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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

からくりサーカス感想 8

からくりサーカス感想 8



黒賀村編はまとめて語ります。
まず言いたいのは、何故勝がシルベストリを倒すのか。
改造を重ねてきたサハラ戦の時より性能は低下しているとはいえ、それでも強いパンタローネとアルレッキーノを苦もなく倒したシルベストリを、勝が一人で倒す?
天才設定や主人公補正にも限度がある。
目立たなければ、あるいは気にならない範囲であれば補正などという言葉が浮かぶこと自体ありません。
精神的な成長は「弱い自分の死と新たな自分の誕生」「鳴海の死」「記憶の旅と現代に戻っての戦い」で十分描かれており、フェイスレスのゲームに勝たねばならない以上戦闘での成長がメインになるのはわかります。
しかし、パンタローネやアルレッキーノすら受け切れなかった初太刀を受けられるのは謎です。
戦闘力はそこまで強くならなくていい。
鳴海とは異なる方面から立ち向かってほしかった。序章やサーカス編最終幕の戦いには燃えたのですから。

「天才」で「潜在能力はモンスター級」。
そうですか。
味方は揃って大絶賛、敵からも高評価される様は別漫画のキャラを連想した。
おまけにモテる。三姉妹からことごとく惚れられるのはびっくりした。
最初からそういう作風なら割り切って読みますが、主人公だからといって皆からよってたかって持ち上げられる作品ではなかったはず。
天才なのも努力してるのも疑いようがないけど、「フツーの天才」や他の人間の努力と比較して持ち上げるような真似はしてほしくなかった。

八ヶ月間の鍛練とその間の戦いは過酷なものだったと説明されていますが、青春を満喫する余裕はあったのが引っかかる。
人形を破壊する存在になり果てた鳴海や「しろがね」達の人間としての幸福を捨てた姿、命を燃やして散っていったサハラの決戦は何だったのか。
「帰る場所」「平穏な日常」を打ち砕くことで決戦の舞台に上がる資格を与えようとしたことはわかりますが、内容が……。
コミック一気読みでもつらいというか、流し気味でした。
三姉妹は単品で見ればよいエピソードですが、名台詞があったはずなのに印象に残らない。
からくり最終幕、サーカス最終幕、待ちに待った鳴海とエレオノールの再会と盛り上がる展開が続いたため、どうしても失速した印象を受けます。
鳴海としろがねの関係の変化を何よりも優先して描くべきだったと思います。
勝の強化を描くために他のキャラクターをないがしろにするのは違うだろう。
この時期の話は鳴海やしろがね、ギイや仲町サーカスの面々など登場人物が話の都合によって動かされている不自然な印象を受けます。

黒賀村編で一番気に入っているのはシルベストリです。
パンタローネとアルレッキーノは、
「現役の時なら知らないけど、サハラ戦でぶっ壊れてお情けで旧タイプの身体をつけてもらってる今は勝てやしない」
と評されているため、サハラ戦に比べるとかなり性能が下がっているようです。ただ、弱体化しているとはいえ強い。
そんな二人をあっさり倒す実力者。
見た目は渋い老人、中身は正確無比の迅い刃そのもの。
好みです。
「人間はなぜ群れたがるのか?」という疑問を抱き、最後に答えを知って滅ぶ。
孤独や悲哀をにじませるのが上手いです。
 
楽器を渡すようアルレッキーノから言われた人形は乱暴にリュートを投げ落とす。
元は従者だった人形も改造されたことで得意になり、旧式のアルレッキーノを完全に馬鹿にしている。
おとなしく楽器を拾い上げるアルレッキーノの背中に哀愁が漂ってる。
かつては無敵と謳われ堂々たる幹部として敬われていたのに、雑魚だった部下から見下され、上司からはすっかり無能なガラクタ扱い。
そんな彼がシルベストリにドシュンと切り裂かれたシーンが大好きです。かなりの美形なのに、顔が歪むほど容赦なく斬られるあたりが。
疑似体液を流しながら眉間にしわを寄せているコマもツボです。
かつてはバリバリ働いていたのに閑職に追いやられた感と、それだけでは終わらない予感を抱かせる表情に期待が募ります。
 
本編の感想を。
「もうぼくを守ってくれなくていいんだよ」
と告げられ彷徨うしろがね。
彼女の前に現れたのは、絶望し、変わり果てた鳴海でした。
これでもかと言わんばかりの藤田節全開のギシ顔オンパレード。
重いものを背負っている苦しみが伝わってきます。
ゾナハ病の治し方を聞き出すと決めた鳴海は、しろがねのいる仲町サーカスに加わることに。

