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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ダイ大感想修正版 5

ダイ大感想修正版 5



12巻

・北の勇者ノヴァ
ノヴァが登場しました。
彼が後に活躍することになるとは思わなかった。
ニセ勇者といい、大会参加者といい、人材の活用が上手いのが魅力です。
認めようとしないノヴァに対し、手を差し出すダイが大人すぎてもう……。
誰が勇者かなんてどうでもいい、勇者は何人いてもいいというダイの考え方が真っ当過ぎて何も言えない。
そこまで割り切れるのが恐ろしいほどです。肩書や体面にこだわらない。

ダイとポップがトベルーラで移動している時の「怪物じみてきた」「バケモンだ」という台詞は、あくまで冗談なので軽く流していましたが、後の展開を考えると心に刺さります。
やめてくれよ……。

ノヴァの頑なな態度には腹立つけど、戦おうとする気概はありますし、実力もけして低くはないんですよね。偉そうなこと言うだけの力はある。
だからこそ、故郷が滅ぼされた戦いに参加することもできなかったという事実が重くのしかかり、目を曇らせていたのでしょう。
敵との力の差を知らされ、思い上がっていたことを突き付けられ、打ちのめされても意地を見せたのは素直にすごいし偉いと思います。
それを見て自分の未熟さに気づくダイも偉い。
どっちも勇者だ。

・フェンブレン
ハドラーが幻影を送ってきました。
「そうアルビナスを困らせるものではない」という言い方。
やんちゃな末っ子をたしなめる父親みたいじゃないか。
ゆるい空気のスピンオフ、ほのぼのハドラー一家を見たい。バーン様達はご近所さんで。

チウをいたぶろうとするフェンブレンに好感度アップ。皆が皆騎士道精神あふれていると息が詰まるので、こういうキャラもいてよかった。
「泣いて命ごいをするところを意地でも見たくなってきた」
ちょっとわかるかもしれない。
命ごいは命ごいでも、仲間の命は助けてくれという哀願なら見たい。プライド高そうなキャラが意地をかなぐり捨てて必死に頼み込む姿は貴重です。
そして、その後立ち上がって勝利してほしい。
勇ましく立ち向かうところまでセットで見たい。

フェンブレンは残酷な心の持ち主ですが、嫌悪感は湧かないんですよね。
自分の姿がどう見えるか把握していて、周囲への影響や反応を考えた上で振る舞っています。
普段は空気を読んで仲間に合わせて、悪い部分は敵に対して披露するなら、責める必要も無い。味方ならまずいでしょうけど悪役ですし。
ザボエラに足りないのはそういったバランス感覚ですね。

13巻

ハドラーとミストバーンの関係は言うまでもなく、他にも見どころがたくさんあります。
個人的に一番泣ける巻です。

・衝き動かすもの
フェンブレンがやっぱり好きです。
自分より力量がはるかに上の相手、それも二人相手に戦略を立てて挑むのは見上げた根性。
単独行動を取る際には腕章を外し、仲間に詫びる気持ちもある。
勝手な行動を取るにしても、自覚しているか否かで受ける印象が変わります。
功名心や虚栄心を受け継いでいるとハドラーから評されましたが、バランとダイを狙うのは復讐したかっただけなので、そういった欲とは別物だと思います。
「気に……入らねえ」と呟きつつ死ぬのも彼らしい。
門を破られ「代わりをもて」と命じるバーン様と応じるミストバーンが渋い。

・ハドラーの望み
全てを捨てて最大限に振り絞った己の強さがどれほどなのか知りたいと語るハドラー。
「強さというのは空しいものだ。いくら上げても上には上がいる」
インフレバトルへのアンチテーゼ的発言が重く響く。
「ハドラー様のために死ねるのなら……粉々になってもオレは本望ですっ!」
と叫びながらヒムが涙を流すシーンは熱い。
鎖でダイを捕縛してからイオナズンで迎撃までの一連の流れには痺れます。
近接戦と魔法の遠距離戦を組み合わせた戦い方、好きなんですよね。魔族の身体を捨てるという代償が大きいぶん強力です。黒の核晶のせいで手加減してるとはいえ、竜の騎士二名相手に善戦するハドラーに拍手を送りたい。

