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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

柔道部物語 6巻

柔道部物語 6巻

・インターハイ・県大会
試合が近づき、緊張で三五の身に異変が。
円形脱毛症になってしまった。
主人公がストレスで円形脱毛症になる展開は他の漫画にもあるでしょうけど、眉毛が円形脱毛症になるのはこの作品だけだと思う。
深刻な空気にならないので良かった。

今回は会場に校長が来ました。
学校サボって応援に来たゆり達と遭遇しましたが、目くじらを立てずに笑って許す。
「そのかわり腹から声出して応援するんだぞ」
大らかだなー。
ひろみも応援に駆けつけました。
露出多い格好が場違い感漂ってるので、もう少し隠してください。

・異変
樋口の打ち込みを見て三五も意気込む。
1秒に3回くらいと言われる速度もすごいですが、恐ろしいのは「あの」体でやってることです。
樋口の出る今回勝ってこそ本当の県下一、今度は逃げまわったりしないと気合を入れる三五が……。
油断も怪我もない、全力全開の樋口と真っ向からぶつかり合って勝ちたかっただろうな、三五も。
江南と飛崎のいる木場工業の対決を観戦する三五達は、樋口の異変に気づく。
樋口の後頭部には円形脱毛症ができていた。
主人公とライバルが揃って円形脱毛症になる展開は初めて見た。
重さは全然違いますが。
樋口を指差し笑う生徒達にやりきれない気持ちになりました。
笑うなよ……。
「笑うな、ぶっとばされるぞ」とたしなめる者もいますが、樋口は笑った相手をぶっ飛ばすなんて真似はしませんよ。西野じゃないんですから。
様子のおかしい樋口は飛崎に一本負けしてしまう。
いくら飛崎が強いと言っても、樋口が一本負けなんて考えられない。
会場も騒然。
気にするなと告げる平尾に「もちろんです! 気になんかするもんですか」と返す三五ですが、やはり気にせずにはいられない。

会場には長谷川も来ていました。
春休み中、長谷川が樋口をスカウトしようと思い、耕談館と千葉の学校との合同合宿に参加させた。
「でも……悪いことをしました」
無理矢理連れて行ったわけではないのだから、長谷川は悪くないだろ。
相手がわざと怪我させた等でなければ、誰かを責められる話じゃない。
わざわざ大会に足を運んだのは、樋口の様子を見るためですね。
樋口と飛崎の試合を見て、彼の体の状態を確認した。
そして、希望が無いことも知ってしまった。

・ライバルの選手生命
樋口の状態について岡が情報を仕入れてきました。
怪我して入院していたと聞いて、またかよとツッコむ小柴に頷いてしまった。
宿命のライバルは怪我するイメージがある。
簡単に再戦したら盛り上がらない。
主人公が十分に力をつけるまで、対決を先送りにしないといけない。
そのため、ライバルは怪我したり遠くに行ったりする必要が出てきます。
またケガかと言いたくもなりますが、笑いごとじゃない。

樋口は、背骨がずれてしまっている。
立っているだけでも気が遠くなるほど痛いのに、試合に出ている。
「たぶん……三五と決着をつけるためだろう」
五十嵐が言うのが意外でした。
勝利や決着への執着は薄そうですが、「選手生命が終わっても戦いたい!」という気持ちを見抜けるのか。
彼自身は当てはまらなくても、似たような無茶をする選手を現役時代に目にしたんでしょうか。

まだいくらでも機会がある、無理して取り返しのつかないことになったら……と反論する三五に残酷な現実が突きつけられる。
もう、取り返しがつかない。
一生柔道をやってはいけないと診断された。
樋口を目標に進んできた三五は衝撃を隠せない。
「こんどは正々堂々と勝負することを目標に俺は頑張ってきたんですよ」
三五……。
三五の見る前で樋口が一本勝ちを決める。
飛崎には一本負けしましたが、それ以外は一本で勝っているのが凄まじい。
さすが樋口だと言いたいところですが、山崎や石川は止めなかったのか!?
……止められなかったか。

