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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

灼熱カバディの大山律心戦について

大山律心戦について語りたくなりました。
大山律心側、特に大和周辺に注目して振り返ってみます。
登場時の亜川と大和が不気味で笑ってしまう。何故こんなに悪人面なんだろう。


・こだわり
うわっ、笑顔が気味悪い。
その空き缶の潰し方は何?
「こだわりが無い方が、なんでもできますから」
律心戦が終わった後だと感じ方が変わる。
こんなことを言ってる人が、こだわりを持たないのを否定的に捉えているなんて思わないじゃないですか。
・煽り
「いいカモだったのになぁ」
邪悪な笑顔に笑ってしまう。どう見ても悪党。反則しないのが不思議なほど。
今思うと口の悪さと笑顔の不気味さで悪役ポイントを稼いでますね。戦い方は真っ当だからな。
・安堂
他競技の安堂が試合の緊迫感や部長の凄味を理解するのがさすがだと思いました。
・言い方
大和は敵だけでなく味方に対しても言葉に棘がある。
「考えるのは頭の良い人間に任せましょう」って……。
井浦がおいおい……と呆れるレベル。
普通なら「俺達が考えても無駄だってか?」「偉そうにしやがって!」と反発されてもおかしくない。
「その通りだな」「任せましょうか」で済ませた立石達が不気味に思える。
思考放棄していて言いなりのロボットみたいだと思いました。
実際は大和への信頼あっての反応です。
・野球
大和は野球をやっていて、結構いい成績だったそうです。
しかし一番になれそうもないからやめた、逃げだと語る。
初めて読んだ時は疑問を抱かなかったけど、決着回を見た後だと他の理由を考えてしまいます。
大和はグローブもボールもとっくの昔に捨てていて、そのことすら忘れていた。
この辺りは二周目だと感じ方が変わる。
扉を閉ざす時の笑顔が辛そうに見えるのは気のせいか?

・引け立石
普段丁寧な口調で君付けする大和が叫んでる。珍しい。
・素直な亜川
大和が点を取った時に拳を握るのが微笑ましい。
感情表現が意外と素直なんですよね。大和の方が遥かに読みにくいのでは?

・異常
前半リードされて終わり、自分のミスだと思っている亜川が慎重に言葉を選ぼうとしているのに、気遣いをぶった切る大和。
あまりの動じなさに亜川が異常認定するレベル。
そ、そこまで? 高校生とは思えないメンタルであることは事実ですが。
淡々と指示を求める大和だけでなく、立石達も動揺していないんですよね。
大和の言葉を、
「ああ。大和の言う通りだ」
で受け入れる。
どうしてそこまで大和に従うんだ。
亜川も口をちょっと開けて「……」ってなってるから呆れてる。指導してきた亜川でもこんな反応になるのか。
立石は心の中で(俺達も異常だと思われているだろうか)と呟く。
自覚あったんかい。
劣勢でもやたらと冷静だったり大和に従順だったり不気味さを感じさせてきましたが、傍からは異常に見えると自分達でも分かってたんだ。
そう振舞う理由が立石の過去で判明しました。

・立石の過去
立石視点での大和評には共感できる部分が多い。
「胡散臭い笑顔」とか「とても冷静で計算高い男」とか「正直腹立たしい事もあった」とか。
どれも合ってる。
立石達は日本一を目指して幼い頃からラグビーをやってきたものの、結果を出せず中学で廃部になった。
彼がショックを受けた内容に共感できる。

高校に進学しても目標を失ったままの彼らを大和が勧誘しに来ました。
いきなり失礼だな!
野球部での失敗を踏まえて人当たりをよくしようとは思わないのか?
本当の事でももうちょっと言い方をだな……。
でもいいことも言う。
「鍛えた体と絆は残ってる」
大和は効率や合理性優先のキャラクターですが、最初から絆の重要性を理解しているのが面白いところです。
こういうキャラクターは絆の力や想いの強さを軽視してやられがちな印象がありますから、初めから侮らないのは強者だと感じさせる。
「騙されたと思って」
出た、大和の口癖。
灼熱カバディを薦める時、騙されたと思って読んでみてくださいという方が多い。
気持ちは分かる。すごく分かる。
私だって言いたいですよ、「面白いから読んでみてくださいよ。ま、騙されたと思って」と大和風に。

大和が高校でカバディ部を選んだ理由は、日本一になれる確率が高いから。
冷めてるように聞こえますが、語る大和も聞く立石達もいい表情してるんですよね。人間味がある。
『不思議だった。とても冷静で計算高い男は、ガキの頃の俺たちと、同じ目標を語るのだ』
この過去と現在が重なるシーン、ワクワクするなあ。
何故野球部と違って、立石達は大和についていけたのか。
その答えがここにあるのかな。
自分達が子供の頃抱いたのと同じ日本一という目標を掲げているから、共感やつながりが生まれたのかも。
さらに、計算高い男がデカい目標を語るという意外性が好感につながったのではないかとも考えてみました。