・バランの強さ
バランは油断しすぎでは。
格下のフェンブレン相手に刺されそうになり、ハドラーを侮りその実力に驚愕。
「誇りで勝てたら苦労しない」「自分のプライドなんかより確実にハドラーやバーンを倒す方がずっと大事」と割り切って考えている息子の方がはるかに冷静。
修復機能つきとはいえ、厳しい戦いになることが予想されるんですから自分の剣の状態くらい確認しておきましょうよ。
もっとも、竜魔人化してからのバランの強さはとんでもない。前回竜魔人化して戦った時より強くなっていませんか?
息子相手だったから手加減していたのか、我が子を守るために本来の力以上の強さを発揮したのか。
ツッコみたくなる行動も多いけど、「相変わらず……寝かしつけるのが下手だな」という台詞はグッとくる。

・黒の核晶
ハドラーの体内に黒の核晶があることを知り、動揺するミストバーンが印象的。
鬼岩城編では恐ろしさと冷酷さを見せつけた悪役がこんな姿を晒すとは。
爆弾仕込んでたバーン様に何か言いたげな様子。
心配するな、お前にあんな物騒な物はついていないと答えるバーン様、分かってて言ってるだろ。
ミストバーンが心を痛めてるのはそこじゃない。

黒の核晶に気づいたバランが手加減を始めたことにより、バーン様が部下に声をかける。
「良かったなミストバーン。これでハドラーにも勝機が出てきた」
「えっ!?」
ナイスリアクション。
バーン様、ハドラーに生き延びてほしいという部下の心中を見抜いていらっしゃる。だからといって苦悩を軽減してやろうなどとは欠片も思わない。部下の胸中を慮って温情をかけるのではなく、容赦なく切り捨てようとしている。
良かったなって言うけど誰のせいでハラハラしてると思ってんだ。
ハドラーが勝って戻ってきたって気まずいだろ。どんな顔して出迎えればいいんだ。

バーンが黒の核晶を爆発させようとした時、ミストバーンはうろたえる。
「く……黒の核晶を爆発させるのですか……?」
やめてほしいと言いたげです。他の人物が対象ならば、絶対にこんなことは言わないだろう。
表情なんてわからないはずなのに悲しそうで悲しそうで……。対するバーン様は笑みを浮かべている。
黒の核晶を爆破しようとする時の表情。腕を折られたのに超魔爆炎覇を放つハドラーを見守る表情。そして、尊敬するハドラーの涙を見た時の表情……!

恐ろしい爆弾が体内に埋め込まれていたことを知り、地上を与えるという大魔王の言葉も嘘だったとわかり、真剣勝負を汚され男泣きするハドラー。
「何が……何が“正々堂々”の戦いだッ! こんな状況ならおまえたちに勝ち目が無いのは当たり前……! オレはっ……自らの肉体を捨て……生命を捨ててまでこの闘いに賭けていたのにっ……!」
ハドラーの涙にミストバーンも激しく動揺。
眼の光が小さくなってる。まるで我が事のように心を痛めている。
「ハ……ハドラー!」という呼びかけと表情だけで内心を雄弁に語っています。
ぐああああ!
一方キルバーンはハドラーをみっともないと罵る。
こういう憎まれ役は悪役の華だと思います。いい性格してやがる。

・執心と天秤
バーンが直接出向いて爆発させるために立ち上がると、すでにミストバーンの姿は無い。死神曰く、
「ハドラー君にはかなりご執心だったようだけど、さすがに天秤にかける相手がバーン様だと動きが早いね……!」
執心という言葉には「執着するあまり周囲の迷惑を考えない」など良くない時に使われるイメージがあったのですが、調べてみるとそういうわけでもないんですね。
物事に心を強くひかれて、こだわるということなので、悪い方向だと決まってるわけじゃない。安心しました。
バーン様と同じ天秤にかける時点で破格の扱いです。
普通ならバーン様とは比べるまでもないんですから。

