柔道部物語 1巻
・開始直後の主人公
主人公の名前は三五 十五。
覚えやすい。
いかにも優等生な見た目で、気が弱そうな印象を受ける。
実は負けん気強くて、やられたらやり返す奴だとは想像つかない。
中学時代は吹奏楽部所属、将来は寿司屋志望。
……柔道の欠片も出てこない。
物語開始時点で主人公に恋人がいるのは意外でした。
物語の中で惹かれていくものだと思っていた。
ちなみに、相手の名前は原田ひろみといいます。
いきなりリア充ぶりを見せつける主人公ですが、恋愛要素はくどくないんですよね。
柔道への気合を入れ直す役割が大きく、本筋が停滞することはありません。
・小柴と平尾、内田と村井
二年生の小柴。平尾、ついでに河も登場。
河は途中からほとんど出てこなくなったんですよね。順調に負けていたんだろうな。
一年の内田と村井もちらっと出ました。
村井も後半は出番が少なくなっていました。彼の方はれっきとした実力者なのに。
小柴も老けていますが、平尾の貫録は高校生とは思えない。
同じことは他の生徒達に言える。斉藤とか西野とか。
小柴も平尾も、顔から受ける印象そのままの性格です。
小柴はお調子者、平尾は渋い。
竹刀持って新入生の教室に乱入する小柴達。
乱暴に見えますが、小柴が強引な行動を取ったら平尾が止めてくれた。
「わるかったな」の一言も添えた……すげえ、常識人に見える。
小柴達が突っ走る分、ブレーキ担当が必要ですね。
中学で柔道をやっていた愛川いわく、いまどき柔道なんてはやらない、かっこ悪いとのことですが、この時代柔道はそういう扱いだったんだろうか。
五十嵐の性格を考えると、愛川勧誘の指示に少し違和感が。生徒の尻を叩くのが嫌いな彼なら「柔道やりたけりゃ来ればいい」程度の緩い勧誘になりそうです。
勧誘に来た小柴達を見て柔道部への興味が湧いた三五。
ここで人生が大きく変わった。
・秋山、名古屋
秋山は三五の親友で、中学時代は水泳部でした。
主人公の三五の成長速度は異常ですが、秋山も負けていないんですよね。水泳で体が鍛えられていたとはいえ、高校から柔道始めて全国大会団体戦のメンバーに入りますから。
名古屋も出た。
実力に反して終始存在感があるんだよな、コイツ。
空気をギャグ色に塗り替える存在にして、後の最弱世代を築いた元凶。
調子のいいことばかり並べ立てる小柴に三年が笑ってる。
吹奏楽部と水泳部が潰れたというのは嘘でしょうけど、バレたらどうするつもりだったんだろう。
「あれーおかしいなー、存続の危機って聞いたんだけどなー」などと誤魔化すのだろうか。
・三五の母
仮入部してみようと考えた三五に、怪我でもしたらどうすると猛反対する母。
最初は「心配なのは分かるけど、そんな頭ごなしに反対しなくても」と思いましたが、一部のキャラを見ると……そう言いたくもなるよな。
心配性の母親に対して父親は動じない。
動じなさすぎ。
母親が口を出す分、父親がマイペースでバランスが取れているのかもしれない。
教わった受身を試してみる三五の姿が微笑ましい。
愛川は柔道部に入らないだけなら本人の自由ですが、いちいち柔道部を馬鹿にするような台詞を吐くのがいただけない。
でも愛川が思いやりに満ちた性格だったら、三五の負けん気を刺激することもなく、柔道部物語はすぐ終わってしまったかもしれない。
・五十嵐
五十嵐先生は六段とのことですが、六段ってどれくらい強いんだろう。
真面目に練習したら卒業までに二段になれると小柴が言っているけど、河は?
・セッキョー
ここまでは順調です。
先輩は優しく、練習はぬるく、女にモテる。
……そんなうまい話があるはずもなく、甘かった先輩達が豹変する。
来た。
理不尽で意味不明な体を痛めつけるだけの謎行事。
この作品において「今の時代だと間違いなくアウトなシーンベスト3」に入るのでは?
