をつく。
いつも通りの彼に、心から嬉しそうな笑みを浮かべて応じるうしおが……表情の変化が見事。
「行っくぜえ、とらーっ」
「知るかよ、うしおーっ」
『最強の悪態』に相応しい、最高に燃える軽口の叩き合いです。
いかにも仲直りしますな台詞ではなく、いつもの距離感がたまらん。

400m

復活したコンビ、マジで強い。
「二体で最強。それがあやつら」と告げる長はわかってらっしゃる。
科学者も活躍。
憎しみにとらわれることなく、遺志を継ぎ、己の為すべきことをきちんと果たす。
博士達の命を懸けた仕事が、最後の一押しに。
犠牲を払ってでも白面を倒すという姿勢を、犠牲の中に自分達を含めてでも貫き通しました。
妖怪バトル漫画でここまで科学が活躍するとは。
ただの悪の科学者では終わらなかった。

旅の意味

科学者や法力僧、お役目に妖が白面を結界のリングに閉じ込めた。それでも白面が反撃しようとした瞬間、攻撃が叩きこまれる。
ミサイルを撃ち込んだのは自衛隊。
戦車に炎が吐きかけられるも朝霧はじめ雪妖たちが吹雪で食い止める。
さらにサンピタラカムイら土地神も参戦し、うしおと出会った者達が力を合わせて白面の者に立ち向かう!
「おまえ達は、戦いの中で、多くの者と深い絆で結ばれていった。おまえ達の旅は無駄では無かった」
サンピタラカムイの言葉に旅の意味がぎゅっとこめられています。
今までの歩みが全てここに凝縮されている。
白面が結界内に誰も立ち入れぬようにしますが二人は無事。
うしおととら対白面の『タイマン』が始まります。
二人ですが、タイマンで合っています。彼らは二人で一体の妖ですから。

太陽

杜綱兄妹が共に戦っているのを見て盛り上がりました。
白面は奥の手である雷の尾と槍の尾を出して迎え撃つ。
黒炎が初登場時より弱く見えるのは、短期間で何度も生み出されたためでしょうか。
それに、槍の使い手であるうしおやその相棒のとらには手練れをぶつけねば一蹴されて終わりますが、普通の人間やそこらの妖怪にはそこまでせずとも十分と考えてもおかしくはない。
追い詰められてもなお威厳を失わない白面の者が見事。
台詞がいちいち貫録たっぷりです。
自己満足、自己陶酔と突きつけられてもうしおはくじけない。
自己満足や綺麗事などと否定された時、主人公がどんな答えを出すかで作品全体の印象を左右します。
「もし、オレが願えば…誰かが助かるなら…もしもオレが泣けば…誰かの涙を全部泣いちまえるなら…オレは願うさ。何度だって泣いてやる。そして立つ――立って戦う!」
闇夜をもたらそうとする白面に対し、太陽を指差し雄々しく宣言するうしお。
「今、オレ達は…太陽と一緒に戦っている!」
太陽を指差し真っ直ぐ立つ姿のカッコよさは最高潮。
章名とも相まって胸に響きます。
ここの太陽は、陰の存在である白面と対になる、陽の人々を指しているのか。
もっと単純に、心を照らすもの……希望と言い換えるべきか。
色々解釈できそうです。

最終章 うしおととら

いよいよ最終章。この漫画のタイトルがきました。

最終局面

字伏の叫びに気迫と悲哀が込められています。
槍に魂を吸い取られ、獣となっても数百年解放されず、白面への憎しみに囚われ姿が変わっていく。
「まがい物どもが! 人のいう地獄とやらに落ちるが良い」
「白面よ、ならば我々はその地獄で――おまえの滅ぶ様を見せてもらうぞ! 高笑いしながらな!!」
字伏は解放される歓喜と共に尾を破り、体を突く!

白面の者

白面の眼差しについて語られる。
登場時からずっと上目遣いだったことには、理由があった。
陽の存在が羨ましく、妬ましく、恐ろしい。
「何故我は陰に、闇に生まれついた…」
「キレイダナア…ナンデワレハアアジャナイ…ナンデワレハニゴッテイル…!?」
あれほど恐ろしかった存在に悲哀を覚える。
白面と重ねて流の心情が語られる。
「俺のせいで」と考えるうしおに、それは違うんじゃないかと言いたい。
自分を責めるのは背負い込みすぎです。
しかし、ここで「俺は関係ない」と切り捨てる性格なら、皆の心を一つにはできなかった
流れは自分はうしおにはなれないと知っていたため敵に回った。
そうでないと自分が自分でなくなるから。
白面も流と同じく、眩しくて人間が見られず怖がっている。
流が死んだのは自分のせいだと考えるうしおに否定する声が響き、白面の恐れる人間の陽の力が現れる!
冥界の門から戻ったヒョウさん、徳野さん、さとり、そして流。
彼らが白面の尾を砕く!
彼らに助けられ、うしおの表情に力が戻る。
本当、完璧だ。
負ける気がしない。
九印が滅び、紫暮がおいしいところを持っていき、かがりと雷信はボロボロに。
「いつも一緒だぞ、かがり」
「はい」
覚悟を決めた二人が見たのは黒炎達の首を瞬時に刈り取った十郎。
十郎強すぎ。さすが獣の槍を使ううしおに一度は勝利した妖。
凶羅も「らしい」最期を迎え、物語はいよいよ最終話へ。