・三五対樋口、最後の戦い
三五と樋口の最後の戦いが始まる。
普段は三五を応援する声が多いですが、今回はさほど差はないのでホッとした。
大怪我しているとは思えない勢いで攻める樋口。
表情がゆがむ様が本当に苦しそうで苦しそうで……見てられん。
元の位置に戻る前に、樋口の体から力が抜けて尻もちをつく。
立ち上がる顔は汗にまみれ、ゼェゼェと息を切らしている。
もう執念だけで動いているだろ、これ。
痛々しい姿に三五は本気で攻められない。

「もうやめよう、樋口!」
「そういうことは俺を投げてから言え!」

普段は真剣な試合の中でもどこかコミカルというか明るい空気がありますが、この時ばかりは悲壮さが漂っています。
暑苦しさすら感じるノリは珍しいですが、ライバルが命がけで向かってくるとなると、空気も変わるでしょう。

何度も袖釣りを仕掛ける樋口の姿が……。
同じ技を繰り返したら読まれてしまうことは分かっているはずなのに。
得意とする技をひたすら繰り出すことで、己がどんな選手か語っているように見える。
樋口が有効を取った時の山崎や石川が必死の形相です。
早く終わってくれと叫ぶ石川。樋口と仲良かったもんな。
山崎も大会の間ずっと顔に汗を浮かべているんですよね。
祈るような気持ちで見ているのかもしれない。
この時ばかりは、五十嵐への対抗心ではなく、樋口のために勝利を願っていたのだと思いたい。

樋口の体を気遣って技をかけない三五に活を入れたのは飛崎だった。

「そんなあまったれた気持ちで全国制覇ができると思ってるのか! これからはお前の時代なんだぞ!」
「樋口にとどめを刺すのは、お前の役目だ!」

とどめを刺すってすごい台詞だな。
まるで命がけの戦闘みたいだ。
最初は「命を奪うわけじゃないから、その表現はそぐわないのでは?」と感じましたが、樋口の歩んできた道を考えると相応しいと考え直しました。
樋口にとって全てを懸けている戦いですから、そう言える。
もう終わってしまった選手生命を燃やしつくして向かってくる樋口を倒す。
高校一年生で日本一になった男の柔道人生を完全に終わらせる。
その行為には、それだけの重みがある。

言うのが飛崎というのも重要です。
江南側がそんな台詞を言うわけがない。
岬商の面々は三五を応援しますが、そういう言い方はしない。
どちらの味方でもない、中立の人間が言うから説得力が生まれます。
特に飛崎は両方と戦って、強さをよく知っているから断言できる。
樋口から一本を取って「終わって」しまったことを実感したからこそ、引導を渡すべきだと思ったんだろうな……。
樋口のためにも、三五の手で。
この台詞で飛崎のキャラが一気に深まった気がする。
ここで樋口や三五との因縁を感じさせたからこそ、樋口と一緒に観戦したり練習に付き合ったりしても違和感がありません。

飛崎の言葉を聞いた三五の表情が変わる。
本気で集中した時の、口を尖らせた顔になる。
ひょっとこ顔がこんなに熱くなるなんて、予想できるわけないだろう!
本気になった三五を見て嬉しそうな樋口の表情がまた……。
全力の三五と戦うことこそが望みなんだな。その結果負けるとしても。
選手生命がすでに終わっている状態で、激痛に耐えて。

私は樋口に対して「柔道のエリート、厳しい指導にも逆らわない優等生」という印象を抱いていました。
それらの要素から、クールな、泥臭さの薄いキャラだと思い込んでいました。
練習を黙々とこなして、試合して、順当に強くなっていく。周囲の反対を押し切ってがむしゃらに行動したりしない。
そんなことはなかった。
熱く、泥臭い、柔道バカの一人だった。
慢心も怪我もなく本気・万全の樋口と三五の戦いを観たかった……!

