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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

1000円ヒーロー 2巻

1000円ヒーロー 2巻

刃と恵理がピンチの場面から始まります。


第9話 毒と二択

サソリ怪人デスコーピオン。
敵としては結構好きです。
・ヒーロー達の、仲間を想う心を利用して騙し討ち
・毒を撃ち込んだヒーローに解毒剤をちらつかせて、一緒にいる少女を殺して生き延びるか、両方死ぬかの二択を迫る
・相手の攻撃が通じそうになったら解毒剤を捨てると脅す
・ヒーローに対して守るべき人々の死に様を見せつけようとする
・二人目に毒を撃ち込んでから一人分の解毒剤をやろうとする
・少女を庇って二発目の毒をくらったヒーローが死んでいく様をゆっくり観察する気でいる
・毒で動けないヒーローに、頑張って解毒剤を取りに来いと笑いながら煽る
胸いっぱいに広がる芳醇な外道の香り。
卑怯が褒め言葉になるレベルの下衆だな。
こういう胸糞悪くなる敵がいるから、おっちゃんみたいな怪人の最期が引き立つ。

デスコーピオンの台詞から、ヒーロー達は仲間意識が強いことが分かります。
ヒーローと聞いて思い浮かべる精神を持ってる人達ばかりなんだな。
本来は喜ばしい要素です。
今回はそれゆえに被害が大きくなったのがやりきれない。
変身して攻撃する刃ですが、怪人の姿になった相手に敵わない。敵の体にはヒーローを狩った証である星が幾つもついている。
戦いを軽く考えていたキャラが初めて直面した死の恐怖に震える展開は好き。
覚悟を決めて震えが止まる展開はもっと好き!
恵理を殺せば解毒剤をやるという提案を、笑みを浮かべて蹴ったシーンがカッコいい。
デスコーピオンの体についている星は、最後まで戦ったヒーロー達の証。
戦うことを諦めてしまう者ばかりなら、星は集まらなかったはず。
それに気づいて言葉にできる時点で、刃にはヒーローとしての心が備わっていたのではないでしょうか。
最初から精神面が全然駄目だったのではなく、元々あった心が曇っていたのだと感じます。

恵理に巻き込んだことを詫び、いいところを見せたくて怪人の出現を喜んだことを明かし、自分がどうなろうと逃そうとする。
その行動、紛れもなくヒーローだ。
「折れた刃を直接掴んで、掌から血を滴らせながら攻撃」はロマンだよね!
解毒剤を盾に脅すデスコーピオン、情けねえな。少し前まで勝ち誇っていたのに。
毒が回り、血を吐き、動けなくなっても、刃は進もうとする。
助けるべき人がいるから、倒れるわけにはいかない。
(僕はヒーローだ!!)
……いいなあ。
「俺が可愛いシニョリータを守ってみせるぜ」的なキザな奴が必死になっている姿を見るとグッときます。特に一人称が「僕」になっているあたりが。
戦闘前に恵理に告げた台詞は口先だけではありませんでした。
守りたいという想いは本物だったんだな。
倒れかけた彼を支えたのは……千!
さすが主人公、いいところに来る。
ただし激安スーパーの場所を質問するために。
台無しだよ!
前ソニ呼ばわりもやめてやれよ。

第10話 過去と本性

偽の情報で町内走らせたのに前髪引っぱられるだけで済んでよかったな、刃。
恵理から千円を渡された千が戦おうとする。
この時点では、彼は節約して=余力を残して倒す気満々でした。
そう判断するのも仕方ないほど力の差があったのは事実ですが、怪人の悪辣さを甘く見ていたと言わざるを得ない。
千の余裕につけ込むかのように、敵は恵理に毒を撃ち込もうとする!
解毒剤は一人分しかないため、二人毒に侵されれば片方しか助かりません。
絶望を眺めて楽しむつもりです。
いい趣味してますね……。

千は入金がまだでヒーローの力を発揮できない。
阻止したのは、毒で動けないはずの刃でした。
己を叱咤する表情が気合入っています。必死さを感じる。
(動け……脚よ動いてくれ!!)
(この瞬間に動けないで……何がヒーローか!!)
立派なヒーローだ。
恵理を庇って毒を受け、血を吐きながら崩れ落ちる彼は笑っていた。守ることができて満足げに。
浮ついた気持ちもあったけど、恵理を守りたいという言葉を実行し、貫き通しました。

