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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

ネウロ感想 9

ネウロ感想 9
それぞれの決戦~『謎』




それぞれの決戦

シックスのいいなりになっている警視総監をゆすって立件の許可を求める笛吹。
怯える警視総監を一喝する姿が格好いい。笹塚の分の想いを背負っているからな。
以前の彼ならば汚い手段は忌避していたはずですが、清濁織り交ぜたやり方を身につけた。
姿勢の変化が実を結んだのですね。
弥子達と出会って影響を受け、成長しました。
作者の予想を越えて成長してくれたキャラの第一位に輝くのも頷ける。ちなみに二位は吾代でこれも納得ですが、三位は予想外のキャラでした。
弥子から勧められた魚肉ソーセージを食べているのも嬉しい。

本城が残した情報でシックスのアジトを突き止め、吾代とともに向かう。
本城は死をもってようやくシックスから解放されたと思うと、何ともいいがたい気分になります。
登場時シックスを追い詰める鍵になるかもしれないと思いましたが、理想とは違う形で実現しました。
この時すれ違ったあやしい人物は、てっきり生き延びた葛西かと思いました。
イレブンの化けた弥子に騙される。つくづく反則だと思った。
「服を脱ぎなさい、XI。ここで始めよう」という台詞はそこはかとなくエロい気がする。
シックスが全ての五本指の力を使えるというのはそこまでインパクトありませんが、XIの変身能力は度肝を抜かれました。
至郎田が再登場!
犯人オールスターズ!
立ち直った弥子が弱気になったのは少し違和感がありますが、イレブンとの会話のためかと思いました。ここでのイレブンの言葉が弥子の挑発に使われたので。

「弥子は魔力を回復させる体質の持ち主だから助ける」というネウロの嘘をシックスがあっさり信じたのは、魔人にとっては脆弱で格下のはずの人間と信頼関係が築かれている、彼女の力を必要としていると考えられなかったためでしょう。
それに、ネウロの強さの源が魔力という曖昧なものである以上、ハッタリかもしれなくても万一の可能性に備えて潰しておかねばならない。
ネウロが弥子をいびるのは打算に基づいてではなく、純粋な好意? であってほしいと思っていたら「趣味だからだ!」で笑いました。
いい笑顔で断言してくれました。
清々しくヒロインをいじめるのが趣味だと言いきる主人公。

ネウロの言葉を信じたシックスはネウロを、イレブンは弥子を狙う。
そこでイレブンをサイに戻さねばならない。
「我が輩は……貴様にならそれが出来ると信じている」
どれほど弥子を信頼し認めているか伝わってくる。
普段そういった言葉を口にしないから、ここぞという時の威力が増します。気取った言い回しはせず、シンプルに決めてくる。
台詞だけでなく絵や構図でも魅せてきます。枠線が目のところで途切れていたり、線が目線になったり、工夫されています。
互いの太ももに手を当てるのもいいですね。距離感が好ましい。

一人になった弥子を狙い、イレブンはネウロに化ける。変身途中の人と獣の融合したような姿が艶めかしい。
見抜くのが一番大変そうな、厄介な手段を使ってきました。
先ほどの会話が無ければどうするんだと焦るところですが、ネウロもああ言ったんだからと信じられます。
イレブンを待ち受ける弥子も落ち着いていますから。
ネウロvsシックス、弥子vsイレブンの組み合わせは上手い。
単純な戦闘力では弥子はまったく太刀打ちできません。もしシックスと戦うことになれば即座に殺されて終わります。イレブン相手だと、シックスの役に立ちたいという彼女の想いを上手く誘導すれば倒す糸口がつかめる。
イレブンを倒すというのは、ガチバトルで勝利するのではなく、戦う理由を無くさせること。相手の記憶を読めるイレブン相手だからこそ弥子の経験が活きてくる。
主人公だからどうせ死なないという安心感ではなく、これまでの積み重ねがある彼女ならば何とかしてくれると思えます。
ネウロではないと一目で見破り、衝撃を受けたイレブンの隙をつく。
ただの人間にあっさり見破られる程度じゃシックスの役には立てないと挑発し、自分のペースに持っていく。
人間の脳を全て一瞬で読むなんて不可能、脳は難解という台詞もHALの姿が挿入されることで説得力が変わってきます。
本当の自分を知るのが怖いからと挑発され、怖くなんてないと言ったイレブンは弥子の記憶を読む。
勝負に持っていくのが上手い。
記憶が林檎で表現され、完全な消去はあり得ないという根拠にヒグチや電人HALが持ちだされ、XIがXiに戻る。一連の流れがすごく綺麗です。

