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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ダイ大感想修正版 9

ダイ大感想修正版 9



・真大魔王戦
消耗したダイが回復するのを待ってから戦おうとする真大魔王バーン。
相手が不完全な状態なのをひねったのではつまらない。闘いを楽しみたい。
ダイも、そんな強さのままこの世にいてもつまらないという心情を理解。
大魔王の心に最も近い位置にいるのが勇者なのは皮肉だ。
真大魔王は後半の眼が丸くなった顔より降臨直後の鋭い眼の方が好きです。

最強の技で真っ向勝負を仕掛けるダイに対し、楽しげに笑う大魔王。
「余はおまえのそういう所が好きだぞ!」
ストレートだな。
戦いを楽しんでいるのでこっちも嬉しい。
手が優雅に動き、一つの構えを取る。片手は天に、片手は地に。
天地魔闘の構え。攻撃・防御・魔力の使用が一体となった、三動作を一瞬で繰り出す大魔王の秘技。
ダイは超必殺技を弾かれ、斬り裂かれ、焼かれ、倒れ伏す。

・問題発言
おっとここで問題発言が。
「そなたは余の物となるのだ」
うわあ……。
年齢の差は無視するとしても、筋肉ムキムキの大男がかよわい少女を力ずくで自分のものにしようとしている図がまずい。
倒れたダイにイオラを連発し、いたぶる大魔王。この時のバーン様は油断しすぎ。魔界の神と呼ばれ神々のやり方に喧嘩売ろうって御方が少女にあっさり一撃もらっちゃダメだろ。
「うざったい!」という一喝も勘弁してほしい。せめて「目障りだ!」とかにしましょうよ。

・瞳化
脅威の能力というより、戦闘に加わらないキャラが危険な目に遭わないようにするための便利な装置と思ってしまう。
ポップのレベル外宣言は正直疑わしい。
老師とマァムはミスト戦のダメージとありますが、老師にダメージらしいダメージは無い。単に体力がもたないだけでしょう。
マァムは暗黒闘気の集合体のミストに入り込まれて無茶な動きをしましたが、これは回復呪文で治るかどうか微妙。贔屓目で見ているだけで彼女も戦力外だったのでは?
問題はおっさんです。磔のダメージや連戦の疲労があった……と言いたいところですが、回復タイムで治しきったのか否か。
この辺の流れはポップのクールさ・切れ者アピールがしたいんだなと思わせる。

問題発言と行動の多い若返ったバーン様ですが、やはりここぞという時は魅せてくれます。
「天よ叫べ!」
「地よ! 唸れ!」
「今ここに! 魔の時代、来たる!」
「さあッ! 刮目せよっ!」
「天 地 魔 闘」
痺れた。震えた。大魔王の大魔王たる所以を思い知らされた。
ここのシーンは何度見ても鼻血を噴きそうになります。三人がまとめて一瞬でなぎ倒された!

アバンも瞳にされ、大魔王が構えを解いて普通に攻撃してきた。
ただの攻撃でも全く歯が立ちません。
防御力は勝っていてもミストバーンでは力の全てを引き出して戦うことはできなかったのでしょう。マァムの体は自転車、バーン様の体は自動車みたいな感じで、マァムは自身の操作能力の範囲内だったから壊れるほど力を引き出すことができましたが、バーン様の体だと完全に使いこなすまではいっていなかったのだと思います。
ミストバーンの時はラーハルトとヒムの連携攻撃を食らわせることができたのに、真大魔王になってからは指一本触れられず壁に叩きつけられ、床に倒れ伏し……。

絶体絶命の中放たれるカラミティウォールを受け止めたのはヒム。そして、気合いと共に衝撃波の壁を打ち破る!
「くれてやるぞ! オレの生命!」
ウォール破りはハドラーもやった。
ただし、その時は地面を破壊して逃れました。
遺志を継いだヒムが別の形でやり遂げるのが感慨深いです。
輝いてるなー。物理的にも。