庇われた恵理が刃の名を呼び、千も刃をヒーローだと認める。
二人の中で刃の認識が変わった瞬間ですね、間違いなく。
恵理と刃に詫びた千の表情は真剣なものに変わっています。
「後は任せろ」
お約束の台詞がストレートに心に響く。
金を残すつもりでいた千は考えを改める。金・力を出し惜しみすべきでない時を知っている。
千が全力でパンチをぶち込み、怪人は見事に爆発四散。
外道な敵に相応しい最期に溜飲が下がりました。

刃の過去が明かされました。
デカいだけのウスノロだとクラスメートから馬鹿にされていた。この頃から前ソニ呼ばわりかい。
気が弱そうな印象通り、ろくに反抗しない。現在の「俺が守ってやるよ」なキャラは相当無理してたんだな。
ヒーロー適性があると知った途端周囲は鮮やかに掌返し。完全に見下してたくせに、どの面下げて友達扱いしてんだ?
馬鹿にされていた少年がいきなりヒーローになったら、それでおかしな具合に持ち上げられたら浮かれてもおかしくない。
調子に乗ってただけじゃなく、生身でも強くなろうとトレーニングして、たくましくなってるんですよね。この頃からヒーローとしての意識はありました。
やたらと「守る」と口にしていたのも、ただの慢心ではなく、『ヒーローだから』皆から認められていると感じ、自分の居場所を守りたかったのかもしれない。

刃と恵理の距離が近い。物理的に。
膝枕か!? と思ったらカバンでガードしてた。ちっ。
解毒剤がニセモノというオチはなかったか。
千の圧倒的な力を目にした刃はヒーローを辞めようとする。
「存在を公表しない側面には、そういう感情への配慮もあるかもしれない」という恵理の推測には、それでも公表した方いいのではないかと思いつつ、頷ける部分も。
確かに「戦闘は強いアイツ一人に任せておけばいい」と思うようになったら危険ですからね。
「どんなに強いヒーローだって、全ての人は守れない」
現に、危ない時に千がいなかったからなぁ。刃が引き離したせいとはいえ、似たような事態が起こらないとも限らない。
お前がいてくれなかったら死んでいる、強さの差など関係ないと告げた恵理。

「私にとってはお前だって……ヒーローなんだ」
「助けてくれてありがとう……刃」

おそらく最も求めていたであろう言葉に、刃は涙をこらえきれず……。
自分が戦って当然と思っているような人物が感謝されて心を動かされる展開に弱い。
物陰から見ている千の姿に和んだ。帰ったと見せかけて様子を窺ってました。
恵理の刃に対する評価・印象が変わったように、刃にとっての恵理も変わっただろうな。
最初は外見がストライク
→有望なヒーローと知ってもそっけないのでムキになる
→冷静に情報を掴むのを見てただ者でないと感じる
→危険な目に遭わせてしまった守るべき人
→感謝して、ヒーローだと言ってくれた相手
ですから。
それにしても、ありがとうと言われるのは初めてか。周囲がどんな風に扱ってきたか想像がつきますね。
称賛しても感謝はしなかったと。
友達面してすり寄って、力を利用しようとして……嫌になるなぁ。

翌朝刃は元気になってました。早っ!
星座占いが12位だったと力強く告げる時にいい顔してる。
惚れた相手を危険に晒して目の前で泣いてプライドズタボロになった翌日にこれ。
立ち直りが早いのも理由があります。
「メソメソしてたらカワイ子ちゃんを、守り損ねちゃうからね」
ここまでいくといっそカッコよく思えてきた。
カッコつけだろうと貫き通せば本物でしょう。折れずに突っ走ってくれ。
恵理も冷淡な反応ではなく穏やかな表情を見せる。今までならそっけなく切り捨てていただろうな。
刃は千の名を呼び、指を突きつける。
そして、宣言。

「俺は君を………君をも守れる男になる。待ってろ!」

ここで私は一気に引き込まれた。
戦う力を持たない相手ではなく、自分よりはるかに強いヒーローに告げるのが熱い。
千は笑顔になって軽く拳をぶつける。
今ここにヒーロー同士の友情が結ばれた。