日本一になるために大和がやってきたことも描かれる。
新しいシステムを作ったり、部長になったり、新しい監督の亜川を呼んできたり。
あの、監督はどうやって? その辺をもっと詳しく知りたい。
改めて考えると大和の負担が飛びぬけて大きい。部のあれこれを考えて実行して、試合中はエースとしてチームを支えて。
とにかく立石は大和が有言実行する姿を見てきた。
『結局、一度も騙されなかった』
笑顔が胡散臭くて「騙されたと思って」が口癖の男が、言ったことを本当にし続けてきたって熱いなぁ。
だから立石達があれほど大和を信じてるんですね。
いきなり信じたわけではなく胡散臭いとか腹立たしいと思ったこともあったけど、その上で信頼が築かれた。
試合中の冷静さや従順さも、ただ思考を止めてるんじゃなくて大和に従うことを選んだと言えます。

・質問
水澄の出血を狙ったのか訊かれて「え……」と呟く大和。
ここは珍しく素の反応じゃないか?
疑われてるんですか僕、という感じの。
何で立石はこんなこと訊いたんだろう。
そんな人間じゃないことくらい知っているだろうに。
メタ的に考えれば読者に「わざと怪我させたんじゃないですよ」と説明するためでしょうけど、作中の人物視点だとどういう意味があるんだろう。
そんなつもりはないのに相手に怪我させてしまった=予測や計算を超えられてしまったかどうかの確認か?
返答が物騒なのが大和らしい。わざとなら折ってるって怖いよ。
『大和は本当の事しか言わない』
立石からの信頼が絶大。
この試合勝てるかと訊かれた大和は、勝てますよと冷静に答える。
「……そうか」
この満足げな立石の笑みよ。目を閉じて、疑いもしないという表情。

・後半開始
亜川が言った通りの状況になり、読みの精度に大和達が驚いている。
戦況を見定めて対応するのは多少自分もできるって大和が言ってるけど、「多少」かなあ。
とにかく、大和が真に驚いたのはもっと大きな部分です。王城以上に宵越の対策をしてきたことが活きている。
大和がすごいと感嘆するなんて意外だ。
律心戦は優秀な監督や練られた作戦の恐ろしさが描かれています。
圧倒的なセンスやスペックを振り回して一人で何とかしてしまう天才はいない代わりに、連携と作戦で立ち向かう。
・亜川の過去
亜川も好きだ!
あんなに陰湿そうな雰囲気を漂わせておきながら生徒思いです。生徒のために真摯に学び、教えている。
金澤が大量得点して大喜びの立石達が微笑ましい。大和の笑みも心なしか穏やかに見える。

・伊達に持ち上げられぶん投げられ吹っ飛ぶ大和
大丈夫?
落ち方によってはかなり危ない気がする。
あと割れてる腹筋見えてない?
仲間が心配そうに見つめる中、引きずらずに切り替える。
お、立石がホッとした顔した。よかったね。
「勝つために冷静であり続けてくれる大和のおかげで地に足がつく。余計な不安はない」
大和は能力的にも精神的にも律心を支えるエースだな。
「より集中して臨むのみ」
気を引き締めた立石達を見て亜川が微かに笑うのが絆を感じさせる。
・「三度目は、ない」
珍しく大和が感情を剥き出しにしている。いい表情してるなぁ。
・「心配するな」「大和は言った」「三度目はない、と言った」
あ、圧が……!
立石から大和への信頼が重いほど、痛いほどに伝わってくる。

・追い詰められて
攻撃を失敗してしまった大和の顔がゆがんでいる。いい表情だ。
薄い笑みか無表情が大半だった大和が歯を食いしばっている。ああ、いいなあ。
灼熱カバディで『個人的に好きな苦しげな表情ランキング』作るなら上位に入ります。
ちなみに、他に入るのは不破の「カバディを楽しんでいるだけなのに」などです。
また「負ける」のではなく「終わる」のが嫌というところに、大和の本音がにじんでいる気がする。仲間と一緒に闘う日々が終わってほしくないという。
それでも感情を切り替えるのが大和のすごいところ。

・大和の過去
大和は中学時代野球部でキャッチャーをしており、チームの強化や勝利に貢献してきました。
しかし、仲間から否定された。
「お前とやっても楽しくないんだよ」
チームが勝てるように頑張って、結果も出していたのに……。
大和があっさり野球を辞めた理由は日本一への遠さだけでなく、チームメイトの言葉もあったのでは?
むしろそっちの方が大きいんじゃないか。
冷静で、合理的で、切り替えが異様に早くて、野球の道具もとっくの昔に全部捨てて、捨てたことすら忘れていた大和が、忘れた方が楽になれる言葉をしっかり覚えているんですから。
よりによって組んでいるピッチャーからそんなこと言われたら熱も冷めるよ……。
とはいえ、発言者を否定する気にもなりません。
私が同じ立場ならおそらく大和についていけない。
陰口を叩かず正面から告げたのは相棒なりの誠意だと思いたい。
正論を突きつけてくる人間を真っ向から否定するのは勇気がいるはずですから。
大和の方が正しくて言葉でボコボコにされる可能性が高いことは分かっていても、思い切って言ったのであってほしい。
仮に野球部の仲間から「お前と野球やるの楽しい! 高校で今度こそ日本一になるぞ!」と言われていたら続けていたのかな。
でも野球辞めなかったら立石達と関わることもないのか。
嫌だ。
 
