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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

寄生獣感想 3

寄生獣感想 3



第十七話 変貌

加奈に振られて光夫が荒れてる。八つ当たりすんなよ……。ポッと出の兄ちゃんに好きな相手が惚れたらムシャクシャするのも無理ないけど。
ワイルドな風貌になった新一に軽く衝撃を受けました。なんか、こわい。
光夫もポカーンとしてます。わかるぞその気持ち。私も「誰?」となりました。
落ち着きすぎていて以前の新一が懐かしく思える。
でも加奈との関係を訊かれて戸惑うところは新一らしい。そこも冷静な反応されたらどうしようかと思った。
前は手も足も出なかった光夫の拳を完全に見切り、蹴りを繰り出されても足を掴んで放り投げる。
そこらの不良じゃ何人いようと勝てる気がしない。心臓刺されて蘇って殺し合いを経験してしまったからなぁ。しかも相手は自分の母親を殺した化物。精神的にタフにならざるを得ない。
里美も異変を感じてる。
「泉くん……きみ……泉新一くん……だよね?」
「……さあどうなのかな」
別人みたいだ。
初期のあたふたしていた彼が懐かしい。
彼の経験したことを思えば当然とはいえ、ギャップが激しい。
「変貌」は外も内も当てはまりますね。

第十八話 人間

死にかけている子犬を抱きかかえる新一と、隣に座る里美。
旅行から帰ってきて冷たい感じがしていたので、優しいところを見て安心した。
そう思ったのも束の間、新一は死んだ子犬をゴミ箱に捨ててしまった。
かわいそうだと非難する里美に新一は淡々と返答する。
「もう死んだんだよ。……死んだイヌはイヌじゃない。イヌの形をした肉だ」
主人公の台詞とは思えない。
自棄になったり荒みきった表情で言ったりするのではなく、あくまで当たり前のことのようにさらりと言い放つのが……自分の言ってることを全く疑問に思ってない軽さです。
「子犬を看取ってあげるなんて優しい」と思った直後に「イヌの形をした肉」なんて言われたら差が大きすぎてついていけない。
里美は涙ぐんで走って行ってしまったが、新一にはその理由がわからない。
変化を自覚していないのか。
どこが間違っていたのかミギーに訊くのが重症だと思います。よりによってミギーに訊くのか。
人間の感情の機微について寄生生物に質問するのは、よほど混乱したのか?
生と死、命に対する考えが変化し、気分の切り替えが早くなっている。合理的で、感傷に浸らない。寄生生物寄りじゃないですか。
反対にミギーは人間の考え方を理解し、人間くささを見せるようになっている。
寄生生物に近づく新一と人間に近づくミギーで対比になっているようで面白い。

第十九話 島田秀雄

田宮によって学校に送り込まれた島田秀雄。
人間とともに生きていく道を模索し始めただの何だの言ってますが、胡散臭いし信用できない。
共存なんて言われても、説得力が悲しいほどにない。ミギーが信じなくて安心した。
実際、共存をほざいた口で人間をぱくぱく食べてます。おい!
そう簡単に人間でない者とわかりあえたら苦労しませんよね。人間を餌としか見てない個体が大半ですし、社会に溶け込むのも「仲良く手を取り合っていこう」などという気はなく、バレたら面倒、排除されたくないから、にすぎない。
怖ろしい形相で里美を恐怖させたり、真っ先に殺すと島田を脅したり、どんどん新一が野獣みたいになってる。

第二十話 兆し

父からの言葉が新一の心に突き刺さる。
「ひょっとしておまえ……鉄でできてるんじゃないのか」
涙が出なくなり、精神のあり方が大きく変容したことに悩んでいる新一には残酷な台詞だ。
母がいなくなっても平気そうに見えるため、思わず口からこぼれてしまったのでしょうが……。
父も失言をすぐ詫びて自分の頬を叩きます。

田宮が久しぶりにまともに登場しました。
顔も変わってる。個人的には田村の状態が一番格好良くて好きです。
寄生生物を「弱々しい」「不完全な生き物」と評し、存在する意味を考え悩む。
高い知性を持ち、自分達の存在を客観的に見られるゆえの苦悩だと思う。
反対に広川の答えは単純そのもの。
「簡単なことじゃないのかね。地球にとって人間が毒となった。だから中和剤が必要になった」
冒頭とつながる思想の持ち主です。