第11話 囚人と行楽

怪人を収容する刑務所に異変が起こる。
厳重に警戒されているから大丈夫というのは脱獄の前フリにしかなりませんよね。
戦闘も無く退場したヒーロー達が哀れだ。
ウイルス怪人のエボリアに怪しい男が接触。
怪しい男は厄介です。
何が厄介って、名前が出ないから何と呼べばいいか分からない。
怪しくて危険で笑顔が胡散くさいこと以外何も分からん。仕方ないから謎の男と呼ぼう。
もちろん行動も厄介です。
怪人を駒のごとく扱って危険な事態を引き起こしますから。

エボリアは怪人化と同時に八百人以上殺害……そんな危険な怪人、いくら大人しく従おうと即殺害コースでは?
サイトの方では研究に利用するためでしたが、裏サンデーでもそういった理由で生かされていたのでしょうか。
エボリアは定期的に送られていた婚約者からの手紙が途絶えたため、会いに行きたがっている。
だが擬態できない身で脱獄したところで、すぐさま発見され、討伐されるだけ。
1巻でも触れたように、怪人が人間に擬態するための条件が残酷なんですよね。
元の生活に戻りたい、人間を殺したくないという願望『ではなく』、「もっと上手に人間を殺したい」という悪意が必要ですので、戻りたいと願う者ほど戻れない。
謎の男はエボリアに擬態できる薬を売りつけ、代金はワンコインと告げる。
千円=紙幣で1秒変身する千と対比になっているのでしょうか。

ヒーロー狩りのデスコーピオンを倒した功績は刃のものに。
こうやってどんどん刃の実力が勘違いされそうだな。今の刃なら驕ることも重荷に感じることもなく受け止めることができるでしょうけど。
プールのグループチケットが当たったので千、ほのか、恵理、刃の四人で行くことに。
刃……ズボン脱いで肉体美アピールするのはやめろ。
千に嫉妬するいつもの男子とその友人のやりとりに笑った。
「コイツ嫉妬してばかりだな……」と引っかかるのを防いでいるのは、友人のズレた返答のおかげです。

おまけでは恵理のプロフィールが。
対等な友人であるために金の貸し借りはしない。支援する際は条件を付けて取引という形にする。
それがいいと思う。

第12話 勝負と筋肉

プールでわいわい遊びます。
刃に「押すなよ? 絶対押すなよ」されて押そうとする千。
仲良いな。
千ごと押す恵理。
ノリいいな!
皆楽しんでいるみたいでよかった。

千から友達と言われて動揺する刃に、微笑ましい気持ちだけでなく哀しさをも感じてしまう。
「トモダチ」とカタカナになっているのが不慣れさを物語っている。
千に対してライバル意識は残るかもと思っていたのですが、素直に仲良くなってます。
過去やプロフィールを知った後だと納得しかない。
普通の、対等な友達に飢えているからなぁ。
「俺達友達だろ?」という、何かを要求するための押しつけがましい友達認定ではなく、自然に認めてくれるのは嬉しいだろうな。
一緒に遊んだり、他愛のないやりとりを楽しんだりしてほしい。

アイス屋のお兄さんから、腕相撲で勝ったら3段アイス無料プレゼントのお知らせが。
無料ときたら千の出番だな!
……我ながらひどい期待の仕方だ。
アイスくらい自分がおごると言う刃ですが、唐突におごるといっても違和感がある。戦いの後だったり何か一仕事終えた後なら自然です。喜んで食べそう。
腕相撲に負けたアイス屋の反応に「負けたことに腹を立てていちゃもんつけるのかな」と予想したら見事に外れた。
素直に相手を称える精神が清々しい。
アイス10段盛れる技術がすげえよ。

最後に登場した政府ヒーローの二名はマスクと髪型のせいで不審人物に見える。
台詞も「(優先すべきことは)定時に帰ることだけさぁ」「(仕事のためなら)どんなことをしたって許される」ですから。
これでヒーローかよ。

第13話 擬態と潜伏

人間に擬態して婚約者の元へゆこうとするエボリア。
このまま脱出に成功したら穏やかに生活できていたのだろうか。
……無理だな。
「愛する者の元へ行きたい」「穏やかに暮らしたい」だけならまだしも、「そのために目撃者は全て殺害」という思考になっている時点でどうしようもない。
結局見つかって犠牲者の数が膨れ上がっただろうから、ここで止めるしかなかった。

