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ひよこの足跡ブログ

漫画やゲームなどの感想を書いています。 ネタバレが含まれることもありますので、ご注意ください。

TOWER of HANOI キャラクターについて 後編

TOWER of HANOI キャラクターについて 後編

今回語るのは、ローランド・クレヨン・ナナシです。
ネタバレ全開です。


・ローランド
「古臭い殺人兵器が……戒律を捨てて人と情をかわそうなど、どだい……無理な話だったのですよ」
「俺が自爆すれば、州がひとつ滅びるくらいの火力が出るはずですが……」
「俺を……役立たずの木偶人形にしないでください、司令官殿!!」
「俺はこれまで、軍事用であることを恥じた事など、一度もなかったのに……貴方のせいで……」
「……いいんです、分かっていました。ただの殺人兵器が……情の交流を夢想すること自体、間違っていたのです」
「ご……ご趣味は!?」
「お前なら大丈夫だろうとは思ったよ。見かけによらず、根性あるからな」
敵対した時の戦闘グラフィックがカッコいい!
州一つ滅びる自爆装置を使おうとする男。
いざという時は自分を囮にして逃げてくださいと言われて「コーラルがそんなことする奴だと思うのか?」と思ったら、常套手段だったからと……。
生身の人間を囮にするより兵士の生還率や任務の成功率は上がるはず。ローランドもそれを喜ぶでしょう。
でもなぁ……。
 
「こういう忠誠心あるキャラ好きなんだよなー」
「思考がシンプルで、いつでも元気に喋ってくれるからありがたい」
と楽観的に構えていたらT2で叩き落とされました。
お、お前……そんなこと考えながら笑顔でいたのか。自分を殺人兵器、コーラルを司令官殿と呼んでいたのか。
薄汚い裏切り者と呼んでくれて「ああ、何も考えず闘える」と安堵したら友情の可能性を語られて頭が爆発しそうになりました。
晴れやかな笑みを浮かべるなああぁぁ!!
敗れても清々しい笑みとともに消滅する。
このルートの、自分を古臭い兵器と思ったままの彼にとって、死は解放だったのかもしれません。
最期のつもりで攻撃してきますから。
彼との戦いは悲壮で燃えました。軍事用だけあって、高い火力での殴り合いが楽しい。

T2を見たり過去を知ったりすると、威勢のいい「司令官殿!」が痛々しく感じられる。
彼の忠誠心は本物ですが、自分の心を守るためでもあったと思うと……。
人間と対等な関係にはなれないと諦め、期待しないようにしていた。
そう思うと彼の「司令官殿!」は、ナナシの「人間様」と似ているかもしれません。

ラスダン突入前、コーラルが軍事用への「命令」じゃなく、友達への「頼みごと」としてパートナーになることを頼むと……。
「貴方がそんなに高圧的な人間でないことは、今までの付き合いで分かっています」
初期はコーラルをただの「司令官」「上官」として扱っていたローランドが、内面を見て、語ってくれる。
「今は俺も、軍事用としてではなく……ひとりの人格として、貴方の役に立ちたいと思っているのです」
自分を道具扱いしていた彼が、人格という単語をわざわざ持ち出すのが感慨深い。この時点でエンディング迎えた気分。
砕けた口調も披露してくれます。
「……まったく、情けない奴だな。しょうがない、付き合ってやるか!」
友人として接してくれている……!
コーネリアとの絡みもありますね。初期に作られたからな。
ローランドは指示を仰がず、自らの意志でコーラルとともに行く。
 
ラスダンのカットインでも「この戦いは、俺の意思だっ!」と宣言するのが熱い。
ローランドもメモを取る派でした。
親密度会話では余裕の態度。
活を入れるよう頼まれたローランドの台詞に笑った。
「ナヨナヨするなッ、ヒヨコ野郎!! 次に弱音を吐いたら、ニワトリになる前に食卓に上げてやるからなッッ!!」
ローランドの罵倒は語彙が豊かですよね。それで気合入るコーラルも根性あるよ。
休憩では、珍しいことにローランドの語気が弱まっている。
敵を過剰に憎悪していた彼がシューニャを恨む気になれない。
それを劣化と捉える彼と、進歩だと肯定したコーラル。
そういえば、現実に戻ったローランドがどうなるかはあまり考えてなかったな。ナナシやクレヨンみたいに帰りたくないとは思ってなさそうですが、ジョルジュやミラみたいに意欲を取り戻したパターンでもないですし。
ローランド自身どうなるか予想できないとのこと。
軍事用は廃棄するにも金と手間がかかる。確かに、ポイ捨てはできないでしょうね。
安全な仕事がいいというコーラルにローランドが同意した! 以前の彼ならば過酷な戦場を求めたでしょう。
撃破後は、己のやるべきことから逃げないコーラルの姿に、ローランドも覚悟を決める。
「……俺も、もう逃げません。古いものが淘汰されゆく、この時代でも……俺にしかできないことがあるはずです」
ここからどう動くか読めない。

