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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

柔道部物語 11巻

柔道部物語 11巻

いよいよ最終巻です。


・不穏な動き
前巻で西野に無遠慮な質問した記者が嗅ぎ回る。
何故泉谷はとぼけたのでしょう。
以前西野に関わらない方がいいと忠告したわけですし、快く思っていないことは確かなのに。
史村と同じように実力や努力は認めていて、面白おかしく書かれて引っ掻き回されてほしくはないと思っているのでしょうか。
病院送りにされた生徒のうち一人は全治一か月の重傷と聞いて、「えっ、その程度で済んだの!?」と思ってしまった。
十分重傷ですが、全治六か月の秋山に比べるとなぁ。秋山が何したと言うんだ。
たかが高校生の喧嘩を書くのかと問われて「超高校生なんだろ?」と返す記者の表情が不穏。
暴力事件を記事にすること自体はおかしくありませんが、何となく嫌な感じが漂っています。三五達を変に持ち上げたり、樋口の苦悩に首突っ込んできそうで……。

・マッサージ師
彼女は何者なんだ。
言葉遣いは変わってるけど実力は本物。
三五の筋肉が素晴らしいと語られるのは、異常な成長速度に対する説明の一つかもしれない。
日々の鍛錬、師や仲間から学んだ技、さらに天性の肉体が合わさってこれほど強くなることができたと。
筋肉に関しては西野よりも上、明日は三五が勝つとマッサージ師は断言する。
西野が肉の食べ過ぎでそのうち内臓壊すと言われたのは、最終話での彼の決断とつながりますね。

・準決勝
今度は樋口と飛崎兄弟がセットで観戦に来ました。
飛崎はよく来てくれますね。
さらに今回は大物が観客席にいます。
現役世界チャンピオンの選手が西野の偵察に来た模様。
恋人を連れて。
人目も気にせずキスをして。
……西野に腕折られるんじゃね?
『キスしてやがります』『こんな奴西野に殺されちまえ~』という感想に笑った。殺されちまえまではいかないけど、ブン投げられてしまえと思う。

その西野は、鈴木先生の代わりについてきた教師を「ひっこんでな」の一言で黙らせていた。
鈴木先生だったらもう少し態度が軟化したのだろうか。
耕談館と耕談館浦安が対峙すると、耕談館を応援する声ばかり。
「千代崎がんばれ~!」はいいとして、「おめえ(西野)なんか負けやがれ~!」は遠慮ないな。
それ、本人の目の前で言ってみてください。きっと地獄を見せられる。
「フン! けっきょく俺はいじめられっ子かよ……」
昔のいじめは違うでしょうけど、今回は身から出た錆だろ。
やりたい放題やったら非難されるに決まってる。
そんな中、会場へ向かう鈴木の姿に何とも言えない気持ちがこみ上げる。

西野に敗れた千代崎の台詞が印象に残る。
「どんなに努力しても、むくわれないこともあるのか!」
読者は千代崎がどれほどの努力をしてきたかは知りません。
しかし、彼の性格や強さ、実績を考えれば、血のにじむような練習を行ってきたことは想像できます。
ちょっと頑張った程度では「努力した」なんて言わないであろう彼が「どんなに」「努力しても」と言うからには、相応の厳しさがあったはず。
そこまでしても勝てない現実に残酷さを感じる。
努力しても報われるとは限らないなんて当たり前かもしれませんが、「必死に頑張って西野みたいな威張ってる奴に負けるんじゃ、嘆きたくなるのも仕方ないよな……」と感じます。
ですが、「西野がそれ以上に努力した可能性は考えていないのか?」という疑問も同時に浮かぶんですよね。
西野の努力が報われたと言えるかもしれないんですから。