政府ヒーローの椿 長司と部下のケンジが登場。
部下をハゲ呼ばわりすんな。
一応ヒーローなのに怯えられてる。
多数を救うため躊躇なく少数を犠牲にする政府ヒーローのやり方を嫌う刃。
気持ちは分かるけど、仕留めないとさらに多くの人間が巻き込まれ、生活が破壊される恐れがあったんですよね……。
エボリアが擬態できないと知っていても、共犯者の存在を警戒して全員に検査したのは好印象。
検査を切り抜けたエボリアの異変をほのかが察知して声を上げる。
彼女が気づかなくてもいずれは正体を現すことになったでしょう。
ほのかを殺そうとするエボリア……怪我してると勘違いして心配する少女をも殺すのか。

刃のプロフィールが掲載されています。
苗字が猪狩じゃなくて威借なのを疑問に思ったんですよね。強い奴に従って威張っているわけじゃないだろうと。ですので、由来になるほどと思いました。
普段は「俺、君、シニョール、シニョリータ」、たまに「お前」、素は「僕」と口調が幅広いのも、元は大人しい性格の人間がキザなキャラ作ってると考えれば納得。
周囲の本心に勘付いていたのか……辛いな。
ヒーローになる前もなった後もまともに扱われない状況で、ヒーローらしい心や正義感がゆがむのを責めるのは酷だ。
むしろよく立ち直れたと思う。

第14話 正義と秩序

怪人エボリアの運命は……ほのかを殺そうとしたらそうなるとしか。
千のレートを公表するわけにはいかないので、また刃が倒したことにしてくれました。
ごてごて単語をくっつけた技名に「おい!」と思ったら頭悪そうな技名と言われてて笑った。
人々の称賛に良心の呵責を覚えるところ、嫌いじゃない。
エボリアを倒して一件落着とはいきません。
感染拡大を防ぐため、この場の全員を処理しようとする椿。
エボリアのウイルスに感染したら5分で死んだ後同じウイルスを撒き散らす。
ヒーロースーツ以外で防ぐすべはないから全員殺すしかない。
感染が確定していない人間まで殺すのかよ……。

巻き込まれただけの一般人を殺そうとする椿を刃が阻む一方で、千は絶望していた。
ほのかも、感染した。
レート1000のヒーローでも何もできない現状を嘆く千に突破口を示したのは恵理だった。
感染したほのかに躊躇なく触れて治療方法を探す。
さらっと命を懸けるとは……千への信頼が重い。
過去に何があったのか気になります。千に命を救われたのでしょうか。

椿と刃の対決で政府ヒーローと民間ヒーローの違いが描かれます。
民間ヒーローのベルトは時間制限式で、入金の隙が生まれる。
政府ヒーローは制限時間なし。
「どちらが正しいかは知らないですが、どちらが勝つべきかはわかっているはずでしょう?」
椿のこの台詞からすると、自分達のやり方が絶対的に正しいとは思っていないのか?
思ってないなら好感持てる。完全に正しいと見なしているようだと、盲目的すぎてついていけなかったでしょうから。
刃は退かない。自分の友達が戦っているから。ここで先ほどと同じく「トモダチ」となっているのがいいですね。千に友達扱いされたのが嬉しかったんだろうな。
椿と刃、それぞれの叫びがぶつかり合う。
「失うかもしれない多くの命のために!!」
「目の前のひとつの命のために!!」
信念の激突、大好物です。
変身後の姿が一番好きなヒーローは椿のホークマンです。

第15話 提案と必殺技

「あっちは刃がなんとかしてくれる」という千の呟きにジーンときた。信頼してる。
感染覚悟で感染者連れてきたアイス屋二人組もさりげなく熱い。
治療法を考えたものの、決断しかねている恵理の背を千が押す。
「千円賭けてもいいぜ」は、他の漫画なら軽いと感じるでしょうが、この漫画だと全然違いますね。
ウイルスを死滅させるために体温をギリギリまで上げねばならず、千は変身する。

エッジマンとホークマンの戦いはホークマンが有利。
「こちとら数億の命を背負ってんだ」という台詞に覚悟がこもっている。
甘ちゃん呼ばわりされた刃も意思の強さは負けてない。
「俺ら正義のヒーローはその数億人も、目の前の命も、どっちも守るって言ってるのさ……!!」
刃のブレなさに今度は大甘呼ばわりいただきました。
しかし、後ろの人々を守るため攻撃を避けない刃の覚悟を椿も認めた。
「ヒーローなんざヤリたくねぇが」「殺す気で」ということは、一応今までは加減してたんですね。