エンディングでは……軍事博物館?
意外なところに来たなと思ったらクソガキ呼ばわりで笑いました。相変わらずの大声。
人間の子供をクソガキ呼ばわりできるのは強い。
彼は戦争を体験してきた生き証人として、博物館の案内人になりました。
コーラルのことを「お前」と……友だちじゃん。
すっかり丸くなったな。
「よし! 戦争のない、平和な世界を祈って……このあと、ビールでも飲みに行くか!」
ローランドは殺人兵器ではなくなった。
T2で言及した「市民の拠所」になれていることが、とても嬉しい。

ここからはストレートに虐げられている二名。
焼きごてを食わされ声と知性を失い給料はピンクのクレヨンとスケッチブックだけのクレヨン!
死体処理だの薬の取引だの汚れ仕事をやらされ続けて路地裏で寝て名前すら無かったナナシ!
幸せになってくれ。幸せにしないと。幸せにする。

・クレヨン
『たたかう、しないと……なんだか なみだでそうなの。あなたのかお、とてもなつかしい……』
『あついやきごていたかったけど、ピエロはないたらいけないんだよ』
『だって、ピンクはナナシのいろだもんね。わたしのだいすきなとくべつないろ!』
『てきこわかったけど、だんちょうだとおもってがんばったよ!』
『ピエロはないたらいけないから、いたくてもなかないんだよ』
「っ……」
「コーラル、笑って、笑って! コーラルのにこにこ笑顔、クレヨンだーいすき!」
敵対した時の戦闘グラフィックがカッコいい!
可愛い・無邪気というイメージが妖艶・危険にガラリと変わった。
いい子。
反抗的な態度を取ると暴力を振るわれる境遇だったので、「いい子」と肯定するのはいかがなものかと思うけれど、そうとしか言えないんです。
命令抜きにしていい子です。
人間に酷い目に遭わされたのに、全体を憎むのではなく分けて考える。
嫌な思いをしたときにひとくくりにして考えてしまいがちなので、個人を見ることができるのはすごいと思います。
力を貸した人々や、笑顔を向けてくれる客がいたから人間=全員クズという思想にならなかったのかもしれません。
……前者は制裁を受けてしまいましたが。
自分もつらいのに仲間を笑顔にしようとするのも、すごいことです。
過去話の胸糞悪さはトップクラス。
「宗教とか軍とか絶対ヤバいネタがあるだろ」と警戒していたらサーカス団がぶっちぎっていった。決めつけてすみませんでした。
何だよあのサーカス団?
安易にキャラクターに乱暴な言葉をぶつけたりすべきではないと分かっていますが、団長は、あの男は……。
おーいローランド、サッカーしようぜ! ボールは団長(アイツ)な!
クレヨンを逃がそうとした人々まで見せしめで酷い目に遭ったのが、彼女の心を深く傷つけたんでしょうね。
『夜の木』の管理人はサーカス関係者なんでしょうか。

T2で共感してくれるのが嬉しく、悲しかった。
戦わなくて済むかもとほんのわずかに期待したら……クレヨンがクレヨンじゃなくなった。
HANOI達と戦って引き返す時の本社のメッセージは「うるさいな」で済んだのですが、クレヨンに対する仕打ちはさすがに腹が立ちました。
最期に笑ったのは、記憶を取り戻したんでしょうか……?