三五は準決勝まで来た強豪相手に余裕をもって勝利。
いよいよ決勝戦が始まります。

・決勝戦
皆頑張ってきたと希望を抱いているゆりに対し、樋口の反応は冷徹。
努力は認めるが、勝てるかどうかは保証できない。
西野の恐ろしさ、勝負の無情さを思い知らされているのは彼ですからね。樋口の場合勝つことはできたのですが、ある意味敗北より残酷な結末が待っていましたから。
五十嵐が静かに三五達に言葉をかける。
「もう何もいうことはない」
「努力がむくわれるのか、勝負の厳しさを思いしらされるのか、じっくり見させてもらうぞ」
こんな風に語るのは珍しいな。
いつもはもっと適当というか軽いノリなのに。

テレビで勝負を見守る者達の姿が描かれる。
五十嵐の妻。子供が産まれそうです。
平尾。車の営業に訪れた家でテレビを借りる。
小柴。恋人にラグビー部だと嘘吐いてました。おい。
ついでにレギュラーになれなくてスコア係やってる愛川も。
柔道部をバカにしたり岡に意地悪なことしなければ応援したくなったかもしれない。
「彼」の姿がありませんが、間違いなく見ている。

入場時の野次が酷い。
「岬商がんばれ~!」「三五ファイト~」はいいけど、「西野をブッ殺せ~」は駄目だろ。
『今の高校柔道界で~』から『三五十五しかいません!』までの言葉が熱い。

・先鋒戦、次鋒戦
田丸が二人抜き。
うちは西野だけじゃないと言った直後にやられた柏……。
た、田丸の袖釣りがそれだけすごかったということで。樋口が袖釣りを教えに来た時くいついてましたから。

・中堅戦
浦安の中堅、銚子に田丸と星が倒される。
気負う関根に三五が声をかける。
「俺を信じろ!」
た……頼もしい……!
技をかけられた後、一瞬で回り込んで締め上げた関根の動きの鮮やかさよ。
絞め落とされた銚子を心配するチームメイトを見てちょっと見直しました。
西野の腰巾着と化していますが、仲間を心配する気持ちはあるんですね。
「先月死んだ猫に会ってきた……」という発言に西野以外固まってる。
正直彼が西野以外のメンバーで一番キャラ立ってると思う。

・副将戦
闘おうとする松戸に西野が圧力をかける。
西野が後輩達を鍛える光景が気になりますが、読んで楽しいものにならないな、どう考えても。
セッキョー級か、地獄の合宿級か。
西野なら合宿も涼しい顔でこなせるかな。
内田が出る時の三五とのやり取りがいいんですよね。
「俺にはあいつを引き分けて止めることしかできそうもねえ」
「それで十分だ。たのんだぜ!」
言葉は短いですが、信頼がにじんでいます。
千代崎との戦いでも思いましたが、内田のような存在がいてくれるからこそ、団体戦で勝ち進むことができたんですよね。

・西野の過去
副将同士の試合の最中、西野の過去が描かれる。
離婚届にサインする母親が、積み木で遊ぶ彼に語りかける。
「ねえ新ちゃん。お父さんいなくても……へいき?」
「……やだ!」
これだけです。
いじめた連中への報復や柔道との出会い、登校拒否や自殺未遂といった劇的な出来事ではない。
2ページに達するかどうかという短さ。
それなのに……強烈に印象に残る。
・副将戦を見つめる西野
・回想
・ブザーが鳴り試合終了
・二人が立ち上がる
この一連の流れが鮮やかだからでしょうか。

・西野戦
会場に辿りついた鈴木が目にしたのは、皆が三五を応援し、西野を罵倒する光景だった。
くたばれ、バカヤロー、西野をブン投げろ……酷い言葉の数々に鈴木は悲痛な表情を見せる。
「お……お前……よくこの孤独に耐えられるな……」
会場全体が主人公を応援するという最高に燃える構図のはずなのに、何故喜びきれないんだろう。
西野が辛い想いをするだけなら散々敵を作ってきた結果ですから自業自得と言えますが、鈴木が心を痛めるのは……。
先生の姿にうなってしまう。