刃ならノリノリで考え叫ぶと思ってた必殺技の名前。最初は冷めた反応だったのが意外。
ヒーローが必殺技を叫ぶ意味が考えられていると盛り上がる。
人々は、ベルトを見てヒーローが来たことを知り、変身ポーズを見ることでエッジマンが助けに来たと知る。
そして……必殺技の雄たけびが、人々の不安を吹き飛ばす!
必殺技のグランドエッジはもう少し迫力が欲しかった。
普段とそう変わらないというか、普通に避けられるように見える。
くらうのは同じでも、避けられない凄味を漂わせていれば、避けられなかった本当の理由を知った時の感慨が深くなる。

技を見切ったはずのホークマンがくらったのは、刃がベルトだけを狙っていたから。
殺す気で攻撃した己を傷つけるつもりがなかったと気づいて、足が止まった。
そこで動きが鈍ってしまう椿も相当甘いと言えるのでは。非情に徹することができないと責めるべきかもしれませんが、非難する気になれない。
ベルトを壊され、変身が解け、負けを認めつつ倒れた椿。
後はウイルスをどうにかすれば……とはいきませんでした。
謎の男の薬によってエボリアが強化状態で復活。
炎が生身の椿へと放たれる!

第16話 回想と拝借

死に瀕して苦しむ妹を見て、千が過去を思い出す。
現在の妹ラブっぷりを知っているから、「妹なんていらない」が重い。
ヒーローも一般人も怪人の犠牲になっている世界ですから、妹のそばにいる理由は可愛いだけじゃなくて命を守るためでもあるんですよね。
千は火力を調節してウイルスを滅ぼしていくが、刃を倒したエボリアがこちらに目を向ける。
刃の名を叫ぶ時の恵理の表情が……恋愛感情はなくとも、すでに良き友人にはなれている。

新たな能力に目覚めたエボリアは、ウイルスだけでなく発火性・引火性ガスも噴出できるようになった。
今治療をやめたら症状がぶり返してしまう。
千を妨害するためエボリアの放った炎を防いだのは、筋肉アイス屋二人組の片割れ……マジックテープ仮面!
彼は、強いヒーローが現場にいたら自分達はもういらないと思っていた。
千が危惧した事態になりかけていました。
だが、危険を顧みず治療を始めた恵理の姿が彼の心を動かした。
戦う力を持たない者の行動が、力を持つ者を駆り立てるのは熱いですね。
「できることがあるときにやらないでどうする!」
親友の言葉につなぎマンも変身し、火を受け止める。
無茶するなという千の叫びに「俺らのヒーロースーツはムチャするためにあるんだぜ!」と返す二人がかっけえ。
この世界のヒーローはどいつもこいつも心意気に溢れてる奴ばっかだな!
だから見ていて快いんですけど。
実力では劣っていても、できることを実行する展開が大好物です。

刃が倒れたのは、変身できない椿を庇って攻撃をくらったから。
理由を問われた彼の返答が粋。
あの勝負は俺の勝ちだから、もう敵じゃない。
キザな台詞だな!
椿に謎理論とツッコまれるのも無理はない。
続く言葉はもっとキザ。
「俺の守る目の前の命には、当然君も含まれてるのさ、シニョール」
さっき殺す気で攻撃を仕掛けたばかりの男に対してこの台詞。
甘い! 甘すぎる! でもそこがいい!
刃が甘さを発揮するのはそこまで抵抗ありません。
相手がやらかした時に何もできないようなキャラが訴えるだけだと「危険な目に遭うのも、止めるために戦うのも、お前じゃないだろ」と引っかかりますが、刃は人々を守るために戦っています。
戦闘の危険さや恐怖を味わっても貫くなら、認めたくなる。
それに、差別化の必要もあります。
主人公の千:何だかんだで他の人間も助けるけど基本的に妹優先
政府ヒーロー:多数を救うためなら躊躇なく少数を切り捨てる
というスタンスなので、まとめて守ろうとするヒーローもいてほしい。
周囲の反応もそうです。
主人公に対して:ヒーローだと知らないため、名前や功績を称賛するわけがない
政府ヒーローには:容赦ないやり方に恐怖を抱く
と分かれているので、「ヒーローが助けに来てくれた!」「エッジマン頑張れー!」という反応もほしくなる。