何度も言っていますが、松井先生は以前出てきた要素を活用するのが本当に上手いです。
「その顔が……私は好き」
のアイの笑顔が素敵です。
イレブンがアイを思い出してシックスを裏切るかも。回想で出てくるだろう。それくらいだと考えていたら、これほどサイの中で彼女の存在が大きかったとは……。
重要な局面で描かれたのが嬉しかった。登場した量はそこまで多くないのに、しっかり印象に残ります。
刺された弥子のトリックはヴァイジャヤ編でも出ていました。
おまけページに伏線があったのか。
己を取り戻したサイはシックスに攻撃を加える。
「俺は人間だ。相棒と二人で一人の犯罪者ユニット、怪盗Xだ。『新しい血族』なんて……あんた一人でやってろよ」
化物に近づく恐怖に苛まれていた彼が己を人間だと言ったこと、怪盗サイが中身だと肯定したこと、アイを相棒と呼んだことなど胸が熱くなりますが、とりあえず一言。
ざまあみろシックス!

サイの追いつめ具合も、シックスの反撃具合も、ちょうどいい。
そして逃走をあれこれ取り繕うシックスが小物くさい。
確かにいったん逃げれば有利になりますが、あれほどネウロに偉そうなことを言っていたくせに。
劣勢の時に悪役の格好よさが試されますね。追い詰められても減らず口叩く余裕のあった葛西の方が大物に見えるぞ。
吾代の出した「血族なんていないんじゃないか」疑惑は「シックス一人が血族であとは人間」という答えが出ました。
上手い落とし所だと思います。血族がゴロゴロ出るのも有難みが薄くなりますし、シックスまで人間だと散々威張って人間を見下していたのは何だとツッコみたくなりますし。五本指の能力は人間の範囲からはみ出てる気もしますが、DCSを思えば大丈夫……かもしれない。
回想でも葛西は美味しい所を持っていきます。ちゃっかり株を上げる男だ。
金に強いのは火、という思想とネウロが使った能力は関連があるのでしょうか?
金属を使うシックスを追いつめるのは火の力。さらにシックスを倒す能力は刃……金と言えなくもない。同じ属性の技でねじ伏せたなら与える屈辱も倍増ですね。

サイのプロフィールにジーンときました。
怪盗Xが自分の正体だと認めた……。以前弥子が言っていたことと合致しています。
これまで悩む描写があったからこそ、迷わなくなった彼を見て昇華されたと感じられる。
ネウロはシックスを追い、最後の戦いに臨む。
残された弥子はサイと会話する。
ネウロについて彼女が「私達とは別物」と言うのは、サイを人間だと認めている事にもなります。どれほど人間離れした肉体や力を持っていても自分達と同じだと。
最初弥子はサイの人間離れした能力や悪意に怯えていましたが、成長を遂げてそう言えるまでになりました。
アイを殺された時に怪盗Xは死んでいたと涙を流すサイ。
感動しかけたら、泣かせようとしたと言われてちょっとひっこみました。
弥子を泣かせてやると決意したサイは、最後に変身する。
彼が最後になったのは……記憶を読みとって殺した、笹塚でした。
笹塚の死があっさり目に描かれていたのも、最後に言葉をかわさなかったのも、この場面のため。
辛い思いをさせたと詫び、何も後悔していないと告げ、微笑む。
この時の微笑は復讐鬼ではなく穏やかな青年のものでした。豹変の笑顔じゃない。
「会えて良かった……ありがとう」
シンプルだからこそ心に響く。普段寡黙なキャラだからなおさら。
変身が解け、血を吐きながら「ざまぁ……見ろ……泣かせて……やったぜ」と呟くのがサイらしい。
アイの仇を取れず、シックスにやられ、無念の内に死ぬはずなのにどこか満足気に見えます。
「こ、れ、が……『俺』だ……」
最後の自分像を連想する姿勢と外見です。『最後の自分像』というタイトルもシンクロしています。
まさか、その時すでに最期まで考えられていたのでしょうか?
考えていたにしても、後からつなげたにしても、上手い。
イレブンとの対決からサイの退場まで、綺麗にまとまっていました。