勝機を見出したポップが挑発し、天地魔闘の構えを取らせる。
ポップのイオラがイオナズン級というのは、あくまでバーン様の仮定ですよね。イオラだろうがイオナズンだろうが無駄だぞという流れの上での。
確定事項と言わんばかりにポップの呪文は何でも桁違いであるかのように扱われると首をかしげたくなる。
魂の絆で破ってみせるという相手に大魔王は宣言する。
「魂などでは余は殺せんっ!」
勝利を確信する大魔王だが、放ったカイザーフェニックスが跳ね返され、牙をむく。
かつてポップと熱い戦いを繰り広げたシグマが託したシャハルの鏡!
己の最強呪文と相手の爆裂呪文が無防備な所に直撃し、全身を焼かれる大魔王。
大魔王はダイの攻撃を見、全身を包む炎を吹き飛ばす。
「この大魔王バーンをなめるでないわ――っ!!」
迎撃しようとした彼の眼が見開かれる。ダイは彼の懐へと飛び込んでいた。二種の斬撃が彼の腕で交差し、斬り飛ばす。
(見ろよ……! 俺たちがライバルと認めたやつらは……やっぱりただ者じゃなかったぜ)
というヒムの呟きが感慨深いです。

大魔王が呆然とした一瞬の隙にダイは動き、剣を大魔王の心臓に突き刺す!
天地魔闘破りのこの一連のシーンは最高に熱いです。大魔王様もびっくりしただろうな。
ダイはライデインを唱えて自分ごと攻撃!
捨て身すぎる。
心臓に刺さった剣を伝って体内に直接電撃を送る……えぐい攻撃方法です。
バーン様の食らう攻撃は本気で痛そうなので引き込まれます。
さすが私が「ダイ大で好きなぶちのめされるシーン」ランキングでぶっちぎりの1位を取る御方。切ってよし、焼いてよしのオールラウンダー。

雷撃を浴びながらも穏やかに語りかけるバーン様が好きなんですよ。
諦めるよう諭し、満足そうな笑みと共にピラァを眼下に投下。手を振り下ろす様が最高に格好いい。
明かされるピラァの秘密。
間もなく地上が完全に吹き飛ばされることを知り、愕然とするダイと悠然と微笑する大魔王。余裕と自信が感じられる。
この場面の落陽が美しい。勇者一行にとっては絶望以外の何物でもない光景ですが、大魔王からすれば希望に満ちた光景となるのでしょう。

「明日の……あの太陽は魔界を照らすために昇る……!」

バーン様の台詞の中でもトップクラスに好きな台詞です。
太陽への想い、野望の壮大さ、敵の無意味な行動をやめさせようと諭す器の大きさ、それらが合わさって胸が熱くなります。
たとえ真大魔王がどれほど威厳にかける言動をしたとしても、この一言だけで十分。
穏やかな微笑に胸が熱くなる。不敵な笑みや冷笑、嘲笑ではなく温かな笑みなのが印象的です。
神々の愚行の償い等を口にしていても、根底にあるのは太陽へのどこまでも純粋な憧れではないかと思わせる。だから、倒して終わり、で片付ける気にはなれない。

「チェスでもそうだが、真の勝者は最後の一手を決して悟られないように駒を動かすものだ」
から始まる一連の台詞がカッコいいです。
たとえ傷つこうとも地上破壊計画を確実に成功させるために自らが囮となった。傷つくのは嫌、自分を駒扱いするなど論外、という敵に比べると恐ろしさが上です。
ダイは大魔王を殺すのが目的で戦い始めたのか訊かれ、違うと答える。
ここできちんと否定できたことが素晴らしい。
何のために戦ってきたのか見失っていない。

守るべきものはもう消える。
そう告げられたダイは涙を流し、絶望しながら倒れ、立ち上がれない。ポップも勇気を失った勇者を見て悲痛な叫びを振り絞り、大魔王はそんな彼らの健闘を称えます。
「泣くな……。おまえたちは本当に、よく戦った」
この台詞が残酷さではキルバーンには及ばないと感じさせます。
ここで戦意を失ったダイにカラミティエンドでもぶちこんでウォールを放てば邪魔者は全て一掃できたのに、それをしない。
地上破壊後に支えを失ったダイ達を部下にしようとしていたのかもしれません。

