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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

寄生獣感想 1

寄生獣感想 1

最初はグロそうな漫画と思っていたのですが、試しに読んでみたところどっぷりハマりました。
丁寧に敷かれた伏線を回収する作品です。
過酷な目に遭い苦悩しながらも適度な前向きさや緩さを失わない主人公の新一も、初期と終盤で印象が大きく変わるミギーもいいキャラです。
特にミギーは、最初「不気味。血も涙もない性格だし、親しみは湧かないだろうな」と思っていたのが「可愛い」、そして「格好いい!」に変化しました。


第一話 侵入

地球上の誰かがふと思った。
『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか』
地球上の誰かがふと思った。
『人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか』
誰かがふと思った。
『生物みんなの未来を守らねば……』

この書き出しを見て「愚かな人間どもよ」と警鐘を鳴らす作品なのかと思いました。
そういう面もありますが、それだけでは終わりません。
小さなヘビのような生物が耳に入り込んでいくシーンが強烈です。
耳の中なんて一度入られたらどうしようもないじゃないですか!
殴られたり斬られたりするよりインパクトが大きいのは、生理的な嫌悪感が刺激されるためか。

民家に侵入したヘビもどきは泉新一の耳に入り込もうとするが、イヤホンをつけたままで侵入できない。
「困ったなー、入れない」と言いたげなヘビもどきの動きが少しだけ可愛いと思いました。途方に暮れたようにうろうろする姿がラブリー。
直後に鼻から入ろうとしたのは笑うべきか気味悪がるべきか迷いました。
寄生生物達は怖ろしく、グロテスクですが、どことなくユーモラスです。デザインも動きも。
掴み取ってくしゃみする新一のギャグ顔にも笑いました。深刻な状況なのに。
腕の中を這い進んでくるシーンは新一とシンクロして「ぎいやあああ」と叫びたくなった。
混乱しながらも咄嗟に腕でコードを縛るあたり、機転が利くと思います。私なら見てるだけで終わる。
ヘビが腕に潜り込んだと言われた両親のリアクションはドライ。

結局寝ぼけていたということで翌日平穏そのものの朝を迎えますが、昨晩侵入された男の家庭では異変が。
「ぱふぁ」、ファッ、バツンという音がインパクト抜群。
後の場面で帰宅した子供を迎える男と、食い散らされた主婦の肉片が描かれ……グロい。食事前後にはあまり読みたくない。

授業中に右手の痺れが気になる新一に教師がチョークを投げつける。
(教員生活十一年、今じゃダーツの天才よ!)
チョーク投げが上手くなったからと言ってダーツの技術向上に結びつくのか?
チョーク投げに青春をかけているということが語られますが、どんな青春なんだ。
もしかしてチョーク投げに憧れて教員を目指したの?
チョークを指二本で挟み砕かれたからといって殴ることはないだろう。どんだけチョーク投げに情熱を傾けているんだ。
そんなどうでもいいことが気になってしまう。

勝手に動く右手のせいで不良に絡まれる新一。
この頃は目に涙を浮かべて「ボ……ボク」と学生数人相手に怯えていたと思うと感慨深いです。
後に殺気全開の魔獣のような眼で「殺す!」だの「その相手なら殺したよ」だの言い出すことになるとは予想だにしませんでした。
素早く動き学生達を殴り飛ばす右腕と呆然と立ち尽くす新一の対比が効いています。
しかし、いくら腕がおかしいからって包丁で傷つけようとするか?
度胸があるな。
機転も利くし、いざという時の切り替えや胆の座りようはかなりのものです。そうでなければミギーとやっていくこと、窮地を切り抜けることは難しかったかもしれない。
お互いの相性がよかったから生き延びることができたのでしょう。
この時点のミギーは気持ち悪い。
これが作中屈指の可愛さを誇るキャラになるなんて考えもしなかった。

第二話 野獣

二手? に分かれて本を読みふける右手。
魚、動物、鳥の図鑑があるようですが、よくそんなにたくさん図鑑を所持していたな。今ならネットで済ませるかも。
母親が教育熱心だったのか、父親が知識を身につけさせようとしたのか。
勝手に本を散らかされて片付ける羽目になった新一は気の毒だ。
おまけに昨日のリベンジマッチと言わんばかりにチョークをぶつけられる。
命中率高いですし、実はすごい腕前なのかもしれない。