「さあ来な! 少しは柔道をしようじゃねえか」
考えてみればものすごい台詞です。
この一年で彼とまともに試合できた者は一人もいなかった。全国大会の強豪でも柔道にならないレベルって、同じ高校生とは思えないな。
三五は脇固めを仕掛け、執拗に西野の腕を狙う。
初期から見せた、やられたらやり返す精神が発揮されてる。

なんと三五は西野から有効を奪うことに成功する!
会場が沸いたのも束の間、大外で技有りを取られ、あっという間に逆転。
さらに肩車で有効。
不利な三五は背負いにいくが、潰される。
観衆から「なんちゅうつぶし方」だの「折れたんじゃねえか」だの「ひでえ」だの出てくるということは、相当えぐい潰し方なんだな……。
「俺は人の腕を折るくれえ平気でやるぜ。勝つためだ!」
そうは言うけど、そんなことしなくてもほとんどの相手に楽に勝てるじゃないですか。
普通に戦ったら勝てない相手にやるなら賛同できずとも理屈は分かりますが、わざわざ折りに行く理由ないですよね。

十字固めを持ち上げて外した三五。
残り時間が1分30秒で技有りをリードされ、不利な状況ですが、三五は諦めない。
西野をまたいだのはただの挑発でしょうか?
それとも他に理由があるのでしょうか。
見開きでぶつかり合う二人の姿が迫力あります。
スピード感と力強さが伝わってくる。
皆が三五の名を叫び声援を送る中、樋口は何かを直感する。

・残り時間30秒
西野が汗をかいている!
「どいつもこいつも許せねえ!」
「てめえらに俺の味わってきた地獄がわかるか~!」
西野の台詞から、彼は暗い過去から脱していないというか、区切りがついていないのではないかと思いました。
いじめた連中に仕返しをした後も攻撃性を他者に向けているので。
可哀想な過去を持つ悪役にありがちな台詞。
それに対する主人公の返答は――
「いつまでもつまらねえことにこだわってんじゃねえー!」
そうきたか。
少し後のシーンでは、
「お前の技とパワーは尊敬するぜ。だが――それ以外のことには興味ねえー!」
とも叫びます。
主人公の姿勢としてはドライに感じられますが、重い感情や悲壮な覚悟を抱えた相手をブン投げるのは樋口戦で通った道です。
今更相手の事情で手が鈍ることはない。

三五は背負いと見せかけて、袖釣り込みを仕掛ける!
残り6秒、技有り!
判定は――引き分け。
延長戦突入!
樋口直伝の袖釣りが三五を救った。
何だよこの展開……熱すぎるだろ……!
ラスボスとの試合で道を絶たれたライバルの教えた技が、ラスボスに一矢報いて、主人公の危機を救うなんて。
この時の樋口の心境を知りたい。猛烈に知りたい。

「ありがとうよ樋口! お前が教えてくれた袖釣りが土壇場で俺を救ってくれたぜ。これがなければ俺は負けていた」
「だがもう袖釣りは使えん! 西野は俺の袖釣りなど二度と食わん」

「俺の袖釣りなど」ということは、もっとすごい袖釣りならくらうのでしょうか。
田丸も決勝で袖釣りを披露しましたし、袖釣りはここぞというところで登場しますね。
袖釣りを通して樋口の存在の大きさも伝わってくる。
できれば飛崎の内股も炸裂させてほしかったですが、直接西野と関わりがあるのは樋口ですから仕方ないか。

・対比
この展開を見て思ったのは、三五と西野は対になってるということでした。
主人公とラスボスですから当たり前かもしれませんが……。
天才の三五と努力の西野とは言いたくありません。
どちらも体つきが変わるレベルの努力をしていますから。
対比させるならば、「師や仲間、かつて戦った相手の協力も得て強くなった」三五と、「一人で突き進み、敵を増やした」西野で対になっているのではないでしょうか。
西野は孤独ですが、周囲が敵だらけでも心配してくれる先生がいるのが救いと言えるかもしれない。