とうとう父は新一に寄生生物について話し、はっきりと母の死を告げた。
息子を信頼しているから話せたんだろうな。自分の言葉を受け止める素直さを持ち、同時に秘密を守る性格だと確信していないと明かすことはできない。
新一は初めて聞くふりをして、やはり父にできるだけ関わらせまいとしている。
ミギーのことは言えないか。もし父にミギーのことを話したらどういう反応を見せるんだろう。

第二十一話 観察

里美を待つ新一に気を遣って帰る上条がさりげなくいい奴です。
目立たぬところで心配りのできる男。
「何すか? ほっといてくださいよー」
というミギーへのフランクな口調に和みました。
その直後、島田が不良達を殺戮するつもりだと知らされる。落差がありすぎる。
「止めに入るなら方角と距離を教えるけど……」
「早く言えー!」
まるで漫才みたいだ。ミギーのボケに新一が突っ込む。いい役割分担だ。
駆けつけて助けてやったのに、当の不良達は友達を庇うつもりかと見当違いなことを言い出す。
せっかく殺されるところを助けたのに。
不良のリーダーを一目で見抜き、高速パンチを易々と受け止め、軽く拳を握っただけで逃走させる。
母の顔をした化物と殺し合った後だと喧嘩なんてままごとにしか思えないだろう。
何も知らない奴らを叩きのめしてやろうかと考えるあたり、新一が着実に人間から遠ざかっている気がする。「そのうち、邪魔をするなら人間でも攻撃するんじゃないか?」と思うくらいに。

第二十二話 亀裂

新一と里美は入試会場で一緒で、合格を知らされた時に知り合いになったのか。
この二名の恋愛要素はちょうどいい濃度で読みやすいです。
普通の人間である里美から見た新一の変化、人間と寄生生物の中間に位置する新一から見た一般人の姿など、二人の関係があることで表現しやすくなっていると思います。
ただ、この回想は悲劇性を出すために挿入されたのかもと勘繰ってしまいました。母と同じく、村野の退場が重くなるように掘り下げられたんじゃないかと。
すれ違いも、恋愛感情の進展というより新一の精神状態の変化からくるもので、読んでいて辛くなる。
島田について激しく罵り、無理してる、前と全然違うと言えば「うるせえな!」と大声で怒鳴る。
何の事情も知らずにこんな変化を目の当たりにすれば混乱するし、怯えるだろう。
「ごめん……人違いでした」
泣きそうな顔で出ていく里美が可哀想です。胸のあたりを押さえる新一も。
精神的にズタズタな新一を慰めるミギーが可愛い。
「食欲を出してもらわないとわたしも困る」
可愛いな。

島田秀雄を呼び出して正体を問いただそうとした裕子に「余計なことすんな!」と言いたくなりました。
ただ、彼女の状況を考えれば無理もない行動だとも思う。
読者目線ではどれほど危険で考え方の隔たっている相手かすでにわかっていますが、裕子にとっては同じクラスの生徒で、話し合いが通じるように見える相手です。化物状態の姿も見ていませんし。
刃物・鈍器は効き目がないと判断して薬品を用意したのも冷静な判断でした。
しかし、それで相手が混乱し、校内で犠牲が出たと言えるからなぁ……。
クラスの皆の前で問い詰めなかっただけまだマシか?

第二十三話 混乱と殺戮

島田を刺激した行為を除けば、裕子の判断力や機転のきかせ方はかなり優れています。
咄嗟にそばにあるものでガードし、薬品を投げつけ、窓の外に脱出し、木の方向へ跳び、枝を折り衝撃を和らげながら落下。
以上の行動で何とか生還に成功。度胸あるな……。普通なら動けないか、動いても間に合わずに殺されるぞ。一連の流れで迷わず、動きを止めなかったのが吉と出たのか。
一方、混乱する島田に接近した生徒や教師は惨殺され、避難していた集団も攻撃される。
見開き一杯の死体がグロかった。
人間の死体は初期からゴロゴロ出てきているのに、なおも衝撃を与えてくる。
十分すぎるほど怖ろしいのですが、もっと怖ろしいのはごろごろ転がる死体を見て恐慌に陥っても、少し休んだだけで落ち着きを取り戻す新一です。
「イヌの形をした肉」発言に相応しい鋼鉄の精神だ。やはりあれは強がりでもなんでもなかったと思わせます。
新一が里美と間違えた女の子は、一話で体を触られて怒った子ですね。