新一と里美は部活に入っているようですが、何の部かは最後まで明かされませんでした。文化系のように思えます。
眠い時や空腹の時、諸々の欲望を感じ取る寄生生物は脅威。自分の内心が見透かされて口に出されるなんてプライバシーもへったくれもない。
右手に寄生されたという深刻な事態にも関わらずコメディタッチで進んでいましたが、それだけでは終わらない。
「きみ……泉新一くん……だよね?」と尋ねる里美は勘が鋭すぎる。「どこかおかしい」ではなく、本人かどうか確認する点が特に。
彼女だけでなく新一の母も異変に気づきつつある。鋭い人間が多いです。

ようやく右手の寄生生物に名前が付けられました。
右手を食って育ったからミギー。
わりと安易と評する新一ですが、分かりづらくひねったなっがい名前を提案されても困るので、いいんじゃないでしょうか。呼びやすいですし。

犬に寄生した仲間が襲ってきたので返り討ちに。
せっかく出会った仲間なのにと感傷的な新一と全く動揺していないミギー。
ここでは情の無さにぞっとする新一が、後に「死んだ犬は~」と言い出すようになるんですよね。
冷酷さを見せるミギーですが、洗われた時に「シンイチつめたい」と言い出すのは可愛かったです。
一話に一回はミギーの可愛いシーンがあるかもしれない。

第三話 接触

ちょっかいを出している男達を叩きのめし女性を助けた男がカッコいいなどと思ったら寄生生物でした。
送ろうと言ったところなど完全に紳士だと思ったのに、最初から女を食べるつもりでした。
「フフ……勢いあまって二周しちまったぜ」はユーモアがあるというか、格好つけている気がします。
こんな調子で世界各地でひき肉ミンチ殺人が起こっていた。
犠牲者が増えるのを放っておけない、ミギーの存在を公表すべきだと言う新一に対してミギーは理解できない。
「人の命ってのは尊いんだよ!」
「わからん……尊いのは自分の命だけだ」
ケダモノ、虫けらと罵っても「けなし言葉のつもりかい?」とクールに聞き流す。
命は守るが口をきけなくすることぐらいできると脅すミギーが怖い。
「シンイチ……『悪魔』というものを本で調べたが……いちばんそれに近い生物は、やはり人間だと思うぞ」
神話などを読んでいると、神も悪魔も人間がモデルなんだと実感する時がしばしばあります。

新一を危険視して襲いかかってきた男がミギーのことを「右手さん」と呼んだのが新鮮でした。
ワイルドな風貌に似合わず丁寧な言葉遣いだ。ミギーの知らないことも知ってますし、どこから知識を手に入れたのか気になるところです。
自分の体に勧誘し、新一を殺そうとした男をサクッと殺すミギーに痺れた。
「おれを……助けてくれたのか」
「肉体の移動に確信がもてなかっただけだ……わたしは自分の命だけを大事に考えている」
言葉だけ聞くと、素直になれない仲間もしくはライバルキャラのようだ。
もっとも、相手は寄生生物。命を救った、救われた間柄になったとはいえ仲良しこよしというわけにはいかない。
まだまだ距離は遠いし、簡単には埋まらない溝がある。そういう緊張感があるから面白い。

猫を砂場に埋めて石を投げる悪童に眉をひそめる新一と里美。猫を救出する新一を見つめる里美の顔は感動しているようでもあり、安堵しているようでもあります。
「生き物はおもちゃじゃねえんだ! みんな生きてるんだぜ! おまえらと同じに!」
実際に何度も命を奪われかけた彼が言うと説得力があります。
幾つもの石を投げつけられても簡単に片手で掴みとり、一睨みしただけで黙らせる。
(食ってやろうか)
主人公の台詞とは思えない。
手をつないだものの、右手を訝しげに眺める里美は相変わらず鋭い。
「きみ……泉新一くん……だよね?」
「ああ……もちろん」
この頃は当たり前のように答えますが、後々自分は本当に自分か、人間のままなのか揺らいでいきます。

