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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

TOWER of HANOI

TOWER of HANOI

せがわ様制作『TOWER of HANOI』をプレイしました。
本編をプレイした時のバージョンは2.03で、クリア後おまけ部屋に行った時は2.04です。

AI搭載型アンドロイド・HANOI。彼らの中には人間に反感を抱いていたり、職務に消極的だったり、問題を抱えている者もいる。
主人公のコーラルは彼らのストレスを解消するために、TOWERという仮想空間で人間を模した敵を倒しながら進んでいく。


・台詞量の暴力
最大の見どころは台詞の量。
細かさが鬼。頭がおかしくなりそうなほど。
本部内での仲間との会話は晴、雨、夜によって内容が違います。
同行を求めた時の反応は共通ですが、話しかけた時、世間話、なんでもないと言った時の返答は変わります。
さらに、親密度が上がるとそれらも変わります。
これが人数分ある。
仲間に料理を作ってもらうこともできます。親密度によって作る料理、成功した時・失敗した時の台詞が変わります。
これが人数分ある。
戦闘中カットインとともに仲間の攻撃や回復が発生することがあるのですが、その時の一言も親密度によって変わる。
ボス戦の途中、敵が台詞とともに攻撃してきた時に一言ずつ返したりもする。

また、ダンジョンに行く時はパーティーの一人に特別監視タグというものをつけることができます。
ダンジョン内のオブジェクトを調べると反応したり、イベントシーンで主人公と会話したりするのですが、これも人数分あります。
さらに、攻略後のダンジョンに行くと崩壊していて、オブジェクトも反応も変わります。
いちいちタグを付け替えて確認するより、一人にずっとつけて周回する方が早いのではないかと思うほど。
ちなみに、タグをつけていないとコーラルがオブジェクトに反応します。周回するなら+1ですね。
さらに、主人公との親密度だけでなく、仲間同士の特定の組み合わせでの親密度もあります。
親密度を上げていけば彼らの会話が発生します。

・役目を背負う者達
この作品では「役目」がテーマと言えるかもしれません。
「〇〇は××すべき」「××するのはおかしい」に縛られ苦しむ者、受け入れる者、反旗を翻す者……様々です。
役目からの解放を望む者の中に「男ってのは~」「女には~」という言い回しをするキャラがいるのも、「『こうあるべき』を強いられる苦しみを味わっている者も、無自覚に他人に押し付けている」ということを表現しているのかもしれません。
ダンジョンの敵として登場する「〇〇な男・女・老人・子供」は役目・属性が強調されています。
人間を模した敵をぶっ殺してストレス発散させる世界であり、マイナスの要素を醜悪なまでに押し出した「心置きなく倒せる敵」として設定されている者が大半です。

負の面ばかりを取り上げましたが、それだけではありません。
抑圧や苦しみが描かれるからこそ、自らの意思で進む道……「役目」を決めて貫くことの重みが増します。

・HANOIの扱い
HANOI達のストレス解消のために用意されたTOWERですが、どこまで効果があるのか疑問です。
敵がグロテスクだし、ダンジョンが社会のドロドロ体験ツアーだし、かえってストレスを溜め込んでもおかしくありません。
そもそも戦闘を好まぬHANOIもいます。
それに、人間に虐げられて苦しんでいるHANOIにとっては、ゲームの中で人間モドキを虐殺してスカッとしたところでたいした意味はありません。現実が変わらないとまたストレス値が上がるだけです。
「データのサンドバッグ殴って喜んでろって言うんですか? 馬鹿みてェに?」と問われた時にぐうの音も出なかった。
そう考えると、TOWERの在り方は「HANOIにはこんなもんでいいだろ」と言わんばかりです。
HANOIを癒し人間との関係を改善するための場所ではなく、適当にガス抜きしてこき使いたい意図が透けて見えます。せめてもう少し隠せよ……。
あまりにもいびつで一方的な関係であり、物語で詳しく描かれるのは理不尽な目に遭ったHANOIばかりです。

