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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

からくりサーカス感想 2

からくりサーカス感想 2



勝恐怖症になった善治がイチゴゼリーに精神安定を見出す様が情けないやらおかしいやら。
会社の業務内容を語るようなキリッとした表情で語られても。
罪を犯した者が退場する中で生き延びた珍しいケースかもしれない。
しろがねは勝をいじめる相手をあるるかんで叩き伏せる気満々。過保護。
温かさを見せていた彼女は、子供がナイフを取り出したとたん鬼の形相に。容赦なく殴り、肘や膝を打ちこむ。
厳しい方がいいと思います。
ここで甘さを見せると簡単に刃物を振り回す人物になってしまうかもしれない。周囲だけでなく本人も破滅に向かうので止めないと。

仲町サーカスのノリ、ヒロ、おやっさんとの出会い。
ノリとヒロは『うしおととら』の香上と片山コンビを連想しました。
最初は嫌な奴としか思えなかったいじめっ子のガキ大将、梶山もいい味出てる。
泣きながら叫ぶところでこちらまで泣きたくなった。
「マサルのバカヤロウ! 誰がこんなコト頼んだよ! うれしかねえ、うれしかねえよ」
「オレはめぐんでもらうために、キャンディーおまえと食ったんじゃねえぞ。オレは……オレはこれからおまえと……」
仲良くなろうとしていたのに、勝は借金を返すための金を置いて姿を消していった。
勝の行動は正解ではないかもしれないけど、他に思い浮かばなかったんだろうな。
どうすればよかったか考えても、他の案は……。
梶山がこの時の想いを忘れずにいてくれることを願います。

猛獣使いの少女、リーゼロッテ登場。
ビーストがリーゼの姉を食い殺した場面が怖すぎます。
直後のリーゼの微笑も。
こういう負の表情が抜群に上手い。
姉の幻や復讐に囚われた眼と、それを振り払い光を取り戻した眼。違いが歴然としています。
藤田先生の描く表情や眼が強烈です。

ぎんぎつねもだけどあるるかんが可愛い。無表情っぽいが困った顔をしてるというのがツボ。
しろがねの男装姿が似合いすぎ。
『えんとつそうじ』の物語は最終章を読んでから読み返すと……。

からくり編に突入。
きました。
我々はこの男を待っていた!
左腕がちぎれましたが、生きていた。
鳴海が再び舞台に立ちます。
「死んだと思ってたら生きてた」は苦手ですが、乱発には程遠い。
生きていた理由に説得力があり、物語の根幹に関わってきますので納得できます。
「しろがね」になった鳴海は常人には無い力を得ますが、生き返ったついでにパワーアップという都合のいい印象は受けません。
生き延びたことで重いものを背負い、苦しむことになるのですから。

トリックスター的なキャラクター、ギイの登場。
美形で何かあればすぐ「ママン~」。
最初読んだ時はただのマザコンだと思っていました。
後にものすごくカッコいいマザコンだと認識を改めることに。

生命の水を飲み、「しろがね」になったマリーの台詞が重い。
せっかく死ねるのだから、邪魔するな。
あらゆる病気を治し生命力が強くなり寿命も長くなるなんて夢のように都合がいいはずの薬を飲んだのに、そんな台詞を……。
無理もないんですよね。
生命の水を飲んだ瞬間から自動人形を壊すように心を支配されるんですから。
死を迎えた彼女の体は石化し、砕け散る。もはや人間ではなくなったと語るかのような最期。
「しろがね」を生み出した銀も重すぎる業を背負っていますね……。

意識を失っている間に生命の水を与えられた鳴海は怒ります。
命を救ったことには感謝するが、意思も聞かずに勝手に連れてきてさあ自動人形と戦えと言われても納得できない。
それもそうだ。
でも自動人形に襲われている人間がいると、助けるために飛び込むのでした。
疑似体液で動く自動人形は食事代わりに人間の血を吸うのですが、効果音と絵が……エグい。
震えて動けない教師を励ましたタニアが男前です。両腕と半身がちぎれてるのに。
「しっかりおし。おまえは教師でしょう。子供らのためなら、なんだってできる!」
「しろがね」になって長い間人形を破壊してきたけれど、教師としての在り方を忘れてはいなかった。