かつてしろがねの表情や言葉にドキドキしていた鳴海がつらく当たるのは見てられない。
しろがねが手伝おうとしたら乱暴に払いのけて「近くに寄るんじゃねえ」って……酷い。
かつて勝に勇気と強さを、しろがねに温かさを与えた男はいない。
ここまでしろがねを憎むのも、フウが勘違いに基づいた情報を与えたからだと思うと……いや、真実を知りながら黙っていたギイにも問題がある。
ギイが上手く話せばここまで糸がもつれることはなく、いくらか苦しみも減ったかもしれない。

子供達が襲われた時は死んでいた目に光が戻る。
表情は荒んでいても行動原理は同じ。誰かのため、子供達のために戦う。
バイクに乗るところで、勝を助けに行く場面を思い出しました。
敵を撃退し、何事もなかったかのようにヌイグルミに入って仕事をする姿は昔と変わらない。
子供に囲まれている光景は、勝との出会いを彷彿とさせます。
法安が地に座り、涼子を助けてくれたことについて丁重に頭を下げると、今までの無気力な態度もどこへやら、派手に尻もちをつき慌てふためく。
ずるずる後退して後方に転び、立ち上がって逃走。
「オレ、何も知らねースから!」
慌てすぎだ。
自称悪魔なのに。
光の無い眼で「オレは人間じゃない」とか言ってるのに。
子供から感謝されてもしらばっくれますが、心をこめて「ありがと」と言われると、着ぐるみを着たまま拳法の型を披露してVサイン。
嫌な奴なら読んでて怒るだけなのに、ずるいなあ。

黒賀村の穏やかな光景から
・フェイスレスの黒い笑みアップ
・「ぜひ」
・「ぜひ」
・見開きで、ゾナハ病に侵され苦悶する女子の恐ろしい形相
の流れには鳥肌が立ちました。
勝をどん底まで叩き落とすために黒賀村編があった。
いよいよ最終章に入ります。
機械仕掛の神――デウスエクスマキナ、始動。

平穏な日々はぶち壊され、勝の表情は鳴海同様暗く染まる。
白面の者に大切なものを根こそぎ奪われたうしおのような憎悪の顔です。
完璧天才少年に見えた勝に暗い一面が見えたのでよかった。
最後の四人相手に渡り合ったのはひっかかりますが。
自動人形のジェーンやスパイダー、ドクトル・ラーオは仲町サーカスの人々との因縁を無理に作ろうとしている印象を受けます。「アメリカにゾナハ病をふりまいた」や「ビーストとかいう虎」や「母ちゃんと同じ顔」は無理やりだろ。
仲町サーカスは直接戦うんじゃなくて、皆を笑わせてゾナハ病に立ち向かう希望を与えるという役どころと予想していました。
しろがねの血液が便利アイテムになっているのが残念です。

カピタンに抱いた心境の変化は、ダイ大で「ミストバーンやハドラー、キルバーンに匹敵する悪役登場か! とワクワクしていたらただのバカ王でした」に近いものがあります。
彼の突き抜けたアホっぷりは一周まわって愛おしささえ感じます。
ホラ話の腰を折るハーレクインの苦労がしのばれる。

新しい人形がたくさんいるのに自分達を復活させた理由をフェイスレスに尋ねる最古の三人。
答えは一言。
「滑稽だからさ」
本物のフランシーヌ人形が消えていることも知らずに、ニセ人形にうやうやしく仕えていた彼らが面白いから。
人格が異なる相手を「フランシーヌ」として求める彼自身に跳ね返ってぶっ刺さってます。
真実を告げられた最古の三人の表情が人形とは思えません。
大笑いするフェイスレスに腹が立つ。最古の忠誠心につばを吐きやがって。
フェイスレスがコロンビーヌを幼い少女の姿にしたのは趣味……ではなく、「人形風情がオトナの恋愛なんて二百年早いよ~ん」という悪意ではないでしょうか。
ハーレクインに様付けする最古は見たくない。ディアマンティーナをさん付けするコロンビーヌも見たくない。
心がぺっきり折れている。
ハーレクインも「パンさん」「アルさん」「コロさん」なんて可愛い呼び名つけてんじゃねえ。
存在理由を見失った彼らには覇気が感じられません。
ああ、歯がゆい。
いきいきとして戦う最古の姿が見たい。

造物主が捕らえた女に食事を運びに行った三人が目撃したのは……フランシーヌそっくりの女、エレオノールでした。
三人ともものすごく驚いています。
これほどドッキリ大成功な例は他にないだろう。
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