三五が両手で襟をもって投げる背負いで一本を取り、決着。
樋口は明るい笑みを浮かべる。敗れてなお満足げに。

「完敗だ」
「インターハイで今の技をやったら、日本中が驚くぞ!」

畳に叩きつけられて死ぬほど痛いはずなのに、爽やかなこと言いやがって……。
礼をして歩み去る二人。
終わった途端崩れ落ちる樋口に石川達が駆け寄ってる。
もうとっくに限界超えてるよな……倒れるに決まってる。
三五は背を向けていて、その光景を見ていないんですよね。台詞もない。
悲壮な覚悟を背負った相手を敗北させた重みや残酷さを感じさせます。
打倒樋口という目標を達成した三五の表情が全然嬉しそうじゃないのが辛い。

戻ってきた三五にあとはまかせるよう告げる小柴が熱い。
口の上手いお調子者ですが、口先だけじゃなく実行するからカッコいい。
残り四人の戦いを語るナレーションもまた燃えるんですよ。
『自分たちが県の王者であるというほこりをもって――三五のあげた一勝を守りきった』
一コマずつしか描かれていませんが、どれも名勝負だったと確信できる。
皆引き分けですが、作中の「勝ちに等しい執念の引き分け」という表現がこの上なく相応しい。
江南の面々も、命を燃やすようにして戦う樋口の姿を見た以上、死力を尽くして勝ちに来たはず。
あの姿を見て奮起せずにいたら仲間じゃない。
江南の猛攻を凌いで、三五の一勝を守りきった。
……熱いです。
特に、石川相手に引き分けた小柴が素晴らしい。
樋口と仲の良い様子が描かれていた石川はいっそう執念を燃やして向かってきたでしょうから。
必死の表情で攻める桜木と凌ぐ鷲尾も印象的。
普段はガキ大将な鷲尾ですが、シリアスな時は決めてくれる。「俺がヒーロー! くらえ俺のスペシャルな技!」なノリも控えめだったんだろうな。
三五と戦った時はやられ役としか思わなかった桜木までカッコよく見える。
「体格で劣る主人公を侮るなんて、やられ役のお手本みたいなキャラだな」と感じたからこそ、全力で攻める姿が映える。
他四人が引き分けたことで、三五対樋口の勝敗が際立ちます。

岬商が優勝を決めたものの、三五の表情は晴れない。
本当にもう柔道ができないのかと問うが、鬼のように厳しい山崎でも、これ以上樋口に柔道はさせられないという答え。
根性論者だと自覚しているんだな、山崎。
そういえば、大脇が払い腰以外の技を習得し、寝技までできるようになっていました。
樋口も高校一年生でインターハイ優勝を決めましたし、山崎に指導力があるのは確かなんですよね。
体罰の域にまで達している厳しさで評価が下がりますが。
もう少し、もう少し飴と鞭のバランスが取れていれば……。

樋口のため、将来世界を目指すため、東京へ転校することに賛成した結果こんなことになってしまった。
ここで私は山崎を見直しました。
岬商を倒すために樋口は欠かせないのに、送り出そうとしたわけですから。
五十嵐に対する意地より生徒の将来を優先するあたり、簡単にビンタする乱暴教師でも一線は超えていない。
山崎の口から「かわいそうに」という言葉が出てきた!
情があったんですね。
得意げに「うちの樋口は5歳の頃から柔道を~」と語っていたからな。
「樋口の奴、新人戦で三五に負けて、おかげで心がひきしまったっていってたぞ。なにしろそれまで敵なしだったからな」
そう語るのは石川。
その時の様子を見たかった。

やりきれない感情がこみ上げて走り去る三五。
彼と樋口を比較して好き勝手言う連中に腹が立ちますよ。
ガツンと言ってくれたひろみ、よくやった。
「○○に比べたら××はたいしたことない」という言い方は引っかかる。
特に○○が××を誰よりも認めている場合、「はぁ? 何言ってんだ?」と訊き返したくなる。
今回の場合樋口は心から三五を認めているわけですから、三五をバカにする台詞を聞いたら全力で否定するでしょう。
逆に三五を持ち上げるために樋口が貶されたら、三五の方も否定するんじゃないか?
ずっと目標にしてきたんですから。