マジックテープ仮面とつなぎマンを倒したエボリアは目的を語る。
日常に帰りたいだけだから、目撃者であるプールの人間以外殺すつもりは無い。
それ以上被害者が出ないなら政府ヒーローにとっては問題ないはず。
聞いていた椿の表情が変わった!
「怪人と同じ言い分を、語ってたなんて笑えねぇよな……!!」
多数を救う非情な方法を選んだ椿ですが、命をただの数字と割り切ってはいなかった。
最初から犠牲を出すことを望んでいるわけじゃないんですよね。
彼はまだ己の任務を捨ててはいない。
仕事だから。給料をもらっているから。
それも立派な理由ですよ。
ただし、刃のベルトを手に取った椿はこう続ける。
「この超ダサいベルトじゃ、政府ヒーローは名乗れませんね」
ほほう。つまり今は、政府ヒーローではない一介のヒーローとして動いていると。
組織の命令を逸脱するのはまずいはずですが……。
「貰った給料の使い道まで、組織(うえ)にとやかく言われる筋合いないんでね……!!」
仕事ではなくプライベートという理屈で押し通す気か。
動くのにいちいち理由つける様はツンデレと呼びたくなりますが、この状況では組織人の性と捉えるべきでしょう。

ここで椿のプロフィール。
「特技:上司の説得」に苦労がにじみ出ている。
変な髪形と思ってたら理由があったんですね。
組織に忠実で多数を救うために少数を切り捨てようとするキャラは悪者に見えますが、そういう人物も必要です。
皆が皆情に従って無秩序に動き回ったら被害を抑えられないかもしれませんから。
それでも冷酷になりきれないあたりがヒーロー気質。
ケンジから深く信頼されるようになった経緯を詳しく知りたい。

第17話 追い風と待ち人

ガスが充満しており、他の人間が巻き添えになるため千の火は使えない。
己の力で婚約者を守れると確信し、勝ち誇ったように笑うエボリアに風が吹いた。
刃のベルトで変身した椿が起こし、ガスを吹き飛ばした。刃のベルトで変身した椿が、千が攻撃する道を拓いたという構図に燃える。
彼の語る「力で事を思い通りにする奴は、より強い力に打ち砕かれる」理論はダイ大のバーン様を思い出す。
民間人を人質に取ろうとしたエボリアを阻んだのは――つなぎマン! マジックテープ仮面!
床に倒れたまま、文字通り足止めしてくれた。
この二人がここまで活躍すると誰が予想しただろうか。

死にたくない、守るべき人がいると叫ぶエボリアに千・刃・椿はそれぞれ共感を示しつつも……。
「ヒーローとして、お前は許せん」
ここで三人が同じ台詞を口にするのがたまりません。椿まで言うのがにくい。
後に椿を評した恵理の言葉に同意。立場や信念の違いはあれどヒーローです。
三人のうち刃は戦えない状態ですが、彼の信念・行動によって椿との共闘が発生したので、真ん中にいることに異論はない。
・ベルトを壊され政府ヒーローとして行動不能=立場が変わり、一人のヒーローとして千達に協力する口実ができた
・刃に感化され、自分が怪人と同じ言い分を語っていたと気づく
という、外側と内側の変化があっての椿の協力でしょうから。
二番目が大きいかもしれない。別の要因でベルトが壊れた場合、所属の垣根を越えてここまですんなり共闘できなかったかも。
大切な相手を想い、道を間違えたことを噛みしめながら散っていくエボリアもいいな。
ぶっ飛ばされてスッキリする外道も好きですが、最期に切なさを感じさせる敵も好きです。

自分の報酬を千にあげようとする刃も受け取らない千も男気あるけど、千が貢献したのは事実なんだから受け取ってもいいんじゃないか。
千の変身について他の目撃者が漏らさないか心配でしたが、政府が厳重に口止めしてくれました。
椿に頼まれ、ケンジが刃のベルトを返却してくれた。
ってピカピカになってるー!
命を救われた恩義があるから気合入れたのか?
ボヤきながらベルトを磨きまくったんだろうなー。その姿を見たい。
任務放棄したとバレたらクビになるかもしれない。民間に行くなら今のうちと言う椿に、一生椿についていくと返すケンジ。
ここまで信頼するからにはエピソードがありそうです。
政府についてきなくさい一言を漏らす椿。「実は政府・上層部が腐敗していた」展開くるか?
不穏な気配はまだあります。
エボリアの婚約者は欠かさず手紙を書いていた。
届かなかったのは謎の男のせいだった。
エボリアの危機感煽って脱獄を決意させて、実験台にして……この野郎。
婚約者は治るのをずっと待ってると言いましたが、それが可能なら作中で取り上げられると思うんですよね。