・祝辞
素直に「ありがとう……!」と礼を述べるバーン様がまるで少年みたいな顔をしています。
「神々が憎い! 我らを冷遇し、地上の人間どもにのみ平穏を与えた奴らの愚挙が許せぬっ!」
「ならば我々のいずれかが……! 神になるのみ!!」
神々のやり方はダイ大で問い詰めたいことランキングの中でも上位に入る。
マシな世界は用意できなかったんですか?
神々が上手くやっていたら問題発生せずに物語にならないとはいえ、もうちょっと何とかならなかったの?
種族が違えば体質も違うのでどう調整しても平等にはなりませんが、それっぽく見せかけるだけでも……。
劣悪な環境に対処すべく団結することを期待したんでしょうか。
血で血を洗う戦いが発生しましたが。
バランの方が上だと負け惜しみを言うヴェルザーが人間くさい。
「これが完全勝利だ!!」
あの、最も信頼した部下のミストは消滅し、お気に入りの玩具の鬼岩城は破壊され、お遊びで作った魔王軍は壊滅し、自身も心臓に剣を刺されたままじゃないですか。

22巻

・閃光発言
いい台詞だと思いつつ引っかかります。
だらだら生きる者もいれば一生懸命生きる者もいるのは種族や寿命に関係ないでしょう。
まさか「人間や人間側についた異種族=充実した生を送る」というわけでもあるまい。
「最高の友達、ポップ……! 君に出会えて……良かった!!」
に感動しました。
カイザーフェニックス分解はさすがにやりすぎでは。
終盤強化や評価を詰め込みすぎだと感じます。

・神の涙
また神の遺産か。
天地魔界のバランスが幾度となく崩されたらしい。
エネルギーチャージして願いを叶えることを繰り返すって過酷だな……。

・本物へ
「こんな北の果てにもちゃんと勇者サマはいるから安心しろいっ! ……ニセ者だけどなぁっ!」
はメチャクチャ熱い!
ニセ勇者一行がオーザムで生活していたのは覚えていたけど、ギャグかと思っていたらここで活かされた。
そこから起こった『奇跡』は周到な伏線があるので最高に興奮できる。
ゴメちゃんの正体と力、記憶喪失時とつながる「トモダチになってよ」、叶えられたダイの願い。
かつてゴメちゃんをさらおうとしたニセ勇者一行が真っ先に応えて本物の英雄になる。
美味しいところを見事にかっさらってくれました。
笑いが出るほど爽快なのは、溜めに溜められ、ここしかないという場面で爆発したから。
マトリフもここぞという場面で締めてくれます。
「爆発はどうしたアァァッ!」は何度見ても別の意味で笑ってしまいます。

・計画を阻止して
地上破壊計画を阻止され沈黙する大魔王。
救いのない奴ばかりなら止められなかったとダイが言うけど、悪人であっても自分が生き延びるためなら力を合わせるんじゃないか?
ニセ勇者達も、少し前まで罪のない魔物を殺しまくって金儲けしていた、かなりの悪党です。

大魔王はようやく口を開く。敗北を認めたものの、諦めてはいない。
生命を賭け、奇跡を起こしてまで食い止めたのも所詮は時間稼ぎ、自己満足に過ぎない。
だからこそ、わからない。無意味な一瞬の勝利のために全てを投げ打てる人間が!
閃光発言にあっさり感化されず、上手く切り返したので唸った。
言葉を聞いても計画を止められてもバーン様の軸がぶれなかったことが魅力的に思えます。認めるべき部分は認めるが、安易に考えを改めることはせず、一方的に肯定もしない。
気持ちの切り替えの早さが魅力的です。
大物ぶっているだけならば、自分の計画が頓挫した途端「ば、馬鹿なっ! こんなはずはない!」「う、嘘だ、嘘だああ!」みたいな反応になるでしょうが、流石に格が違う。
見直した……と思いきや、竜魔人化直前の浮かれようで減点。
「子供の絵空事かっ!」
「怒れ怒れッ!」
「そんなバカげた力があるなら見てみたいわ」
「カーッハッハッハッ!」
何このテンションの高さ。
ついていけなさがミストの最期そっくり。