うしおととらの縁

うしおととらを倒すため、白面は全てを知らせる己の目を抉り、捨て身で襲いかかる。
執念を見せる白面に対し、とらも負けじと命を削る。
己の身体に獣の槍を刺して、気配を隠す。
ここで長年磔にされていたのに滅ぼされなかった理由が明かされる。
物語の始まりとつながるのが熱いです。
自らに槍を突き刺したとらが、抜こうとするうしおに叫ぶ。
「他のヤツらが白面にぶっ殺されてもいいのかよ!?」
一話では「イノチって何だ、動けることか」と尋ねていたというのに、この変わりよう……。
命を何とも思っていなかったとらが、人間や妖怪を守るため、己を犠牲にしてでも白面を倒そうとしている。
うしおも己の身を盾にしてとらを守り、二人で渾身の攻撃を喰らわせる。
相棒の命ごと貫く一撃だったからこそ、致命傷を与えることができたのかもしれない。

そうだ…
今までみたいに…そうだ…
行こうぜ、とら。

渾身の一撃が白面に突き刺さる。
とらの雷を食らい、白面は最期を迎える。
とらの傍らにラーマと姉が見えたのは、読んだ時はイメージ映像だと思っていたのですが、冥界の門によって実際に現れたのかもしれません。
憎しみではなく、守りたいという心で白面を倒すことができました。
「誰か…名付けよ、我が名を…断末魔の叫びからでも、哀惜の慟哭からでもなく、静かなる言葉で…誰か、我が名を呼んでくれ…」
「我が名は白面にあらじ」
「我が――呼ばれたき名は…」
そして尾の最後の一本が赤子の幻を映し、消える。
白面の鳴き声が今まで「おぎゃああ」だったことに意味があったとは。
破壊と殺戮を振り撒いて散々暴れてやりたい放題やった改心しない敵なのに、最期に切なさを感じる。
違う道を歩んでいたら、と思わずにはいられない。

とらは満足そうに笑って消える。
「もう…喰ったさ。ハラァ…いっぱいだ」
そう言い残して。
うしおが人間に戻ることができて安心しました。
皆のために戦って戦って戦い続けて帰れないなんて悲しすぎますから。
妖怪達が石と化し、日本を支える礎に。
「だが、まちがうな人間ども…我々は、人のためにゆくのではないぞ。我々はこの国が好きなのだ。草木が語り…土がなお生きるこの地がな…」
「いつでも心せよ! この国の礎には、常に我らが在ることをな!!」
一部の妖怪は残りますし、いつか帰ってくることが語られているので救われた気分に。
これで妖怪が全員いなくなったら、「人間以外排除されるのか……」と落ち込んで、スッキリしなかっただろうな。

卒業式の日、うしおは幸せそうな顔で味噌汁を飲んで学校へ。
とらと出会った蔵を見て泣きそうになるも、
「でも…おもしろかったよなァ…なあ、とら」と笑みを浮かべ、眩しい目で前を見据え、歩き出す。
うしおの表情の変化が実にいい。

妖怪達がいなくなって寂しいけれど、雲外鏡のおんじの語りで救われた気がします。
『人間は土に生まれて土に死ぬ…土に死ねば、この世に再びかえってはこない…にもかかわらず…その土からすらこの世に立ちかえってくるもの。それが、妖怪なのだよ』
だから、だからさ、ひょっとして…いつの日か…
「行っくぞーっ、とらーっ!」
「うるっせーんだよ、うしおーっ!!」
想像にゆだねる形ですので、希望が抱ける。皆元気に過ごしていると思えます。

作者が面白いと思うものを全部ぶちこみ、全てを描ききったと思わせる、燃え尽きそうに熱い漫画でした。
私にとっての少年漫画のバイブルです。
面白かったよなァ…。

ここからは外伝の感想を。

妖今昔物語

無明は真由子の先祖なのでしょうか?
ほおをつねる仕草など演出が憎い。
このころのとらは凶悪で人食いの妖という禍々しさが出ていてよし。

桃影抄 ~符咒師・ヒョウ

符術を学ぶヒョウ。
平凡な父から復讐者へ変貌する過程が描かれています。
この時点では、自分から復讐をとったら何も残らないと言ってボロボロ涙をこぼしたり張りつめた糸が切れて泣いたり、人間臭さが残っています。
うしおに出会うまでずっと心が凍りついていたんだろうな。憎悪は除いて。

里に降る雨

やさぐれた紫暮と須磨子の出会い。
若い頃の紫暮は今では考えられないほど荒れていました。
己の力に自信を持っているのに、自分の寺にある最強の槍に選ばれないんじゃ面白くないよな。
しかし、はないちもんめをするトップクラスに強い無愛想な男……怖いからほどほどに。

雷の舞

「乗りてえ風に遅れた奴は間抜けってんだ」
胸に刺さります。ニセとらのショボさが異常です。

プレゼント

クリスマスにおけるうしおの境遇にこっちまでダメージ受ける。

永夜黎明

荒々しかったとらを槍で縫いとめた侍は、果たしてどんな男だったのか?
凶羅みたいな凶悪な奴か、紫暮みたいな渋くておいしいところをもっていく者か、杜綱みたいな爽やか美形か……どれも外れました。
封じられ、最後にうしおが蔵に飛び込んでくるシーンはツッコみたい部分もありますが(何故十郎の傷が額に?)熱いからいいや。
この話を読むと一巻から読み返したくなるから困る。

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