第四話 殺気

バスケで百発百中の新一&ミギーペア。
後の投石を思えばこれくらい軽いか。
里美達にキャーキャー騒がれたのが気に食わない男子におれと勝負しろと殴りかかられる。
あんたが新一に勝とうと、彼女の心が向いていなければ何の意味もないと思うんですが。ぶっキレた青春野郎と言いたくもなるわ。
しかも殴り飛ばされたらダッシュで逃げる。
自分から喧嘩売っておいてその反応は正直格好悪い。
「あいつは……よっぽど痛がり屋なんだろう」
「哺乳類はみんな痛がり屋だな」という台詞と対応していますね。

第五話 勉強好き

図書館から本を借りて勉強するミギー。
『大気汚染』に『地球のすがた』か。以前は生物の図鑑を眺めていましたし、知識欲溢れています。
もしパソコンがあればずっとはりついて情報を収集しただろうな。パソコンや携帯電話、その他の機器を使いこなす話も見てみたい。
新一の母はゴキブリを手づかみで捕え放り投げる息子の姿に衝撃を受け、涙を流しています。
これで驚いているようでは、ミギーのことを知ったら……。
新一と里美のむずがゆくなるような会話に「朝っぱらからほのぼのやってんじゃねーぞ」とツッコんでくれたおじさん、グッジョブ!
気持ちを代弁してくれました。

学校に寄生生物がいる→生徒の一人ではなく教師→目が合った!
の流れにゾクッとしました。冷たい微笑みが最高です。
身分を奪って教師になりすますのは、全くの別人として生きるのとは比べ物にならないほど難易度が高いはず。かなり優れた知能の持ち主です。
ミギーにとっての新一のような、社会に溶け込むための教師役もいなかったはずなのに、どのようにして知識を得たのでしょうか。独学だとしたら本当にすごいな。

第六話 田宮良子

痴漢をぶん殴り、片手で電車の外に放り投げ、脱臼した肩をはめ直す田宮。
寄生生物だとわかっていても美人です。ただし個人授業はお断りしたい。
Aの敵意に反応して変化したミギーの形状がものすごく好みです。
このデザインがトップクラスに好きだ。
次点で好きなのは投石の時の形状です。
田宮とAとの間にできた子はごく普通の人間。
繁殖能力もなく、共食いのような行為を繰り返す自分達について不思議に思う田宮とミギー。この二名は寄生生物の中でも知能が高いんだろうな。
「自分の正体を知ったところで何が変わるわけでもない」と語るAは対照的。
すでに寄生生物の中でも考え方の違い……個性が出ていて興味深い。
知的好奇心で動く彼女の存在は他の寄生生物と比べて異質です。だからこそ面白い。
スプーンをくわえて丸めるコマの顔が怖い。
「もしその気になれば、ひとクラス三秒で皆殺しにできるわ」
彼女ならば簡単にできるだろうな。力押しと知略を絡めて実に効果的に殲滅する姿が容易に浮かびます。

第七話 襲撃

新一とミギーの存在を危険視したAが校内に侵入。
ばかめと吐き捨てる田宮の顔から異種族のオーラが出まくっています。こ、怖えぇ……!
他の生徒達を盾にして攻撃しようと提案するミギーに新一は激昂する。
Aに攻撃させるだけでなく、自分も「肉の壁」ごと貫くつもり。
「おまえ……日本語うまいね。なぜだ……? それだけ人間の言葉がわかるのに……」
価値観の違いはなかなか埋まらないよな。人間同士でさえそうなのに、異種族相手ならなおさらです。
化物があっさり化物やめたら化物である意味が薄くなるので、簡単に優しさ等に目覚めないのが好印象。
この時点の新一は、Aとミギーの触手の斬り合いを目で捉えられない。とんでもなく速いことはわかりますが、どれくらいの速度なんでしょう?
机の足で刺した瞬間の描写が上手いと思いました。
「とても嫌な感触が左手を伝わってきた」
右手ではなく左手、というのが重要な気がします。ミギーではなく新一が手を下したことが強調されていて。
武器が華やかな剣や銃などではなく、机の足というのも原因になっているのでは。