HANOIルートでは01の笑顔の仮面を指摘。
彼を笑顔にできなかったことを悲しみもする。
ラスダン突入前はコーラルに笑ってほしいと語る。
二人とも皆の笑顔のために頑張ってくれ。自分達も含めて。
親密度会話では絵本読んでる。
ずっと同じ絵本でいいのか尋ねた時の答えが、ちょっ……!
『サーカスもどっても、えほんないでも、かんさつかんいないでも……ちゃんとぜんぶおもいだせるように』
そんな……。
コーラルも言葉が見つからない。
『クレヨンがしあわせのことをわすれるしないように……おねがい』
聞いてるコーラルの方が辛そう。何百回でも読んでやれ。
休憩ではサーカスに帰ることについて。
『クレヨンかえりたくない。サーカスにかえりたくない!』
「ピエロは泣かない」という言葉に従って笑顔を作ってきた彼女が、泣き顔を……。
当たり前だ! 誰が帰すか!
『たすけて、わたしをサーカスにかえさないで』
よしきた! よく言った!
ラスボス撃破後、コーラルが彼女の帰る家になると宣言し、焼きつぶされた喉を治すことも約束。
エンディングではHANOI保護センターにいる。コーラルと、人間を信用できないHANOIとの懸け橋になっている。
声が出ている。
最後の笑顔がまぶしい。
今の彼女の笑顔は、ピエロだから浮かべているものではないんだ。
「コーラルが困ったり、悲しい時……今度はわたしが、心のストレッチしてあげるの!」
お互いにストレッチしような。他の人にも。
予想以上に爽やかだったローランド、予想以上の重さだったナナシと違い、ど真ん中に来てくれました。
望んだものを望んだ形で出された。直球で。

・ナナシ
「……残念ですよ、監察官。アンタのことは……少しだけ、信じてみたかったんですけどね」
「『滅相もないです、人間様。HANOI風情が申し訳ありません』。そう言ってご機嫌とってりゃ、殺されはしないからな」
「アンタも大概……いい人のフリが上手いですね。その化けの皮は、いつ剥がれるんです?」
「いい人のフリはもう見飽きましたよ。いい加減本性出しちゃくれませんかね、人間様?」
「そんなこともあろうかと、アサリの砂抜きしといたんすよ」
「そういうトコにほだされたヤツが、今、目の前にいるじゃないですか」
「この書類、アンタがくたばるまでには必ずサインして下さいよ」
外見からチンピラだと思いがちですが、とても真面目。掃除当番もちゃんとやる。
仲間想いだし子供に優しい。クレヨンとの会話に浄化された。

名前すら無いままこき使われ、死体処理や人さらい、薬の取引といった汚れ仕事を押し付けられ、路地裏で寝ていた。
過去話の「また殴られる」という表現からすると、ちょっとでも反抗的な態度を取ったら暴力を振るわれたんでしょうね……。
過去を知ると迷子に優しかった理由が理解できてしまう。
「人間様」の顔色を窺うことも媚を売ることも慣れているはずの彼が、機嫌を損ねてはならない監察官に喧嘩を売るような態度を取ったのは、人間との関係に期待しないためでしょうか。廃棄されようと構わないという自暴自棄か。

環境が環境だから当然とはいえ、全部「人間様」で片づけようとする姿勢に引っ掛かったので、コーラルがツッコんでくれてありがたい。
ナナシの境遇を考えれば仕方ないんですけどね。名前すら与えられず人格を顧みられずいつ処分されてもおかしくない状況で、人間一人一人の内面を見て接しろと要求するのはあまりにも酷です。クレヨンはまだサーカス団以外の人間と交流して温かさに触れる機会もあるけど、ナナシは難しい。
おそらく「HANOI風情」「人間様」という見方は彼がずっとされてきたもので、彼も同じ様にしただけです。

T2で精神をガッツリ削られました。
ナナシに遠慮がちに接していたコーラルが強気になるのが悲しくも熱い。
許してくれなくていい。憎んで殺すつもりでやってくれ。コーラルの口からそんな言葉が出るなんて。
それを聞いたナナシの反応もまたいいんですよ。
「そこまで……思いつめてたんですか。ンなこと、俺達には一言も……」
ここで「もし」を想像してしまったのかもしれません。
コーラルが悩みを打ち明けていれば。ナナシ達が気づいていれば。
親密度Cの台詞がキツい。
「少しだけ、信じてみたかった」は、信じると決めた親密度Bの台詞と対比になります。
残念だと言うからには、心は信じる方向へ向いていたはず。
心を開くまであと少しだったのに……!
「始めましょう、クソ野郎ども。俺を殺して、血まみれの自由でも手に入れたら?」
ナナシはそういうけど、勝ったとしてもコーラルは罪人として自由を奪われるんだよ。
諦めたような笑みを浮かべて戦うので燃えにくい。
01の妄想の中のナナシも、こんな表情で抵抗せずにやられたんだろうな。