第18話 お忍びと被り物

麗華登場。
女キャラで一番好きです。
「人気者が息抜き・お忍びで行動しているところに主人公と遭遇」「特別視しない相手に興味を持つ」のはお約束。マクロスFのシェリル・ノームとか。
「時間内はアタシの言うことなんでも聞いてもらうけど、それでもやる……?」
何をされるんだろうと恐れる気持ちと、ワクワクする気持ちが同等。ごめん千。
身構えましたが、ただの荷物持ちでした。
千にとっては朝飯前だな。もやし前。
とんでもない量を持たせるわけでもなく、千の分の服も買うし、いい人じゃないか。
機嫌を損ねたらバイト代あげないと脅すけど、実行する気はさらさらないからなぁ。
さぞワガママを炸裂させるんだろうと思いきや、常識の範囲内で拍子抜け。

男が麗華をナンパし、断られると彼女を捕らえた。男の正体は怪人でした。
強いヒーローでも生身では人間離れした力はない。
だからこそ刃はトレーニングしてるわけだな。
麗華は捕まっていながらもバイト代の千円札出して、今日は楽しかったと告げて、早く逃げるよう促す。行動の節々から親切さが溢れてません?
こんな状況で律儀にバイト代渡すことから、先ほどの脅し文句は全然実行するつもりなかったと分かる。
見捨てられない千が拒否すると、なんでも言うことを聞く約束だと返す。
自分が危ない状況で他人を気遣い、巻き込まないよう遠ざける。ヒーローの鑑か。
怖がらせようとする怪人に麗華は微笑んで言い放つ。
「クズの喜ぶことなんてひとつだってしてあげないわ」
この表情好き。

逃げた千はつなぎマンのふりして戻ってきました。
ちょっとその変装は無理があるなぁ。
裏声に笑ってしまう。

エッジマンの紹介が載ってました。素質の高さがそこかしこに窺える。
初変身でレート10になれるのは相当珍しいのか。メディアにも注目されている。
単純な能力のヒーローほどスーツ自体の性能が高いのはイメージに合いますね。特殊能力持ちが基本性能まで高かったら強すぎ・便利すぎますから。
刃を生やす能力はシンプルでも、本数や硬度、切れ味など伸びしろは大きく、スーツの性能も高いので、エッジマンはこれからも強くなりそうです。

第19話 バイト代と花束

一目でニセモノだとバレバレなのにツッコまないアシュラウドは勿体無いな。
甘く見て一発殴らせてやるといってそのままやられる。南無。
何か隠してる様子の千の後をつける麗華。
彼が入ったのは「花とひき肉」屋。
「今日は食用じゃないお花?」
店名、台詞、どこからどうツッコめばいいのか。

花を買った千がほのかとともに訪れたのは母親の墓。彼が千円を求めていたのは墓参りのためだった。
それを目撃した麗華は、花を用意してあげました。
兄妹が水酌んで戻って来た時に用意済みということは、猛ダッシュで買いに行ったんだろうか。ひょっとして変身した?
いいシーンをぶち壊すような発想してしまいました、申し訳ありません。

一方、汗まみれになって筋トレしてる刃に連絡が入る。
その内容は「怪人を匿って逃走しているヒーローの捕獲作戦」だった。
また穏やかじゃない話が。

ホークマンの紹介では嫌な予感が……。
索敵や移動など便利な能力を備えていますが、それゆえに強敵にやられそうで怖い。

おまけ漫画では恵理と刃が仲良さそう。
お調子者として呆れられる刃ですが、千が貧乏ぶりや妹の溺愛ぶりを発揮した時は彼がツッコミに回る。
もう一つのオマケ漫画ではつなぎマンとマジックテープ仮面が出てきた。彼らも仲良くて何より。
湯沸かしマンって……そう表現したくなるのは分かるけど、弱そうなので他の名前にしてあげてください。
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