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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ネウロ感想 6

ネウロ感想 6
這って動く老人~怪盗の真価




這って動く老人

電人HAL編の後日談では笛吹に変化が。
今までの彼ならば汚い連中は極力避けようとするはずですが、ヒグチを留めることを選ぶ。
弥子に協力したことといい、少しずつ影響を受けていますね。
弥子は気持ちを切り替えられず、今回の事件と犯人について振り返る。
考え続ける事ができてしまうのは確かに辛いけれど、忘れれば幸せになるか、解決するかというとそれも違う気がするな。
ネウロも弥子を天井からぶら下げつつ言い聞かせます。
「忘れる事はつまり進化をも忘れる事。ゆるやかに死んでいくのと同じことだ」
「忘れるなヤコ。貴様も何一つ忘れるな。忘れなければ貴様は再び進化ができる」
後々ネウロの言葉通りになる。
別れは辛いけれど、それが弥子の糧になった。
HALの事件があって彼女の日付が変わったからこそ、最終局面での働きがあったのだと思います。

家具編は、
「全てのモノにはあるべき完成の形がある」
「悪意あるフォローは前よりも対象のイメージを悪くする」
などの台詞が好きです。
そして、最後の葛西登場に燃え燃えしました。
家具編の犯人には噛み切り美容師と同じにおいを感じます。より重要なエピソードへの移行という印象を受ける。
穂村の相変わらず高いズボンの位置に和んだ。
「世界には想像を超えた犯罪者が存在する。いつか運命は『私達』を引き寄せる」
いかにもな台詞だ。この時点では何を意味するのか掴み切れていませんでした。
コマの形が6になっていますね……。

葛西の台詞は頷ける部分があります。
「『本当は善い奴だったんだ』みたいなラスボスばっか。『仲間を思って仲間のために悪い事した』だの、『自身のトラウマを克服したいから悪い事した』だの、そんな半端な悪倒しても……見てる側はスッキリも何もできやしねぇ」
可哀想な過去があろうがなかろうが、前向きな悪役が大好きです。
可哀想な過去は「だから許してあげてね」「責めるなんてひどい!」と同情を誘う空気になると抵抗がありますが、「こういう背景があって〇〇という考え方になりました、××を目指しています」という説明になるなら引っかかりません。
上の台詞を言っている葛西本人は憎めない、好感のもてる悪役です。
かなりえげつないこともする犯罪者なのに悪い印象を受けないのは何故だろう。
庶民っぽさやピンチになっても余裕を感じさせる振る舞いが悪役として素敵。
HALのような悪役の後にこういう考え方が出てくるのが興味深い。悪役が個性豊かな漫画が大好きです。

借金返済編では、サイの助手であるアイと弥子が出会います。
何といっても一番印象に残るのはこの台詞。
「善悪にこだわらず、可能性が残っているならば迷わず求めるべきだと思います。可能性無き絶望ほど恐ろしい事は無いのだから」
彼女の過去が明かされた後で読むと印象がガラッと変わります。
 
這って動く老人

このエピソードでは睦月が可愛い。
「這って動く……白ッ!」と叫ぶ老人はまずくないですか?
犯人も犯人で親の七光り関連で危ない台詞を吐きまくる。
危ないネタをぶっぱなす一方でキャラ同士の関係が掘り下げられます。
被害者の仕事への姿勢や孫への愛情を認め、自分も応えようとする吾代。彼を信用する笹塚。
ついでに膝枕されようとする望月の信頼関係がツボです。
裏社会の情報屋が笹塚の名を聞いて震え上がるのも伏線ですね。カタカタしすぎ。

「親の才能なんてそうそう上手く継げるわきゃねーんだよ!」
七光りを前面に押し出す醍醐の態度はどうかと思いましたが、この台詞には同感です。
親が偉大だからといって才能に恵まれているとは限らない。
「七光りをもらう側の人間の大半は……だからこその苦悩も努力も人一倍してる」
という笹塚の台詞にも同意。
真っ先に『ダイの大冒険』のダイが浮かびました。
彼が強いのは竜の騎士だからか。強くなるのは当たり前なのか。
ダイが強くなったのは、もちろん竜の紋章、闘いの遺伝子を受け継いだという理由があります。しかし、純粋さやひたむきさ、皆を守ろうとする意思や努力があったからこそ、あれほど成長することができたのだろうと思います。
生まれ持った力に頼るだけのキャラだったら主人公としてあれほど好きにはならなかった。

話を戻して、いがみあっていた笹塚と吾代が協力し、人質になっていた睦月を救い、犯人を捕える。
見事な連携です。
二人を役に立つ手駒と認めるネウロの指がチェスの駒に変わっている。これは後のシーンとつながっているのでしょうか。
復讐についての笹塚の考えは、彼自身に跳ね返ってきますね。
「大人になった君が……それでもなお、復讐する事でしか幸せになれない哀れな人間なら、その時は迷わず殺ればいい」
単に復讐をやめろと言うんじゃなくてよかった。
家族を皆殺しにされ、力を得るために一時姿を消した彼が言うから重みがあります。