振り返ると、大和と宵越は似ているかもしれません。
上を目指して進んだが、仲間がついてこなかった。
そして現在、信頼できる仲間と一緒に闘っている。

・励まし
大和は自分には何もないと思っている。こだわりも好きなモノも持たず、熱くなっても一時の気の迷いと疑ってしまう。
だから結果を求めた。
この後まで読んだら「そんなことないだろう!」と言いたくなりますね。何言ってんだ本当に。
諦めずに得点をもぎ取った大和にナイスレイド、まだ行けると熱い言葉をかける立石達。
過去との対比で「よかったなああ!」となります。最後までお前についてくる仲間がいるんだ。
励まされた大和が驚いているような顔をしているのが実にいい。さっきからいい表情と言ってばかりですね。
大和の表情は何だろう。信頼に応えられなくて負けそうになっているのに、それでも自分のことや、チームが勝つことを信じてくれているのが嬉しかったのかな。
驚いた顔で「……」→野球部の「そんなに結果が欲しいなら個人競技でもやればよかったのに」という台詞→表情を見せずに「……」
ここで何を思ったんだろう。
大和の反応もいいけど、「いかん!」と冷静さを取り戻そうとしている立石と「無理だろ大和じゃないんだから」というツッコミに笑ってしまう。大和を何だと思ってるんだ。
個人競技でもやればよかったのにと言われた大和が「律心(ウチ)」という言い方をするのがグッとくる。
あんなことを言われても大和はチームで戦う競技を選んだ。結果を求めるだけなら一人でやる方が効率いいと分かっているはずなのに。
それは、こだわりじゃないですか?

・大和と立石の会話
この会話は心の声? それとも試合後に行われるやりとり?
途切れ途切れに映る試合の光景において亜川が必死に指示を出しているようなので、彼も大和達を勝たせたくて頑張っていることが分かります。
試合後の監督同士の会話で分かりますが、亜川が能京の時間稼ぎに付き合わなければ逆転できる確率は上がったんですよね。
勝利のための犠牲や踏み台だと割り切れない亜川に大和が従っていたのが……。
この二人は似ています。効率優先に見えて非情になりきれないところも、不気味で陰湿そうだけど熱さを秘めているところも。
立石はチームが無機質に見えることを自覚している。俺達も異常だと思われているだろうかとも心の中で呟いてましたね。
律心はいつも効率重視で無機質、冷静でいようとするあまり異常に見えることもあるのは否定はできない。初めて読んでいる時はロボットみたいで不気味でしたし。
それでも、ハッキリとした目標があって充実した毎日が立石は好きだった。

「お前のおかげで、俺は楽しかったんだ」
大和に聞こえているか曖昧ですが、しっかり言ってやってくれ! 何度でも!
報われたんだなぁ、大和。
野球部で拒絶された時は地面に転がっている蝉が映りましたが、この場面の背景は青空。綺麗な空が広がってるんですよ。
大和の「騙されたと思って」から立石のカバディ部での日々が始まった。
「最後まで騙されなかったよ」
「騙されたと思って」に対する最高に粋な返答。
「騙されたと思って」が口癖の男にそう返すのは最上級の信頼の証でしょう。
結果を見れば大和の言葉通りにはならなかったんですけど、それでも立石は騙されてはいないと感じている。
絆の強さを感じます。
かつてお前とやっても楽しくないと言われた男が、お前のおかげで楽しかったと感謝される。見事な対比です。

大和の方も、今回は気の迷いじゃないことを願っている。
あれほど堂々としていた大和が「気の迷いじゃないといいなぁ」と弱気に見える口調になるのが切ない。
散々異質なメンタルを披露してきたけど、最後の最後で一人の高校生だと感じさせた。
わざわざそんな風に思うってことは、すでに好きなものになっているんじゃないですか?
この時大和の口元がほんの少し緩んでいるように見える。
頬を流れるのも汗だけかどうか……どちらともとれそう。

回想では死んでいた蝉がこの場面では生きて鳴いている。
蝉=大和の熱でしょうね。
大和の情熱は生きていて、気の迷いではないと示しているのでしょう。
最後にスコアボードを映して終わる静かな決着です。余韻が残る。
点差を縮めているので律心が最後まで食らいついたのが分かる。
最初は不気味だと思っていたのに、いつの間にか彼らの夏が終わってほしくないと思うようになっていた。
素晴らしい一戦でした。

大和は自分には何もないからと結果を求めたけど、そんなことないと本人ももう分かったはず。
否定されてもやりたいこと……こだわりがあった。
そして気の迷いなんかじゃない、消えない『熱』もちゃんとある。分かりにくいだけで。
何より、信頼し合える仲間がいる!
これから彼らはどうするんだろう。
大学でもまた一緒に何かやってほしい。お互いに力になって助け合ってくれ!
鍛えた体と絆は残っているからな。
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