第二十四話 一撃

里美を発見し、助け出す新一が頼もしい。
・お姫様だっこして走る
・窓から飛び出し無事着地
・人一人を抱えて疾走、フェンスを軽く飛び越える
アクション映画のヒーローばりの活躍です。身体能力はともかく、メンタル面は疑問が残りますが。
里美を安全な場所に避難させても、やるべきことは残っている。
「ミギー……島田に罪はあると思うか?」
「罪……? それは人間たちが人間の物差しで勝手に決めればいいことだ」
「やっぱりおれたちでカタをつけよう」
ここからの新一の格好よさが加速!
学校の屋上に逃げた相手目がけて、ビルの屋上から拳大の石を投げつける。
腕を変形させて、新一とミギーの力を合わせて。
この時の形が好きだ。機能美というか、無駄が無くて美しいと感じられる。
ただ石を投げて攻撃しただけなのに、どうしてここまで迫力があるんだろう。
・三百メートル以上離れた場所から投げた石が命中
・しかも綺麗に胸の中央に当たる精密投擲
・遠距離から投げつけられたただの石ころが体を貫通
・背後の壁に当たって粉々に砕ける、音もすごい
このように色々な条件が合わさっているからか。
「一撃」というサブタイトルに相応しいインパクトがありました。
もうそこらの寄生生物では太刀打ちできないな。
新一の身体能力だけでも圧倒できそうですし、たとえ新一が攻撃に回らなくてもミギーが攻撃、防御できる。
さらにミギーは作戦を練るのも上手い。新一だって鈍くはないからミギーの知略を活かせる。
一対一では負けないだろうと思える。

第二十五話 波紋

寄生生物について公表しないことを疑問に思う新一と、推測を答えるミギー。
現時点では捕える方法がなく、混乱や騒動、人間の同士討ちを避けるため隠している。
今こそ自分たちが、と新一が思ってもミギーは断る。
「わたしには人間的な感傷が無い。だから仲間を殺す時も気分的にどうということはない。だがわたしとシンイチが逆の立場だったらどうする?」
「!」
(こう言うと悩む……これが人間という生き物なのだ)
このやりとりが好きです。全員に当てはまるとは言えないでしょうけど、人間の考え方を理解している。

危惧したとおり「人間に化けた怪物がいる」という情報に怯え、被害妄想や人間不信、さらには自殺者まで出る事態になってしまった。
頭を抱える者達に朗報がもたらされる。
見分け方を説明する教授へのツッコミが鋭い。心の声で集中砲火だ。
興奮する教授と「で?」と言いたげな面々との温度差が激しい。
私も熱弁は読み飛ばしました。
要するに髪をひっこ抜けばいいとのこと。
それとなく情報が流され混乱は収まりました。

ただ、実行するのは危険なんですよね。
怪しんで髪を引っこ抜いても、正体が判明した瞬間に殺されるでしょうし。
武装した多人数で囲んでいないと試せない気がします。安全を確保した状況でないと、
「うねうね動く髪を見た瞬間、私の意識は途切れた……」BAD END
になりそうだ。
一対一で判明したらアウトじゃないか。
見分け方がわかったと知らせることで寄生生物の行動を制限するのが狙いなのでしょう。
対策が練られ始めた以上、怪しまれないよう、いっそう慎重に動く必要が出てきますから。
混乱が抑えられたことが一番のプラスでしょうか。

第二十六話 少女の夢

加奈のファンタジーでメルヘンな夢が予想外でした。
突っ張ってる彼女がこんな夢を見るとは。
・ドレスを着ている
・花畑に座り込んでいる
・化物に襲われた彼女を助けたのは白馬にのった男
これだけでも十分乙女ちっくですが、ここからが本番。
黒い鎧に身を固めた男は右手を剣に変化させ、化物どもを切り裂いて加奈の頬に触れる。いつのまにか二人は裸になっており、彼は加奈を抱きあげ接吻をかわそうと顔を近づけ……。文字で表現するのも恥ずかしい。朝起きたら顔を枕に埋めて布団の中でのたうちまわりたくなるレベルだ。
新一の顔をした黒い騎士が『ベルセルク』のガッツに見えました。
夢の出来事とはいえ、出てきた化物たちのビジュアルといい、剣に変化する右手といい、加奈は鋭すぎる。事情を何も知らないのにここまで真相に近づける人間なんてそういないぞ。
右手をじっと見つめたことはありましたが、それだけで武器に変化するなんて思いつくはずないのに。
ただ、新一みたいな身体能力もなく、ミギーやジョーみたいなそのものずばりな相棒もいない一般人が持つには重すぎる能力です。
彼女がもう少し臆病ならば不気味に思って距離を置くでしょうけれど、度胸があって突き進む性格ですから危険に近づくことになる。