他二つは「練習中に水飲んだり笑ったりしただけでビンタされる他校の生徒」と「おはつ」で。
セッキョーで何をさせるかと言うと、うさぎ跳びや空気椅子等で体に無駄に負荷をかけつつ挨拶の練習や歌を歌わせて、無意味に足腰と喉を痛めつける。
比較的常識人の平尾すら張り切る有様。
悪しき伝統を断ち切らず、続けていく様がリアルです。「伝統だから」「自分達がされた時に比べれば甘い」と言うところが特に。
こういう理不尽な伝統が肯定的に捉えられているわけではないんですよね。
他の部の生徒から、いまどきあんなことしてるから部員がいなくなるんだとツッコまれてます。
「強ぇ! かっけえ!」「受け身をしっかり練習したうえで三五や樋口の技をくらってみたい……!」とは思っても、「この柔道部に入りたい!」という方向にいかない。
辞めずに続けることを選んだ三五、見た目と違って負けず嫌い全開です。
・坊主頭に
髪も自由というのは嘘で、坊主頭を強制されました。
主人公が坊主頭で、太眉。
挑戦的なデザインだ。
秋山や内田、村井も残ってくれてよかった。
岡は元々体力に自信が無い上にセッキョーくらったのに、それでも続けようと思える根性は見事だ。
強くなれず、戦力を求める視点で見れば評価できませんが、練習を頑張っていること自体は否定したくない。
名古屋は……彼一人がやる気ないだけなら、それはそれでありじゃないかと思います。ただ、試合で露骨に負けに行って相手を困惑させたり、下級生に手抜きする癖をつけさせたり、他の人間を巻き込むのは勘弁してほしい。
八木はいつの間にかフェードアウト。目立ったのが坊主頭になるのを拒否するこの場面だけ。名古屋と同じく真面目にやってないようですので、スルーでいいか。
・地区大会
三年で組んだ主力のチームと、二年以下の2チームで出場。
二年の小柴は三年の重量級を相手に一本勝ちを決める。
平尾も一本勝ちで勝利。
二年の中で平尾、鷲尾は二段。初段と二段の間にはどれくらいの差があるのだろう。
二年チームは途中で負けましたが、本命の三年チームの方は快勝。
完全に無名で弱小なわけではなく、元々それなりの実績や強さがあったんですよね。
彼らの強さに三五も感銘を受けた様子。
・樋口、現る
岬商三年チームは決勝で江南高校とぶつかることに。
来ました。
中盤までのライバル校にして、樋口を擁する江南が。
江南の教師、山崎は五十嵐に対抗心剥き出し。
学生時代にずっと勝てなかったのは悔しいだろうけど、生徒達を使ってリベンジするのは大人げなさの極み。
常識的に考えれば、三年と一年では勝負は見えている。しかも前者が体格で上回っている。
斉藤が勝つはずですが……結果は樋口の優勢勝ち。
初めて読んだ時は「三年に勝つなんて樋口強い!」でしたが、今は「樋口が一本勝ちできないとは、斉藤も相当強かったんだな……」となります。さすがインターハイ行き確実と言われた男。
樋口は5歳の時から柔道やっていて、中学の時は全国大会でベスト8。
それは文句なしに優れている要素ですが、「プロ野球選手のいとこだから素質がある、血統書つき」という言い方には疑問が。
スポーツ選手が身内にいても、スポーツで伸びやすいと決まってるわけじゃないのでは?
目が離れているのは確かですが、変な顔なんて言うなよ……。
主人公の三五、ライバルの樋口、ラスボスの西野、みな華やかとは言いがたい容姿です。
三人の中で一番モテるのが三五です。
・鷲尾
一人だけいなかった鷲尾が登場しました。
ムキムキだ。
泥棒と間違えて普通の人に全治一か月の重傷を負わせたようです。
セッキョーの時にいなくてよかったな……。
三年が引退し、鷲尾が主将に。
「この男が主将で大丈夫か……?」と言いたくなりますが、何だかんだで認められてるんですよね。西野戦を見るに。
・鍛錬
三五は足腰を鍛えるため、20キロ以上ある道をボロボロの自転車で通うことに。
後の丸太投げもですが、毎回描かれることはなくても毎日やってることが窺える。日々の積み重ねを感じられます。
練習時間は短いですが、弱いほど疲れるとあります。
「まいった」の仕方を知らないまま練習って危ないな。
先輩や経験者が真っ先に教えてやれよと思いましたが、初心者がどこまで知っていて何を知らないか、区別がつけづらいのか?
・平家ゆり
大人しそうなめがねっ子ということで惹かれましたが、内面は過激というか、意外と言うことは辛辣。そんなところも含めて好きです。
三五に彼女がいると知らされても、ファンとして応援してくれる。
三五について、一見普通っぽいがどこか他の男子と違う……ここまでは「惚れてるんだなー」で終わりますが、次の一言には頷くしかない。
「すごく強くなるような気がするわ」
うん、そうだね!
その通りだよ本当に。
走り去る平家、戸惑う三五。うーん青春。
期待に応えるためにも頑張ると意気込んだ三五の目に飛び込んだのは、他の男のバイクに載せてもらっているひろみの姿だった!
「僕には彼女がいるんだから」→気合を入れる→目撃してこけるまでテンポよすぎ。
・実感
ひろみとつるんでいた男達に絡まれ、喧嘩を売られる。
三人相手ですが、動きが見える。
途中で警官が来たためうやむやになりましたが、二人を投げることができました。
素人相手とはいえ、強くなったという実感や勝つ快感を味わったことで、こう思うようになりました。
「もっと強くなりたい」と。
ここで闘志に火が点いたんだろうな。
この三人には感謝したい。