そういうわけで、可愛い女キャラに開始直後の興奮とともに話しかけたところで叩き落されました。
「この子可愛い! 仲良くしよう!」とウキウキしながら話しかけたら、人間がわたしに優しくするのは抱きたいからだよねと言われたり、別のキャラには男性恐怖症だと言われたり、別のキャラには喉を焼きつぶされたから喋れないと紙に書かれたり、「あ、お……う……」となりました。ち、違う……そんなつもりじゃ……。
そりゃ反抗的になるしやる気もなくなるわ。
男キャラも負けてはいない。
ナナシからは散々こき使われて人間大嫌いなんで話しかけないでくださいストレス溜まりますと言われて落ち込みました。
敵意のこもった「人間様」呼ばわりに悲しくなったけど、ナナシの境遇を考えれば刺々しくなるのも仕方ない。
ストレートに人間怖いと言われたら「私コワクナイヨー、仲良クシヨウ」で接しようと思えますが、「人間様のおっしゃることには従いますよ、HANOI風情が逆らうなんてとてもとても」という態度だとどうしたらいいのか……。彼はそう言わなければ生き延びられなかったんですよね。
元気なローランドとは気楽に喋れると思ったらそんなことはなかった。
本人は「殺人兵器」と呼ばれることを誇っているけど、周囲の人間にとってはおそらく蔑称なんだろうな……と考えてしまう。

HANOIの被害が目立ちますが、だからといって「HANOIはみな純粋で善良! 人間は愚かで醜い!」と言うつもりはありません。
人間に影響を受けた結果とはいえ、仲良くなろうと頑張った監察官の殺害を試みたらしいHANOI達もいます。えげつねぇ……。
人間を害することはできないはずですが、そういう制御ごと完全に壊れてしまえばやれるのかもしれません。
主人公の前に集められたHANOIの境遇だけを見て、人間全員がクズだと決めつけるわけにはいかない。
コーラルみたいに人格をもった一つの存在として接する人間もいれば、便利な道具として丁寧に扱い、上手く回っているところもあるでしょう。
また、心を持つ彼らを人間とみなすといっても、何もかも人間と同じように扱えばいいわけではないはず。
体のつくりが違いますし、〇〇用として使命をプログラムされていますから。
一般人の考える幸せがHANOI全員にそのまま当てはまるわけではありません。
戦闘以外求められず、軍事用であることに誇りを持っているローランドに、いきなり「戦うなんて辛いに決まってるからやらなくていいよ!」と言おうものなら彼は苦痛を味わうでしょう。

・際限のない欲望
面白く、引き込まれた作品だからこそ、もどかしい気持ちが湧き上がります。
不満というより要望に近いのですが、もっと色々見たいと思ってしまいます。
本編で目立ったのは数字の苦痛にまで思い悩むお人好しのコーラルとドクズの人間の両極端で、一応出てきた中間くらいのキャラが印象が薄いんですよね。
HANOIへのお土産で頭を悩ませる監察官や、迷子のHANOIに慕われていた監察官などがそうです。
彼らもろくでもない監察官の可能性はあるけど疑い出したらキリがないので……。強引に悪い方に考えるのもどうかと思うので、それなりに善良だと捉えています。
わざわざ彼らを悪者にしなくても酷い人間は作中にいくらでもいるからな。
彼らの様子をもっと詳しく知りたくなります。監察官にも、HANOIの人格を尊重している者や、ドライな見方をしてもケアはしっかり行う者がいるでしょうから。
TOWER内に限らず、現実世界での人とHANOIの様々な組み合わせを見たいと願ってしまいます。
道具扱いする者の方が多いとはいえ、色んな形があって、上手くいっているところもあるはず。
とはいえ、本編でそれらを求めるのは無茶だということもわかります。
仲間十人でも大変なのに、シューニャ側の心情や背景、数字達の苦痛に頭を悩ませているところに他のチームや現実世界の様々な関係性まで盛り込まれるとプレイヤーがついていけなくなるでしょう。