・解放
地上の平和を守るために自身の存在すら捨てる覚悟でダイが全ての力を解き放つ。大魔王の顔色が変わり、呆然と呟きが吐き出される。
「ば……化物……め!」
ダイが肯定するのが辛い。
咆哮が恐ろしい。
殺気に満ちた目で大魔王を睨み、ダイは大魔王を拳で殴り続ける。その眼から涙を流しながら。

「“力が正義”……! 常にそう言っていたな……バーン!」
「これがッ! これがッ! これが正義かっ!? より強い力でぶちのめされればおまえは満足なのかッ!?」
「こんなものがっ……! こんなものが正義であってたまるかっ!!」

ダイ大で好きなぶちのめされるシーン第一位はここです。
圧倒しているはずのダイの方が辛そうに見えるのは、自分の考えを自らの手で否定しているためかもしれません。
『力』を、単に戦う力として考えると、力こそ全てという大魔王の主張には「弱者を支配する」「強者から支配される」の二面性がある。今まで彼は間違いなく前者だったが、ダイによって後者を叩きつけられた。
しかし、そこで自分の信念が間違っていたと認めるのではなく、「全てを捨ててでも強くなり、はね返す」のが彼の選んだ道だった。打ち負かされたからといってあっさり信念を曲げられては興ざめにもほどがありますので、見事。
彼は絶対的な力の差を感じつつも踏み止まり、拳を握り締めて立ち向かう。

「余は大魔王バーンなり!」

誇りと意地の炸裂した台詞なのでこれも好きです。
化物相手に左腕を切り落とされ、心臓を貫かれた状態でそれなりに戦えたのは彼が否定する魂の力に他ならないと思います。身体能力の大幅な向上+殺気補正で凄まじく強くなったダイに対し、バーン様も殺気補正+誇りでパワーアップしたのではないでしょうか。
崩れゆく宮殿の中で繰り広げられる無言の死闘。勝利のみを求める二人の表情が胸に刺さります。

冒険全体を通して考えた場合、ダイのパワーアップは想像を絶するレベルです。しかし、とっても強くなった、ダイ最強、では済まない。
ほんの数か月前まで無邪気に遊んでいた子供が魔界の神と呼ばれる存在に匹敵、否、それ以上の強さを持つことになったのならば、自身の力や存在が恐ろしいものに思えるのではないでしょうか。双竜紋解放前後の場面から悲壮さが伝わってきますし、支払う代償も大きい。
彼の涙は、信じる正義ではないものでしか大魔王を止められない自分の無力さへの憤りを表しているようで重いです。
圧倒的な力で解決するという敵の主張を否定しきれないままで、それどころか肯定することになってしまった。
邪悪の権化、破壊衝動の塊みたいな敵ならばともかく、通じる部分のある相手なのだからなおさら辛いのでしょう。
ダイは自分の信じる力では大魔王を止めきれず、大魔王は己の正義を最後まで貫き通したものの敗れた。そう考えるとまた違った味わいが。

殴られ続けた大魔王の姿も印象的です。
力こそが全てならば、己より強い者が出てくればどうなるのか。
いかに正当な言い分や立派な信念があろうと、踏みにじられても文句は言えない。
残酷な面を思い知らされることとなったわけですが、彼は己の主張が誤りだったと認めることはしなかった。
力こそすべてという理を否定せず、強くなって跳ね返す。結論は同じです。
皆が殺されないために振るう力は正義と言えるはずなのに、ダイはとても辛そうでした。
「力が全てだ」
「なんの、これが○○の力だー!」
「ぐわああっ! そうか、これが○○の力か」
 的なよくあるやりとりも、何だかんだ言っても結局力で倒しているという……。
 