怪盗の真価

HALIIがあまりにも小物すぎて笑えます。
復活怪人は弱いという法則に当てはまる。
案の定餌にされました。何という出オチ。
彼を観察する時のサイの目は篠原に似ています。
「サイを相手にする者は……いずれ招待されることになる。真の“悪”の世界へと!」
この葛西の台詞はシックスのことですね。

アイの回想によってサイとの出会いが描かれる。
可能性がなく、限界がある絶望的な世界。以前弥子に語ったことと対応しています。
隣の乗客の姿がころころ変わっていたことに気づかなかった。おまけで「いつもの作画ミスかと思いました」とツッコまれています。
話しかけた時のサイの姿はイレブンに似ています。
限界がある人間なんて誰であろうと同じという彼女にサイが激怒。自分が何者か求めて苦しむ相手にその台詞は禁句だ。
名前や顔、国籍を捨てる男達への怒りも同様。正体があるうちに殺す行為に、サイのこだわりが見えます。
「空を飛べる~」のコマのサイが格好良かったです。動きを感じる。
人間の可能性に限界を感じていた彼女はその時「死に」、サイの正体を知ろうとする従者アイが誕生した。
アイはXIの片割れであると同時に、虚数のiも意味しているのでしょうか。サイの傍の見えない存在として。

私は決して忘れない。
女刑事の尻に注目していた「彼」の姿を。
見事な演技だと感心すべきか、ラスボスの威厳が台無しだと嘆くべきか。
竹田刑事のサイ登場にガツンときました。
背後に描かれた聖母像と男の怪しげな姿が気になります。
あちこちで挟まれるイメージ映像が癖になる。
「魔人ネウロ。あんたはいつか追いつかれる。人間の中から抜け出してきた人間に」
サイのことを指した言葉ですが、最後まで読むと弥子も言えるかもしれない。
アイも、サイの中身を知るきっかけはネウロではなく彼女ではないかと感じていたようですし。
今のサイはすでに中身を持った人間だと言われてもサイは納得しなかった。
弥子の言ったことも、サイがそれに反発するのも、無理からぬことだと思います。

十四巻の表紙のアンドリューをよく見ると首に線が……!
血まみれの腕は十三巻のアイとつながり、何が起こるかを暗示しています。
このあたりの展開は「今後のサイとの対決はどうなるんだろう、これ以上引っ張るとインパクトが薄くなるかも」などと考えていたところに爆弾を投下された気分でした。
衝撃的な場面が続いて呆然としました。
アンドリューが報われない。ここまでひどい目に遭わされて死亡したキャラはあまり見ない気がする。
アイが撃ち殺された場面では唖然としました。
回想シーンで掘り下げられた矢先に容赦なく退場していくのは辛い。
サイとの関係が日によって変化するのが悲しい。
飛行機落としのイミナと呼ばれた彼女の乗ったヘリが墜ちたのは皮肉が効いています。
「全ては我に捧ぐために」のイラストでシックスの髪が茨と鎖に変化するのが強烈。キリストを連想します。
「世界には……想像を超えた犯罪者が存在する。運命は……いつか私達を引き寄せる」
ここでようやく意味が明かされたわけですね。これもまた6の形で表現されている。

サイの正体があっさり説明されます。これまで散々サイが求め、読んでいるこちらもやきもきしていたのに、残酷なほどシンプルでした。
ただの実験動物で家族や友人などはおらず、探す中身もなかった。
アンドリューへの仕打ちやリコへの命令など、シックスは吐き気を催す邪悪です。ひたすら嫌悪感が湧きます。
ネウロに対しても終始上から目線で舐めた態度。
「これほど……不快な気分にさせられたのは初めてだ」
「残念だ。だがありがとう。最高の誉め言葉だ」
ネウロにここまで言わせたのは珍しいですね。ある意味すごい男だ。切り返しに感心するより、笑顔が気味悪いと思いました。
その後のネウロの発言に胸が熱くなりました。
「プライドを取り戻せ人間共よ。貴様等の悪意は……そのような安っぽいものなのか?」
悪意という言葉だけだと危なく聞こえますが、大なり小なり人間の心に宿っているもの、欠かせないものだと捉えると、人間を認めているように聞こえます。
ハッとしたように言葉を失う者達と、彼らを殺すシックス。「つまらん」なんて言うな!
「全ての人間は我が輩の食糧であり我が輩の所有物(オモチャ)だ。我が輩だけがいじくる権利を持っている」
「違うね。全ての人間は私の敵であり私の所有物だ。私だけが壊す権利を持っている」
どちらも否定したい。ネウロの方が遥かにマシだとはいえ。
こうしてドSサミットは閉会しました。
いよいよ血族編に突入します。
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