ここからは各ルート・エンディングについて語ります。
ネタバレが含まれます。
今回の感想だけでなくキャラクターについて語る時もそうですので、気になる方は速やかにプレイされることをお勧めします。

まずはシューニャルート・TrueEND2……T2の方から。
「これ以上皆を好きになる前に辛い方を見た方がいいかも。というか今のうちにやらないとストレス値が足りなくて最初からやり直すことになる!」と急いでT2から回収。
適度に戦闘して料理も作ってもらったりしていたらストレス値が50以上になることはまずないので、突入しづらいルートです。
ストレス値を上げるイベントは限られているので、親密度を上げすぎるといけなくなる。

コーラルが敵として倒していく数字達に命や心を見出し、自分の役職に疑問を抱き、罪悪感に苛まれる。
数字・HANOIだけでなく人間……コーラルも「役目」を背負っているのだと突きつけてきます。
現実世界のカウンセラーがまるで当てにならなくて笑ってしまった。
カウンセラーの台詞は無神経に聞こえますが、「ゲームだから深刻に考えるな」という言い分自体はおかしくないんですよね。
私も、『ゲームのキャラだから』コーラルやHANOI達にとって残酷なT2へとわざわざ進ませている。
ただ言い方がなぁ……適当というか投げやりというか。

コーラルも含めて役目がある者達を無理矢理解放するのがシューニャルートであり、T2です。
ストレス溜め込んで疲れ切っている状況で「もういいよ」「解放しよう」と言ってくれる相手がいたらそちらにつきたくなるよな。
コーラルが監察官の役目を放棄したことで、残されたHANOI達が敵として立ちはだかる。
……先にT2を見て正解でした。
親密度がCだと戦闘前の会話に台詞が追加される。
鬼か!

初めてT2に突入した時に親密度Cだったのは、クレヨン・ナナシ・ローランドでした。
クレヨンの泣きそうな顔に呻くしかなくなり、ナナシの中で芽吹くはずだった信頼を摘み取ったことを知り、縋るような気持ちでローランド戦に臨みました。
軍事用であることに誇りを持つ彼ならば、ただ戦おうとしてくれるのではないか。上官でなくなり、敵に回った主人公を薄汚い裏切り者として排除するのでは。
そう思っていたら晴れやかな笑みとともに友情の可能性を語られて叩き落とされました。
「元」仲間の反応の違いに個性が出ていて心を抉られるのが楽しい。
人間に失望しきった者、仲間を守るために戦うことを決めた者、己の今までの接し方を振り返る者、帰りを待つ相手のために生き延びようとする者。
敵対したことでいっそう好きになったのはキャメロン、ジョルジュ、ミラですね。
キャメロンは仲間の未来を守ろうとする魔法少女の肩書に相応しい英雄ですし、ジョルジュは自分に滅びをもたらす相手に澄み切った心で相対するし、ミラは包容力。

後で親密度Cのキャラを増やしてやり直しました。
メリーティカ・キャメロン・ジョルジュ・クレヨン・ナナシ・ローランドの追加台詞をチェックできました。
つれぇ……。
一切料理せず的確にストレス値を上げていけば全員親密度Cにして突入できるんでしょうね。
でももうやりたくない。
一番好きなのはキャメロン戦のBGMかもしれません。
肝心の、T2の結末がどうだっかというと……。
大きな変化なんですが、自分の未来を捨て、仲間達を裏切って敵に回して殺して得た成果と思うとささやかです。
人々の意識を一気に塗り替えるなんて無理なんですけどね。