・脱出
アバンとヒュンケルが技の危険さについて語ってますが、あんたら二人は絶対生き残るだろ。今さら死ぬ可能性が高いなんて言われても説得力皆無だ。
ここにいる者達を好きになっちまったと語るヒム。
「てめえが不死身ならっ……! 不死身ならっ! オレもまた不死身だぁ――っ!」
ヒュンケルに影響受けすぎだー!
両腕が完全に砕け、光に飲み込まれる彼を救ったのはポップでした。
ハドラーの時と違い、今度は脱出できたんですね。

・鬼眼王バーン
真大魔王戦は皆と共に歓声を上げつつ読みたいのですが、鬼眼王戦になってからは静かに、固唾をのんで見守る気持ちになります。
動から静へ。
徐々に音が消え、最小限の言葉に絞られていくから心に残ります。そして、大魔王の最期に言葉を失う。

大魔王は瓦勝利のために全てを捨てたダイに敵わぬことを悟る。震える手を見、微かに口元をゆがませつつ額の眼に手を伸ばす。
「余も……捨てねばならぬか……!」
直後、指を額に突き刺し第三の眼を抉り出す。顔面血まみれ大流血。
冷静にダイとの力の差を悟り、覚悟を決める様が壮絶。
何となくの印象ですが、老人姿の時は優勢の状況において、真の姿の時は劣勢において、それぞれ大魔王らしさが出る気がします。真大魔王になってからチンピラになっただの言われますが芯は共通していると思います。
遊び好きで、威厳があって、自分の強さに絶対の自信を持ち、信念をもって戦う。
油断し相手の実力を見誤る所も同じです。

ダイに向かって竜の子と呼びかけるバーン様は相手の強さを素直に讃える。若返ってから見せなくなっていた強者への敬意を口にする。
「今、おまえの気持ちを余も実感できる……たとえ二度とは元に戻れなくとも……勝利! その二文字のためなら……!」
そして、鬼眼王の姿が露になる。
ダサいと言われる姿ですが、あまりにもカッコよかったら捨てた気がしないので仕方ない。本人もそれが正体かと問われ「無礼な」と答えていますから。
魔獣の姿となり、二度と元には戻れない。勝利のために自分の本来の姿を捨てたのはダイと同じ。
「だが! 敗北よりは良い! 敗北よりは……! 大魔王バーンの偉大なる名だけは守り通すことができるッ!」
「それもまた良し……! 三界を支配する恐怖の魔獣となって恐れられ続けるのもまた一興よ!」
あれほどこだわっていた地上破壊計画すら捨てて、この前向き思考。
「いかんいかん、奇蹟は起こる何度でも」も納得できる。
主人公達には奇跡があるけど悪役には無いからなー。
実際、直後に真魔剛竜剣がタイミングよく飛んでくる。バーン様からしたら「また奇蹟か!」とツッコみたくなりそう。
太陽の光を畏れるような彼の様子が印象的。
ダイは太陽になって皆を照らすことを決意しますが、魔界も照らしてほしい。

歴代の竜の騎士の武器、真魔剛竜剣がポッキリ折れます。
真面目に解釈するならば、
・勝利のために全てを捨てた大魔王が憎き神の遺産を完全粉砕
・神の代理人としては勝てなかったが、人間との絆(天地魔闘破りで剣を刺したことや閃光発言)で勝てた
要するに竜の騎士ではなく勇者として勝利したということでしょうか。

鬼眼王に握りつぶされそうになったダイがポップの言葉に勇気を与えられ、力を取り戻すシーンで鳥肌が立ちました。
そして、殺気に満ちた表情のバーン様が一瞬呆然とするところで胸が痛みました。
腕破壊から斬り下ろしではなく、腕破壊→太陽のような閃光を放つダイ→光に目を奪われる大魔王→斬り下ろしと描くことでグッと心に響きます。
単にダイの背後に太陽があってそちらを見たのか、それとも太陽の光とダイの閃光が重なったのか。
あの瞬間、彼は神々への復讐も、ダイ打倒も忘れ、数千年かけて求め続けた太陽に想いを馳せたのではないか。
目くらましを食らったら目をつぶったり逸らしたりしますが、彼は直視していますから。
石と化し、太陽へ飲み込まれる彼の表情がまた……。