加奈の夢だけでお腹いっぱいですが、宇田さんがちらりと再登場したのが嬉しかったです。
新一の身を案じてくれる宇田さんはいい人だ。
「精神力だけで見たら、あいつはおまえなんかより全然強いぞ」
とバッサリきられてますが。

髪の毛抜かれて正体がばれた男はちょっと親切だと思いました。
酔った女性の世話をして、用が済んだらさっさと離れようとして、食べるつもりはなかったんですよね。彼女が何もしなければ助かったと思うと残念です。

第二十七話 演習

ヤクザの事務所を潰した男のビフォアアフターぶりに驚いた。
カッコいいんだよな、悔しいことに。
この話まではどんな寄生生物が現れようと、新一の身体能力+ミギーの力&知恵で倒せるだろうと思っていました。
苦戦するとしても多人数相手か、田村みたいな策を練る相手と戦う時だけだと。
そんな考えを打ち砕くかのような暴れっぷりです。
速さも膂力も異常、攻撃を受けても平気。
新一&ミギーが戦うことになるのか冷や冷やすると同時に、楽しみだという気持ちが湧きました。

第二十八話 平和な日

今でも里美は島田の事件を思い出してしまう。
島田事件の後、生徒達の心のケアはどうしたのか気になりました。
「A」だけでもキツイのに、島田の殺戮も加わったら二度と学校に行きたくなくなると思います。
閉校になってもおかしくない。たとえ表面だけだとしても、落ち着きを取り戻したのが奇跡的です。
新一は彼女を励まそうとしてミギーの台詞を伝える。
「人間は殺された動物たちのバラバラ死体の破片を毎日食べているわけだから……いまさら怖いものなんてないはずだって」
ここでそんな台詞持ってくると逆効果になりそうなんですが……。里美が新一の変化を感じてます。
変わった原因と思われる出来事――新一が旅に出た時のことに触れると、彼の表情が変わる。
それ地雷ですから! 超特大の!
母子を見ていた時の反応だと、母との一件が心に深い傷を残しているようです。「穴があいてる」という言葉が転がり出たのも、それほど心に残っている、意識しているんだろうか。

何か二人がキスをしました。
「もっと早くに……もっともっと仲よくなってれば……たったいまもきみが間違いなく泉くんだってこと……」
この里美の台詞の意味がよくわかりませんでした。
新一が自分のあり方に苦悩するように、里美も新一の揺らぎ、危うさを感じて憂いているのでしょうか。

寄生生物の気配を追っていくと寄生生物の集団がいる演説場面に。
最初読んだ時は「六人も!?」「政治家を目指す寄生生物? 田村みたいな知性派か!」「加奈危ない危ない!」とラストで一気に盛り上がりました。
壇上の六人は後から見返すと「あぁ!」となります。
後藤が鍵で、この時はまだ統一しきれていなかったということか。

第二十九話 加奈

寄生生物が政治家になろうとしていることに感心するミギー。
興奮して複雑な形になっているのが可愛いです。大きな目玉になるのもキュート。
「やることもなかなか社会的、組織的になってきた。みな成長したもんだ」
いっそう融け込んでいるわけで、脅威です。
敵が進化するのは燃えます。成長は主人公側・人間側の特権ではない、やられるだけでは終わらないという方が試練もより劇的になって盛り上がります。
新一ミギーペアは切り抜けられるとしても、寄生生物についてろくに知らないのに気配を察知する加奈の身がますます危うくなっているのが心配です。
彼女に事情を説明したくてもミギーが許さない。
「自分の右手が人を切り刻むところなんて見たくないだろう」
淡々と怖ろしいことを言わないでください。
ミギーだったら何の躊躇いもなくやってのけるという確信がある。
血も涙もないのか……と思わせるわりに、愛嬌があるから憎めないんですよね。純粋というか、悪意がないためだろうか。
非情な行動をとる理由はシンプルで、変に悩まないしグダグダ言い訳もしない。じめっとしていないから嫌な気分にならないのでしょう。
加奈との仲を弁解する新一もいいな。殺気全開で睨みつけていた男と同一人物とは思えない。
妬いてふくれっつらの里美もいい。
殺伐とした空気ばかりだとしんどいので、これくらいの雰囲気だとちょうどいい。

第三十話 超能力

ミギーが完全に眠っている間に説明しましたが、加奈は信じなかった。
読んでいる側は「笑い事じゃないんだよ、危ないんだ!」と思いますが、彼女の視点だと素直に信じられないだろうとも思えますから、やきもきします。
気になる相手がいて、その相手の気配を自分だけは感じとることができるとなれば、乙女な部分のある彼女が運命の人と思いこんでも仕方ないかもしれない。化物がどうこう、危ないなどと言われても、受け入れて諦める気にはなれないでしょう。胡散臭いし。
新一だけを見分けられると嘘を吐いたのも軽い気持ちだったのでしょうが、読んでて冷や冷やします。それを新一が信じてしまったことで、どんどん事態がまずい方向へ。