忠誠のために殺しに来たミストバーンの姿を見、愕然とするハドラー。
「おまえも……おまえもバーン様と同じなのか!? オレを道具として始末しに来たのかッ!?」
「おまえにとっても……おれはやはり駒にすぎなかったのかッ!?」
血を吐くような問いにうつむくミストバーン。
生き延びてほしいと強く願い、身を案じていた。涙に動揺し、心から悲しんでいた。
その相手から自分は駒だったのかと聞かれての沈黙。
眼の光が小さく、悲しげです。

それでも、答えは決まっていた。
「……ハドラー。その質問に対する私の答えはつねにひとつだ」
「大魔王さまのお言葉はすべてに優先する……!!」
数回登場する中でも一番重く心に響きます。
口を開くまでの一瞬に、どれほど感情が渦巻いていることか。
うつむき、疲れたような表情を浮かべ、
「そうか……それがおまえの答えか……」
と身を震わせるハドラーの言葉がまた重い。
たった三ページで重いボディブローをぶちこんでくる。

ハドラーが好きなくせに、打ちのめされている様子に喜んでしまう。
ミストバーンを信頼していたからこそ衝撃が大きいわけで……。
最初は疎んでいて、信じきれない状態で縋って、誠意や熱さを感じて、感謝を告げて……そんな相手が殺しに来たら辛いに決まってる。
ミストは黒の核晶のことなど全く知らなかった。
乗り気どころかバーン様に引き気味でした。
でもそれを知らないハドラーには察しようもない。
まずミスト本人が理解してほしいと思っていない。
ミストの葛藤を知ってほしいけど、殺されようとしている側に心情慮れなんて無茶言えない。
これ以上要求するのはミストに都合よすぎる。贔屓もいい加減にしろという話です。
うだうだ責めずに引き下がっただけでも十分ありがたいんですよね。
一方的に切り捨てようとしているんですから、あの反応で済んだだけでもミストの精神に優しい。
ミストは憎まれ罵倒されることも覚悟したでしょうけど、そんなことはなかったんですから。
 だからこそかえって辛いかもしれない
恨み言ぶつけてきたらやり返せますが、ああやって受け止められると感情を発散しようがない。
そもそもグチグチ責めるような相手ならあれほど尊敬することもないか。

ミストバーンが一番好きなキャラで即座に始末しに赴いたのが最高だと思いながらもそれはそれとして、ひどい。やめてよ……と言わずにはいられない。
ミストバーンに熱さを感じる場面は多いですが、一番男気を感じたシーンはここです。
一切言い訳しませんでした。
主君のために汚れ役を引き受け、尊敬する戦士であり自分の魂を認めてくれた相手から憎まれる覚悟を決める。
心配していたとも死んでほしくないとも告げないのが潔い。弁明したところでミストバーンの気が済むだけですからね。「本当はやりたくないんだが」などと言って逃げ道を用意するようなら、調子のいい事ぬかすなと思いますし。
……その分ザボエラに八つ当たりしたように見えなくもない。

二人の決別をバーン様はどう思っていたんだろう。
バーン様がその気になれば「あのように見事な覇気や戦いぶりを見せたのだ、せめてもの餞に余の手で葬ってやろう」と言って直々に手を下すことも可能でした。ミストが大魔王の言葉に逆らうはずもなく、精神的に幾らかマシだったでしょう。
しかし、王の行動として相応しくないですし、ミストバーンの臣下としての矜持が許さないはず。
そう思いますが、あれほど忠実な部下にわざわざ忠誠心を試すようなことをしなくても……!
主を除いて一番尊敬している相手を殺させるのは残酷だ。
忠誠心というと「強敵と戦う」ことが真っ先に浮かびますが、「敵ではなく同じ陣営の相手で、心から敬意を抱いている戦士で、自分の魂を認め感謝してくれた男を自らの手で殺す」というのは重い。

そうは言っても、
「バーン様……よろしいですね!」
「許す……! ミストバーン……!」
のやりとりは大好きです。
封印解除ミストバーン降臨!
うわ、すごくカッコいい。
「さらばハドラー……そしてバランよ……バーン様が一目置かれた男たち……! 私はおまえたちの名を忘れはしないだろう……永遠に……!」
そして大爆発。もしここでハドラーが死んでいたら本当に哀れだ。
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