・延長戦
延長戦にもつれ込み、西野は動揺を隠せない。
浦安のメンバーも信じられないという顔をしている。
とうとう三五の背負いが西野を捕らえる。
こらえようとした西野の右腕が嫌な音を立てた。
グキッって……。生々しいよ。
秋山に怪我させた西野が腕を痛めるのは因果応報かもしれない。

腕を庇いながらも戦いを続けようとする西野を見てテンション上がりました。
さすがラスボス、見事な闘志です。
強大な敵として君臨したからには限界まで戦ってほしい。
西野を見る三五が一瞬ひょっとこ顔になっている。
やべえ……凛々しい。
初めて見た時は「真面目に戦ってるのにギャグにしか見えない」「重要な局面で出たら緊迫感なくなる」などと思っていたのに、これほどカッコいいなんて。
試合の最中に全開にしたのは、樋口との最後の戦い以来じゃないか?

最後に三五の背負い投げが綺麗に決まる。
手がはっきり見えません。樋口にとどめを刺した技ならば最高に興奮するのですが。
皆が祝福する中、樋口は笑みを浮かべる。
「これで俺もスッキリしたぜ」
彼を三五達の強化へと向かわせた無念や未練も、この時消えたのかもしれない。

小柴と彼女のやりとりもグッとくる。
「ほんとにこの人を小柴君が育てたっていうの~、どうせまたウソついてるんでしょ」
「ああ……ウソついて……あいつを引っぱってきたのは、ほんとに俺なんだ……」
彼の嘘で全てが始まった。
適当な言葉を並べ立てて連れてきた素人が母校を日本一に導く男になるとは、夢にも思わなかっただろうな。

・師と生徒
歓喜に浸る人々とは反対に、無言で戦いの場を後にする西野。
彼の前に鈴木が現れ、右腕を見せるよう促す。
痛めていることに仲間や他の人間は気づかなかったんでしょうか。
気づいたとしても声をかけられる雰囲気じゃないか。
腕を診て、よかった、骨には異常無さそうだと語る鈴木だが、インターハイは棄権だとも告げる。
「この腕で出たらそれこそ選手生命が終わっちまう……」
樋口や秋山を連想せずにはいられない。
自分が怪我させたことに頓着してなさそうな西野でしたが、怪我人になって大会を棄権する羽目になったわけですから、少しは考え方が変わるといいな。
先生の言葉を聞いて涙を流す西野。
いい表情してます。
泣く寸前のゆがんだ顔とか、静かに涙を流す様子とか。

普通に読んでいても十分いいシーンですが、駆け付けたことを知らなかった西野視点で見ると、いっそうクることに気づいた。
・鈴木を馬鹿にするような態度を取る
散々舐めた言動を披露してきました。
・自分が好き放題したせいで入院する羽目に
退学にならないよう奔走してくれた恩を仇で返す行為。
・見舞いに行ったら自分の顔を見ただけで吐き気を催す
完全に嫌われていると確信できる。
・当然愛想を尽かされたと思っていたら会場に来ている
入院中だったのに。
・痛めた腕を診て自分の身を案じてくれる
見放してはいなかった。
会場全体が敵になっても、味方でいてくれました。

西野が涙した理由は、敗北の悔しさだけではなく、敗北した後優しさに触れたためでもあると思います。
力があれば何してもいいと主張するならば、力を証明できなければ拠り所がなくなる。
敗北して己に価値がなくなったと思っていたら認めてくれた。
以前は白々しかった「先生の指導のおかげです」という台詞も、今なら本気で言えるのでは。