さらに彼女が新一との特別なつながりを信じて念じたところ、「彼女の方から」信号を発するまでにレベルアップしてしまった。
今は弱くてもこれからどうなるかわからない。
彼女は新人類ですか?
何でわざわざ危険に近づくような真似ばかりするんだ。死んでほしくないのにどんどん危険地帯に突っ込んでるよ。
彼女を止める光夫を今回ばかりは応援してしまった。
光夫に対するキツい言葉に、さすがに彼が哀れだと感じた。
やきもち焼いてるだけじゃなくて心配も含まれているわけですから、そこまで言わなくても。
すぐに言いすぎたと気づいてきちんと謝るので好感が持てます。突っ張っていても、こういうところは外さないので魅力的に映ります。

加奈が信号を発するようになった件についてミギーが報告した時、「なんでその時すぐに……いや、よく教えてくれた」と言ったのは、以前の「なんでそんなこと黙ってたんだよ!」と対照的で面白い。あの時よりミギーとの距離が縮まっていると感じられます。
その分、眠っている間に勝手に事情をばらされたミギーの「やっぱりそうか」や、改めて事情を説明することを承諾する「そうだな」が悲しい。
今度こそわかってもらうと意気込む新一ですが……。

第三十一話 赤い涙

気配を追った加奈が出会ったのは、新一ではなく食事中の寄生生物だった。
見逃してくれるはずもなく、胸を刺されてしまった。
以前見た夢の断片が脳裏をよぎるのが悲しい。
新一が来た時には遅く、加奈は胸を貫かれ倒れていた。
仲のいい女の子が血溜まりの中倒れてる光景を目撃した新一が、完全にキレた。
「ぼ……防御たのむ……」
ミギーに防御を託し、自分が攻撃を担当する。「作戦」ではなく、「衝動」なんだろうな。
ミギーは敵の刃を受け止める。
新一は左手で敵のアバラをぶちぬき、身体を投げつけ、壁に叩きつけて陥没させる!
抜き出したその手には心臓が握られていた。
今まで何度も思ってきましたが、改めて思いました。
もはや人間じゃない。
怒りで普段使えない力を引き出したのだとしても、異常だ。
感情を表に出していたのは「母」との戦いの時もですが、ここまで激情に駆られたのは初めてなんじゃないか。表情が殺気に満ちていた。

そんな彼が加奈に呼びかける時は辛そうな顔になっている。いっそ寄生生物にもっと近づいていれば、これほど怒ることも悲しむこともなく、辛い思いをしなくて済んだだろうに。
加奈は夢を思い出し、微笑みながら新一の腕の中で息絶える。
新一が来るのを感じていたと……だから倒れる時にあの夢が再生されたのか?
正夢になったと言えなくもないですが、全然嬉しくない。
新一の母といい、加奈といい、何で死んでほしくないキャラが退場するんだ。それでストーリーが盛り上がるから文句は浮かばないけど、やりきれない。
壁に新一の名前と、その隣に自分の名前を書きかけていたのが、悲しさを煽ります。

加奈の死に涙する光夫が新一を殴る。
その気になれば回避も防御も簡単にできるのに、無抵抗で殴られ蹴られる。
「てめえは人間じゃねえ! 血も涙もねえとはてめえのことだ!」
その言葉は、今の新一には禁句中の禁句だ。誰よりも本人が気に病んでいるのに。
人間じゃないという罵倒に新一のスイッチが入りました。
「そうさ!」
肯定する彼こそ一番辛いだろう。
光夫を殴って蹴って怒鳴って、それでも冷静さを取り戻す彼が怖い。感情の振れ幅が……。
主人公の精神に危うさを感じます。生物的に強くても、強いからこそ逆に心配になるというか。
(手加減しねえとこいつの胴にも穴があいちまう)
実行できる力があるので洒落にならない。
(おれ一人気づかないうちとっくに……脳まで乗っ取られてるんじゃないのか……? 知り合いが死んだ……加奈ちゃんが死んだのに涙一滴……)
相変わらず泣けない彼は、木の幹に何度も頭を打ち付けて血を流す。
「血の色は……赤いな。一応は……」
サブタイトルが「赤い涙」で痛々しい。普通に泣くより読んでいて気が沈むかもしれない。
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