・西野新二
樋口を再起不能にした男について語られる。
千葉の中量級ナンバーワン。
一緒に合宿に参加した桜木によると、「もう柔道をやるのがいやになるような奴」。
……合ってる。

・格
樋口の再起不能は非常に残念ですが、どこかに安堵する気持ちも。
格が落ちないまま退場したわけですから。
岬商や三五の戦いの舞台が県内から全国に移る以上、江南戦は通過点にならざるを得ない。
できれば樋口とは勝ったり負けたりの互角の戦いを繰り広げてほしいですが、そういうわけにもいかない。
全国へ行かねばならない主人公と何度も対決したならば、どうしても敗北が重なってしまいます。
そうなる前に退場したことで、強キャラ感を保ったままでいられました。

再起不能になった試合の相手が、最強のラスボスである西野。
しかも、練習試合とはいえ勝利したと言うのも大きい。
西野の強さが描かれれば描かれるほど樋口の力も強調され、「怪我していなければ……」と思わせる。
全国大会でもトップクラスに強い千代崎が樋口を認めている様子も出てきて、立派に通用したと分かります。

作中では、
・三五が柔道始めて間もない頃、樋口が綺麗に一本勝ち
・油断や焦りで実力を発揮できていない樋口から逃げ回った三五がかろうじて勝利
・大怪我していて万全には程遠い樋口に勝利
と、全力を出しきって技を激突させる対決はありませんでした。
本気や限界がハッキリ描かれなかったからこそ、樋口の強さに想像の余地が生まれて、強いのだと思えます。

・個人戦
階級についての変更点が出てきました。
三五の階級は中量級から軽中量級へと呼び方が変わったとのこと。
決勝で飛崎と三五が対決。
インターハイに出れば進学にも有利と語る飛崎兄、いい味出してます。
進路を考えるのも大事ですよね。
樋口のように現在に全てをぶつけて燃え尽きる勢いで戦うのも魅力的ですが、自分の身を顧みない人物ばかりだと読んでいて悲愴な気持ちになってしまう。
自分の進路以外どうでもいいというわけでもないですし、飛崎兄の姿勢には好感が持てます。
柔道への情熱が深くなければ、樋口にとどめを刺すよう叫んだりしない。
卒業した後も観戦したり鍛えにきたり、いい人だ。
彼も十分強いのですが、樋口に引導を渡した三五の敵ではない。
得意の内股をすかして一本。
最初から狙っていた。もし内股がこなければ、残り30秒になったら背負いにいくつもりだった。
……30秒で飛崎を投げる自信があった。
以前戦った時とは大違いです。

・インターハイ開始
団体戦だけでなく、個人戦は三五の他に中量級で平尾が優勝してインターハイ出場。
しかし野球部の甲子園出場におされて影が薄く……。
こういう状況は全国いたるところでありそうだ。

また西野の情報が出てきた。
身長が161cmで体重71キロ。
太っている姿を想像して大笑いする秋山達ですが、違うんだよ。
泉谷いわく「あんまりかかわらんほうがいいぞ」。
……合ってる。
桜木といい、泉谷といい、散々な言いようです。
でも間違ってはいない。
まだ大人しくしていた時期にこの評価ですから、相当不穏な気配が漏れてたんだろうな。

ひろみについて「あの女が三五君をダメにしそう」と語るゆり。
辛辣だなおい。
大人しそうな外見に反して過激というか、言う時は言う。
秋山も否定しきれない。
こういう時は「三五が好きになった相手だぜ、大丈夫だ」と答えるものじゃないのか。
そこは否定しておこうよ……難しいか。
お、樋口と石川、飛崎が応援に来てくれた!
樋口と石川は分かるとして、飛崎まで来るとは。
実力者同士仲が良いのか。

彼らが見守る中、予選リーグで最初の相手を5-0で下す。
三五の背負いを見て笑みを浮かべる千代崎からライバルのオーラが漂ってる。
敗れた学校の教師の言葉が「らしい」んですよね。実際にありそうです。
強豪として注目されている次の学校にも5-0で勝利し、初のベスト16。
これには石川達もにっこり。
いよいよ決勝トーナメントへ。
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