・光る脇役達
西野のことを調べていた記者も、暴力事件について書くのをやめることにした。
「2位程度じゃ……書く価値ないな」
以前は冷酷な印象を受けた笑みが柔らかく見える。
「超高校生だから取り上げようとしたけど、たいしたことないと分かったから書かない」という名目をつけて引き下がってくれました。
こういうのをツンデレって言うのか?
違うか。
熱く激しい戦いを目にしたら無粋な真似をする気も失せるよな。
出番が少ないキャラもいい味出してるんですよね。
明太子のおっちゃんとか。
しかし、世界チャンピオンは何しに来たのか分からないまま帰っていったな。
全然強そうに見えませんが、試合になると人格変わるんでしょうか。

それにしても、三五が西野に勝利して、止めてくれてよかった。
西野が優勝していたら暴力事件を取り上げられていた。
仮に今回書かれなかったとしても、このままだと敵を増やしすぎて柔道を続けられなくなったでしょう。
西野は「よわっちい負け犬に吼えられてもどうってことねえぜ」と思っていたでしょうけど、柔道ができなくなってもそう言えるのか?
大事に思っている母親や恩師にまで悪意が向けられる可能性は考えていなかったのかな。
彼らは西野と違って受け流せないと分かりきっているのに。

・その後
岬商はインターハイ決勝で耕談館を破り優勝し、個人戦では三五が全試合一本勝ちでチャンピオンに。
五十嵐の妻も出産しましたが、五十嵐は悲しそうな表情で涙まで流す。
女の子なのに自分にそっくりなのが可哀想らしい。
妻は当然反発。生徒も反論。
「先生に似てるからってブスになるとは限らないじゃないですか」
それフォローになってない。
誰だこんなこと言った奴。秋山か?

引退した後、三五は進路に迷っています。
成績良かったのに「俺ってバカだぜ~」と言い聞かせてきた結果、本当にバカになってしまいました。
「俺って天才だ」で天才っぷりを発揮し、「ストロングだぜ」で強さを身に着け、バカになる。
三五ってもしかして、暗示にかかりやすいのでは……?

・再会
このまま穏やかに終わるかと思いましたが、そうはいかなかった。
寿司屋をやっている三五の家に、西野が母と一緒に訪れた!
仕返しに来たと判断した三五の母に思わず笑いましたが、そう思うのもおかしくないんですよね。大した理由もなく秋山の腕を折った男ですから。
変な髪形の三五に対して西野の冷静な指摘が刺さる。
「何だその頭は」
「その頭がカッコいいと思ってるのか」
ラスボスのツッコミいただきました。意外と常識人です。

西野の母親は腰が低く涙もろい。西野と正反対。
西野は中学からずっと合宿暮らし。
いつも寂しい思いをさせているから温泉でも行こうかと、小学校からやっていた郵便貯金を下ろして連れてきた。
……母親想いの新二君と呼んでやりたい。
感動で泣き出した母親に困惑する西野。
「な……泣くなよこんな所で……」
あの西野がこんな反応を示すと予想できた方はいるのでしょうか。
悪ぶっている態度を改めれば普通だ。孝行息子じゃないか。
「温泉の帰りに寿司が食いたくなったんで、しょうがねえからここに来たんだ」
ふーん、寿司が食べたくなっただけかー。しょうがないのかー。
それでよりによって三五の家に来るんですね。
実はしっかり調べていて、来ようと思ってただろ。

西野の怪我の様子を訪ねる三五。
インターハイに出なかったから心配していたとのこと。
心配してたのか。
強さについては尊敬していますから、失われるのは惜しいと思っていたのか。
柔道要素以外に興味を持たない分、樋口や秋山のことで恨みを引きずることもない。
柔道関連では心から認めていて、心配するんですよね。