太陽を渇望し、太陽に目を奪われ命を落とし、太陽に消えた大魔王。
偉大なる王へダイは別れの言葉を送る。
(さよなら……! 大魔王バーン!!)
おそらくバーン様が勝利しても同じことを思ったでしょう。
互いの信念を理解してはいたけれど、譲れないため戦うしかなかった。
それでもそこに共感と敬意があった。
「さよなら……! みんな……!」と対応する別れの言葉。
サブタイトルも「さらば! 我が友」に続き、「さらば!! 大魔王」、「さらば!!! 愛する地上よ」になっています。
ダイと大魔王は決して異質な存在ではなかった……そう感じます。友ではなく、ライバルでもない、しかしある種の絆があったのではないかと。

・最終話
さりげなく「どこにも行かないよね」と尋ねられたダイは頷いています。この時のダイのの笑顔は大魔王に向けたものと違って年齢相応に無邪気です。
反対に「おれの使命なんだよ!」の笑みは大人びています。
キルバーンの素顔がインパクトありすぎ。
問題行動や問題発言があってもそれを補って余りある魅力あるバーン様、バーン様への忠誠やハドラーへの敬意で魅せてくれたミストバーン。前者の最期に心を打たれ、後者は納得いかないものの、解釈の余地はあるかもしれない。
しかし、キルバーンの正体と最期はあまりにも……!
待ってくれと言いたくなるけど、ミストが妙に友情を感じたことに納得できるんですよね。
傀儡師と人形で、本体だけではまともに戦えない者同士ですから。
魔界編があったらウソでした展開が来るかもしれませんが、最終回で衝撃的なネタぶちこんだのを今になって違うんですと言われてもそれはそれで困る。
爆弾入りの人形と四六時中一緒なんてどう考えても危険すぎるんですが、下半身吹っ飛ばされたハドラーも誘爆しなかったから意外と平気なのかもしれない。
普段は普通の頭部で、いざという時に交換する可能性もあるか。

・結末
一人犠牲になったダイが哀れです。
彼が守った平和を一時的なものにしないためにも、人間が頑張らなくてはならない。
守った相手から恐怖されたダイが受け入れられてめでたしめでたしというのは都合よすぎるので上手い終わり方であると同時に、物足りないのも確かです。
人間を好きになったヒムですらデルムリン島で暮らすことに。強制されたわけではないにせよ、今の世界では暮らしにくいことは確かです。
ポップ達が何とかしてくれると願いたいものの、「よくないとこもあるけど変えていこうぜ」ではなく、触れられずに終わってしまった印象を受けます。
閃光発言に引っかかるのは、このエンディングも影響しているかもしれません。人間賛歌は歓迎しますが、そのまま受け止めるには問題点が目立ちます。
後日談や続編があるならば、彼にはダイが帰還できるように、安心して暮らせるようにしてほしいです。強化はほどほどにして、人間代表キャラとしてそういう方向で頑張る姿が見たい。
ダイが犠牲になったままでは周囲も幸せを満喫する気になれないでしょう。

結局、戦いの根本的な原因である魔界の環境は変わっていません。
魔界に太陽の光は届かないままでは、第二第三の大魔王や、ヴェルザーのような敵が登場する可能性がある。
元は同じ世界で生活してたのに押し込められるわ、環境が違いすぎるわ、神々のやり方が理不尽なので何とかしてほしい。
地上破壊は過激な手段ですが、魔界に太陽をという願いはもっともなものですから、バーン様の志もある程度叶って欲しいと思います。

引っかかる部分もありますが、まとめきったのは素晴らしい。
とにかく、主人公達はもちろん、大魔王バーンをはじめとする悪役が魅力的な漫画でした。
言いたいことはこれに尽きる。
最高の主人公ダイ、ラスボスの大魔王バーン様……! 貴方達に出会えて良かった!
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