弥子はできること、すべきことをきっちり成し遂げた。
後はネウロが決着をつける。
ここからは人外同士の戦いです。
シックスに対する「未来を作れない歪な進化」という表現は、ネウロ自身を指しているようでもあります。
変種という点で共通している二人がやることは、人類の存亡をかけて滅ぼし合うこと。
「だからここで……貴様の進化を止めてやる」
静かに宣言するネウロから威厳が出ています。
反対にシックスからは余裕が感じられません。

『謎』

感謝というサブタイトルの通り、笹塚とサイの弥子への感謝と、彼女からの感謝が描かれる。
別れを乗り越えて先へ進もうとする弥子はいい主人公です。
ネウロとシックスの決戦は悲しさが漂っている気がします。
シックスの「結局、誰一人私には届かない」という台詞には少し孤独を感じます。
同情する気はこれっぽっちも湧きませんが。
人間の病気(シック)を治療するために、捨て身の覚悟で必殺技を放とうとするネウロ。
正義感あふれる主人公がやるならともかく、ネウロがそういう行動を取るのは新鮮です。
若い頃のシックスは美青年風味だったのに、成長するとワカメヘアのむさい親父に。イレブンがこうならなくてよかった。

心・脳が折れた者を役立たずとみなし切り捨てるシックスと、折られた者が再起して強くなることを期待するネウロは対照的。人間への見方の違いがそのまま戦う理由にもつながっている。
金属に特化したシックスに金属技のイビルメタルをぶつけてねじ伏せるネウロはドSだ。
必殺技が文字通り「必殺」なのも素敵。
強力な技が炸裂したらしっかりダメージが入ってほしい。
斬ったという結果のみを造り出す剣なんてロマンの固まりです。
斬れぬ物は無い、というキャッチフレーズに惹かれる。

体をバラバラにされても生きているシックスは本ッ当にしぶといな。下手な魔人より生命力強いんじゃないか?
どんな身体の仕組みだと突っ込みたい。根性補正とかそういう段階を超えている。
ここで逃げられたり生き延びたりしたら嫌だと思っていたら、ネウロがきっちりとどめをさしてくれました。
さすがネウロ、そういうところは安心できる。
シックスの最期はややあっさりしていた気もしますが、改めて読み返すとかなり屈辱的です。
・悪意が強い分ネウロの狙いにすぐ気づく
・実行されるまでの間、普通の人間より恐怖や屈辱を感じる
・悪意を向け続けてきた男が悪意によって滅ぼされる
もう一度言おう。
ざまあみろシックス。
とどめの刺し方がまたドS。
「靴を舐めろ、その全身で」
主人公の台詞と思えない。
死を覚悟してまで人間を守ろうとした理由について考え、食料源という理由だけだろうかと疑問に思いながらも深く追求しないのはネウロらしいと思います。人間に感化されすぎて簡単に「○○に目覚めた」と言われても困る。
ネウロを救ったのが春川の造ったシステムとヒグチなのも、起きるよう呼びかけたのがHALなのも、因縁を感じさせます。
『起きたまえ。脳細胞の申し子よ』
IIと違って大物感溢れる。これぞHAL。
ただの幻聴だとさっくり片づけられますが、そうではないと思いたい。

戦いは終わり、日常へ。
人間の悪意についての弥子の見解は面白い。
強いと犯罪を生むけれど、全くないと刺激もなくなる。欲望にも通じる考え方です。方向や程度を間違えなければ、ということですね。
笹塚の墓に報告する笛吹の台詞が凛々しい。
「おまえはそこにいろ。私は先に進む」
この人、本当に格好よくなったな。