西野は体重を1階級下げることにした。
身長と体重がアンバランスでしたが、やはり負担がかかっていた。
マッサージした人も肉の食べ過ぎで内臓壊すと予言していましたし、ここで階級を変えたのは正解でしょうね。
今までがむしゃらに突き進んできた西野がそういう決断を下せるようになったのは、一皮剥けたと感じられる。
周りを見ることができるようになり、さらに強くなるだろうな。
考えを裏付けるかのような発言が西野から飛び出しました。
「これで体重落としたら今までの倍くれえスピードがついたぜ」
倍は言いすぎでも、ただでさえ速い西野がさらに速く……?
多少パワーが落ちても、スピードが跳ね上がったらどれほど脅威になることか。
変身を残していたとは、さすがラスボス。
体への負担が軽くなったことで選手生命も伸びるでしょうし、どこまで強くなるか楽しみです。

「あいかわらず柔道に燃えてんだな」
「おめえは違うのか」

このやりとりがさりげなくいいなあ。
三五のことを自分と同じだと認めているんですよね。
いじめた連中に報復したことから、柔道は力を得るための道具で、やめるかと思いましたが……そんなことはなかった。
彼もまた柔道バカの一人だった。
三五を認めることに異論はないのですが、樋口に対してはどうなんだろう。
練習試合とはいえ自分に勝った男なんですから、同格と認めてもおかしくなさそうですが。
樋口同様、日本一になった「後」の自分に勝ったということで三五を最も認めたのでしょうか。
もう敵はいないという思い込みをぶち壊したことによって。
ともかく、樋口と西野が出会ったらどんな反応をするか知りたい。
今の西野ならさすがに「使い物にならねえ」呼ばわりはしないはず。

ここで寿司を食べていた西野の母がまた泣き出す。
「な……なんだ!」
「こんなおいしいお寿司食べたことない~」
西野が困ってる。
三五も戸惑っている。
作中で最強クラスの二名が振り回されるとは、ある意味無敵かもしれない。
帰り際、西野が三五に呼びかける。

「俺は65キロ以下、おめえは71キロ以下、2人で金メダル2個だぜ」

何爽やかなこと言ってんだお前!?
悪人面なのに。
憎悪による推進力は失ったかもしれませんが、別のエネルギーで突き進んでいくのでしょう。
西野の言葉に触発され、三五は坊主頭に戻って柔道を再開する。
西野は三五によって暴走を止められ、柔道を続けることができた。
三五に救われた西野が、今度は三五を救ったのかもしれない。

・最後
大学で柔道をやると決めたところで終わってもよかったのですが、まだシーンがありました。
正月にデートしていた三五とひろみは、後ろからパトカーが追ってきたことに気づく。
警官は――鷲尾!
引退した後一度も登場しなかった男が、ここで。
「これからも駐車違反スピード違反盗み人殺しで捕まったら俺にいえ! 全部許してやる」
ツッコミどころが山ほどある。
でも鷲尾だからスルーしよう。
遠ざかる鷲尾に挨拶したところで〆。
引退した先輩と意外なところで再会して終了というのが、柔道「部」物語だと感じました。


全体
読み返したところ……面白かったです!
時代の違いを感じる描写も多々ありますが、真っ直ぐに突き進む熱さは不変。
テンポよく、密度たっぷりの柔道部物語。
樋口の苦悩や西野の過去等、幾らでも掘り下げられる要素はありながら一気に走り抜けた作品です。
それゆえにぐいぐい読み進めさせるのだと分かっていても、見たくてたまらないシーンが多すぎる。
・三五に敗れた直後の樋口と江南の人々
・飛崎戦を見て三五との再戦に燃えてからの樋口
・西野対樋口
・選手生命を絶たれた樋口の絶望
・西野の過去各種
そして、原作で実現しなかった「慢心も怪我もない万全の樋口対三五」を見たかった……!

さらに、三五達のその後も気になります。
三五は別作品で語られた情報だと上手くいかなかったらしいのですが、西野の方は。
西野には樋口と三五以外には負けてほしくない。
世界でも勝ち進んで金メダルを取ってほしい。
そして「ここまで来れたのは、母と……鈴木先生の指導のおかげです」と言って先生の胃に前向きなダメージを与えてくれ。
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