TrueEND1へ向かう前に各自の親密度を上げていく。
全員の親密度をAにして、HANOIルートにいざ突入!
「親密度Bだと怪我したナナシをコーラルが心配したけど、逆も見たい。ナナシを庇って怪我するといっそうよし」と思っていたら、コーラルがタグをつけていたナナシを庇ってシューニャの攻撃をくらったので驚きつつ喜びました。我ながらひどい奴だ。
台詞が変わるんじゃないかと思いながらナナシに話しかけたら正解でした。
「監察官……ケガ、大丈夫ですか? 俺なんか庇わなくても良かったのに……馬鹿な人ですね」
俺「なんか」なんて言うなよ。そういう言い方したら悲しむのはコーラルだぞ。
「……とにかく、すみませんでした。けど、これからは、自分の身を第一に守ってください。いいですね?」
きっと自分を責めただろうな。もしかすると過去の光景が頭をよぎったかもしれない。
「……そう約束してくれないと、俺はもうお供しませんよ。自分のせいで誰かが怪我するなんて、洒落になんねェ……」
親密度を上げると連れて行ってほしいとアピールする彼が、一緒に行かないというのが重いですね。

せっかくなのでローランドでも見てみました。
何故ローランドかというと、自分が盾や囮になる気満々のキャラだからです。
どのHANOIもコーラルを心配する気持ちは強いけど、ローランドにはさらに軍事用の誇りがありますから。
「し、司令官殿ッ……申し訳ありません! 俺は……本来だったら、俺が貴方を守らねばならなかったのに……」
その言葉を待っていた。
「俺は、自分が情けない……ッ!! 上官に守られるなど、あってはならんことです! 今後は軍事用の名にかけて……」
期待通りの反応をしてくれる。
「と、とにかく……ありがとうございました。次こそは、俺が!! 貴方を守ります!!」
最初から最後まで素晴らしい反応を見せてくれてありがとう、ローランド。

第二の塔跡地ではシューニャの手紙が心をちくちくつついてくる。
数字達を意思や命ある存在とみなしながら、目的のために犠牲にした自覚がある。『融解』に同意していない者達も踏みにじっている。
シューニャは自分を残酷だと言っていて、所業を見れば確かにそうなんですが、残酷なだけでもないと思います。
第三の塔ではHANOIの作られた経緯が語られる。
コーネリアはともかく、ヘンリーがなぁ。
HANOI達に、人間の不満のはけ口となりながら従順に役目を果たす機械であることを求めた。
ここだけだと傲慢に見えますが、続きを読むと印象が変わりました。
彼曰く、腐った人類には傷つけても構わない存在が必要。人間なんてそんなモノ。
「人間は素晴らしくて偉大だから奉仕されるべき」という人間至上主義ではなく、「人間なんてその程度」という失望があったのは予想外でした。
そしてAI国際連盟が真っ黒。
シューニャ達を倒しただけではめでたしめでたしにはなりません。

ラストダンジョンは短め。
「コーラルとパートナーの二人しかいない&END回収で何度もクリアすることになる」のでありがたい。
初めてのHANOIルートはナナシでクリアしました。
ラスダンに連れて行けるのは一人だけと言われてナナシとクレヨンで迷ったんですよね。
ナナシENDを見た後、突入前からやり直して他の仲間達のエンディングも全部見ました。

ラスダンでコーラルは帰りたくない仲間に対しては帰さないと告げつつ、「役目」に苦しむHANOI達を保護する組織を作る意思を明かす。
ナナシ、メリーティカ、クレヨンがコーラルのところにいる……救われた……。
コーラルが結婚するかどうか、相手が誰かで分岐するくらいで、大きな一つの流れにまとめることができそうですね。
ナナシ・クレヨン・メリーティカがコーラルのすぐ近くで支えて、キャメロンは手伝いつつ弁護士を目指し、シンディは歌手として成功して、ジョルジュ・ミラは料理・育児に励み、ローランドは軍事博物館の案内人をやって、ノロイは神主と仲良くして、アダムスはHANOI教を作る。
まだまだ困難は多いけれど、ハッピーエンドと言えます。
救いがあった。
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