衰弱しきったネウロの前に以前すれ違った怪しげな人物が現れました。
青膿ゼラ。レ・ミゼラブルからきているようです。
地上への道を開いたシーンのネウロの格好よさが極まっている。
肉体が弱り切ったネウロは一度魔界に帰ることに。
魔人は生まれついて力の差が大きく、寿命が長い。そのため可能性の追求を早々に諦め、運命という言葉で解決したがる。
弱い魔人ゼラの口から直接魔界の一般的な考え方が示され、この先変わらなさそうですので、そういうものかと納得できます。

一度帰ったらこの世界に戻ってこられるか迷うネウロに、弥子が言葉をかける。
「約束するよ。私ももっともっと成長(しんか)する。あんたがいつどこに帰ってきても……すぐに私を見つけられるぐらい輝くから」
「あんたに護ってもらわなくても、もう私は、人間は、大丈夫だから」
弥子達人間の強さを認め、明るく笑うネウロが爽やかさ全開。
ネウロが五本指やシックスを倒しただけの場合、ネウロがいなければどうにもならず、今回はしのげたけれど次はどうなるかわからないという不安が残ります。
弥子や警察の人々が戦ったことでこれからも大丈夫、立ち向かっていけると思える。
「我が輩は何と愚かな心配をしたのだろうか!」
ネウロが人間に対してデレた。ただの食糧ではなく一つの種族として立派に認めてくれました。
「留守は任せたぞ。相棒」
「うん」
初期の二人からは考えられません。
最初はただの奴隷・人形扱いだったのが、これほど信頼されるまでになった。
ゼラが女だった事に驚愕しました。初期案が可愛かったのに何故この風貌になったんだと思いましたが、弥子とネウロの関係を描く上でゼラに気を取られてしまうのはまずいからかもしれない。

最終話のタイトルは謎。
読み方は「まじんたんていのうがみネウロのゆいいつにしてさいこうのしょくりょう」。長い。
弥子は肩書は探偵のまま交渉人の仕事をこなし、吾代はマネージメントを担当。活躍しています。
ここで葛西の再登場に歓喜。
葛西とネウロの直接対決が無かったのも、葛西の台詞を裏付ける効果が出ています。
まだ人間は見せる物がある。
「ようこそおいでませ、犯罪者のワンダーランドへ!」
こんな台詞が最終回で飛び出すのがネウロらしい。
彼の望み通りシックスより長生きできてよかった。
「葛西は死んだのか?」
「あのフードの人物は葛西じゃないか」
「ゼラでした、やっぱり死んだのか……」
「生きてた!」
と踊らされました。
本当に死んだかどうかぼかされていましたし、彼の望みも語られていましたから強引さは感じない。

あかねちゃんの謎がネウロの帰る道しるべになっている。解かれていない謎の象徴として残されたのだと思います。
一話で謎を嫌っていた弥子が肯定的に見られるようになった。
悪意すら完全に否定し切り捨てることはせず、重要さを見出している。
「この『謎』は……我が輩の舌の上だ」
最後は帰還したネウロの決め台詞で締める。
すっきりとした終わり方でした。
引きのばしも打ち切りもなく大団円。素晴らしい!

1、2、3、7、10巻用のストーリープランを作り、極力適任終わり方が迎えられるように備えたとのこと。
ネウロ2を読んでみたい気もしますが、綺麗に終わっているんですよね。
ネウロに出会えてよかったと思います。
本当に楽しかった、ありがとうと言いたい漫画です。

離婚調停

読み切りの感想も。
タイトルとネウロの内容から「穏やかな夫婦が豹変してドロドロな心をぶちまける……と思わせておいて実は弁護士が豹変するんだろう!」と自信満々に予想していたところ、見事に裏切られました。
おじさんはほどよくドライで渋い。地球に対する目線は過剰な美化も悲観もない。
ルカは可愛い。
 「この家……ちょっと切っていい?」のおじさんの笑顔が不敵で格好良かった。
彼の正体やオチに気づかず、ストレートに「やられたー!」と思いました。
地球が大変な状態になっているのに後味爽やかです。
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