鳴海が強くなった理由が語られる。
鍛錬を積んだ鳴海の心には風が吹いていた。強い力を持ちながら、その使い道がわからぬ者の心に吹く。
『うしおととら』の流を連想した。
いじめられていた鳴海が拳法を習うことを決意したのは、弟ができると知ったからでした。
鍛錬に励んでいたのに、弟は生まれないまま去ってしまった。
この世のどこかに生まれたはずの兄弟と出会った時のために彼は強くなったはずだった。
だが、また命はすり抜けていってしまった。
「てめーらの命は軽すぎるんだよォ!」
わけのわからない力で助かったことへの苦悩が感じられます。
死んだと思ってたら生きてた展開も、肉体的・精神的な変質やそれらを自覚しての葛藤が描かれるとむしろ好物になります。
子供達の悲鳴は、いじめられ無力だった彼の、生まれてこなかった小さな命に何もしてやれなかった彼の、力を得たと思ったのに守れなかった彼の、悲鳴だった。
初めて人を助けることができたと涙する鳴海の笑顔が素晴らしい。
顔をぐしゃぐしゃにして泣きますが、それがまたいい。
鳴海は「しろがね」として戦うことを決意する。

8巻の最後ではアルレッキーノが起つ。
来た。来ました。
最古の四人……レ・キャトル・ピオネール!
誇り高く、忠誠心溢れ、信念や美学を持つ悪役。嫌いになるはずがない。

『歯車』はクローグ村の惨劇が最大の見所です。
「不幸な過去」「悲惨な境遇」の一言では片づけられない。
ルシールの淡々とした語りがかえっておそろしい。何度も何度も思い出して感情を煮えたぎらせては飲み下してきたんだろうな。
この時の最古の四人は残虐非道な絶対悪に見えます。
ドットーレは子供の頭部でお手玉し、パンタローネは人間の身体を集めて玉乗り。
アルレッキーノは教会に逃げ込んだ者達を丸ごと焼き殺し、コロンビーヌは人間の身体をつないで綱渡り。
この時点では彼らは意思を持たなかったのですが、だから罪はないと言うことはできない。
ゾナハ病に苦しみながらも敵を睨みつけるルシール。息子を殺し村を蹂躙した悪魔の姿を目に焼き付けるために。
表情がどれも凄絶。

鳴海達の前に現れたアルレッキーノの語る内容は憎らしく、それでいてどことなく悲しいものがあります。
この頃の横顔は人形の固さ、無機質さを感じさせる。
主を笑わせるために作られたが、できなかった彼らにフランシーヌ人形は意思を与えた。
「生命の水で私達、自動人形が人間になれば! 必ずやフランシーヌ様のお心を知り、笑わせてさしあげることができるだろう!」
と告げたアルレッキーノの顔が本当にカッコいい。
彼らの目的は「フランシーヌ様の笑顔」という一点にあり、ぶれることがない。
確固たる信念、芯のある悪役が大好きです。

『ラ プランセス ドゥ マヌカン』はルシール大活躍。
片手で機関銃を振りまわし乱射する淑女がカッコいい。
食えぬ男のギイに対し、完全に優位に立てるのは彼女だけじゃないか?
ギイも引用するシェイクスピアの台詞がいちいちきまっています。
「人生は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ」とか、
「正直そうなカオをしていても、手は何をしているのかわからぬのだろう?」とか。
自動人形への憎しみだけ抱え込み、暖かい心を落としたと非難する鳴海に、ルシールは肯定する。
そう言いつつ、ギイとルシールは、エリを救うために銃弾の雨の中に飛び込んでくるんですよね。
何冷血ぶってんだ、熱い魂持ってるじゃないか。
 
鳴海との交流で笑うようになったエリ公女はとても可愛い。
アプ・チャーさんも好きです。フランシーヌ人形への忠誠心が感じられます。ギュンターも不思議と憎めない。体液を噴きだすアプ・チャーを抱きしめ、優しい言葉をかけますから。
「同じ人形なら、私はおまえよりずっと上手く公女を演じられるわ。ラ プランセス ドゥ マヌカン! マネキンのようなお姫様としてね」
「私はローエンシュタインの公女エリだ! 人形なんかに私の場所を渡すものかっ!!」
誇りが感じられる対決は熱い。
エリの手に重ねるように炎の中から拳を突き出す鳴海はもっと熱い!
『うしおととら』でもそうですが、ただヒロインを助けるだけ(でモテる)ではなく、ヒロインが自らの意思で立ち向かおうとするから心が動かされます。
うしおや鳴海がモテても鼻につかないのは、命をかけて彼女らのために戦い、真っ直ぐな生き様と熱い言葉によって立ちあがる勇気を与えるからでしょう。
最後の最後で、己に愛情を向けたギュンターに対し優しい目を見せたアプ・チャー。
彼女は人形は永遠に変われないのか疑問を抱きましたが、眼差しが立派な答えになっていると思います。

ヴィルマとの戦いではヴィルマ以上にしろがねが凛々しい。
全身にナイフを刺され、それでも倒れない。
顔と頭を刺されても冷静な顔。
平然と頭からナイフをボシュッと抜かないでください。怖いです。
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