第八話 種

重傷を負って新たな肉体を探すAは田宮良子の居場所を突き止めようとするが、それを読んでいた彼女の表情は冷酷そのもの。背筋が凍りそうです。
ガス爆発で吹き飛ばし、完全にとどめをさしました。
その気になればサクッと殺せたでしょうが、上半身を消し飛ばして正体を悟られないよう巧妙に振舞う。
単純な実力行使ではなく先のことまで考えて動くのが脅威です。ミギーも彼女には勝てないと言っている。

Aの子を妊娠していることが問題になり、学校を去ることになった彼女は新一と会話する。
「わたしが人間の脳を奪ったとき、一つの命令がきたぞ……“この種を食い殺せ”だ!」
「おまえ少しうるさいな……死ね」
このあたりの台詞も異種族との距離感が出ています。後者はちょっとミストバーンを連想した。
「死ね」という台詞はただのチンピラが言うと安っぽく、薄っぺらく聞こえますが、実力があり、威厳があるキャラが言うと「うおおお!」と痺れます。人間でないこともあり、人間の命などなんとも思っていないことがよく伝わってきます。
彼女の言う「一つの命令」とは、本能を直接的に言い換えたもののように思える。
2パターン以上というのが何なのかよくわかりませんでした。
単に寄生部分である頭を二つに分けて攻撃ということでもないでしょうし……。右手と左手で違うリズムを刻むようなものでしょうか?
目を見ただけで混じってると見抜けるのもよくわかりません。
面白いという理由で殺さずに立ち去る彼女は色々と特異な存在です。

第九話 母親

サブタイの意味するものは田宮良子の母親、子を宿している田宮、新一の母の三者なのでしょうか。
顔も声も似せた田宮を我が子ではないと見破った母親はすごいな。勘の鋭さというより、親子だからなのか。
特別な能力を持たない相手に見破られたことで、いっそう「母親」という存在に興味を持つようになったのかもしれない。
「朝の散歩ですかい? ミギー先生」とか「ぎゃ~冗談だっての!」とか、二人のやりとりが随分微笑ましいものになってきました。
というか、ミギーも冗談を言うんですね。
ユーモラスな雰囲気を出すのに一役買っています。

旅行に行こうと考えている両親に新一は危険だと反対する。
悩み事があるんじゃないの、ずいぶん変わったと言われても何も言えない。
父と母の態度は対照的です。心配する母親と適度に突き放している父親、二人が噛みあっていい味出てる。
隠しごとをしていたり、朝は熱心に反対したのに急に賛成したり、様子のおかしい新一に母は戸惑い泣きだしてしまう。
「あなたのことが何もわからない! 何かが……何かがちがう! まるで……まるで自分の子じゃ……」
さすがに父親がたしなめる。いざという時は頼りになる親父さんだ。
事情を知らないとはいえ、まるで自分の子じゃないというのは今の新一には辛い言葉です……。
母の手の火傷跡を見つめ、歯を食いしばる新一の表情から葛藤が伝わってきます。
真実を話したいけれど、知らせると巻き込んでしまう。危険に晒さないために、話してしまいたい衝動を押し殺して嘘を吐く新一に心が痛みます。

母の火傷のエピソードがまた揺さぶりに来ます。
新一を守るため油の入った鍋を素手で掴み、自分の手の火傷にも気づかず、息子を心配し、無事か確認する。
新一に軽くゲンコツをかます父の台詞もいい。
「いて」
「かあさんの方が痛い」
渋いところで決めてくれる父さんだ。
新一はあまり反抗しないいい子だったようですが、やはりこの出来事が大きかったのか?

旅行に出かけた二人と、音を立てて閉まったドアに不吉な予感がしました。
ここで回想シーンが挟まれるということは母親の存在感を与えることが目的で、そちらの方が悲劇が起こった時のドラマ性が増すからなどと考え出すと止まらない。
魅力が描かれたのだから死んでほしくないのですが……。
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