立ち直ってHANOIルートへ。
親密度Bの台詞!
「確かに、アンタは……他の人間様とは、違いますよ。そう……信じてもいいんですね?」
ぐわあああ!
親密度CのT2を先に見たからこそダメージが……。
温厚なコーラルがナナシの身を案じて怒鳴った。
コーラルが大声を出す珍しい事態にナナシは目を見開き、相手が自分のことを本気で心配していると知った。
怒鳴ってしまったことをコーラルが詫びるのがいいですね。組の人間と同じことをしているのではないかと、自身を省みることができている。心から心配しての行動だから全然違いますが。
親密度Bになってからの心の開き具合がすさまじい。
料理を頼んだ時、「アサリの砂抜きしてるー!?」とギャグ漫画のツッコミ役みたいな勢いで叫びました。
人間に散々こき使われて人間を恨んでいたHANOIが。
料理を作る時「食えりゃ何だっていいでしょう」「凝ったモンが食いたきゃ他の奴に頼んで下さい」という姿勢だった彼が。
待ってましたと言わんばかりに下ごしらえを済ませたうえで料理を作るように……。
親密度が上がるにつれて彼の出す料理は手間がかかるものへと変化し、最終的に「コーラルが好きそうな」料理を出してくる。レシピを調べて、練習して、時間をかけて。
何なんだコイツは。

ラスダン突入前はコーラルが詳しく話す前に引き受ける。
「ったく……待ってる方の身にもなれよ」
おっと、さりげなく口を滑らせた。実は待ち構えていたんですね。
親密度会話ではぎょっとしました。
こんなところで心中なんて御免だと言いつつ……。
「現実もどって、組のヤツらに使い潰されるよりは、そのほうがいいのか……?」
いやいや何言ってんの!?
駄目です。
仲間の命がかかってるから思いとどまったけど、そうでなかったら危なかったのでは。

ラスボス戦前の休憩では……。
「アンタは俺と違って……死んだら悲しむ人が、現実に山ほどいるでしょう? 駄目ですよ、大事な人を泣かせちゃ」
そんなこと言うなよ。ナナシが死んだらコーラルも仲間もプレイヤーも悲しむって。
「君が死んだら……僕は悲しいよ」
その通りだ、コーラル。
ここでナナシの口から決定的な言葉が。
「監察官……俺……帰りたくないです。現実に戻っても、あの組にだけは……」
諦めに支配されていたナナシが声を上げた。
こういう弱音を吐くことはしなかった彼が、助けを求めている。
「あそこに戻れば、俺はまた……人間を恨むようになります。それこそ、身体を使い潰されるまで、一生……」
せっかく人間に対する見方が変わったのに、コーラルへの気持ちまで憎悪で塗りつぶされたくないよな。
何とかしてくれコーラル!

エンディングではコーラルをどついて起こしてる。遠慮ないな!
「人間様」に歯向かうなんて考えられなかったのに、変わったなぁ。
頼りないコーラルにナナシの痛烈なツッコミが炸裂。
「俺なしでどう生きてくつもりだったの?」
辛辣。十年一緒に暮らしてきて、コーラルは生活能力のなさを見せつけたらしい。
ナナシは秘書的な立場でコーラルを助けているのに、給料も受け取らない。
それコーラルが心を痛めないか? ちゃんと受け取ることが相手の助けになることもあるのでは。
気にしているコーラルは、欲しいものやしてほしいことがないかナナシに尋ねる。
「僕にできることなら、何でもするよ!」
いいのかそんなこと言って。面白い無茶ぶりされたらどうすんだ。
「その言葉を待ってましたよ、施設長」
待ってましたと言わんばかりにナナシは書類にサインを求める。
え、何?
HANOI相対死同意書? ? 何?
コーラルが死んだらナナシも廃棄されるという書類で、コーラルの同意が必要。
おい……!
後を追って死にますって言ってるようなものじゃないか。
ラスダンでいっそ心中する方が……と漏らしたのは本心だったんだな。
まさかお前、コーラルからこの一言を引き出すために、十年間無給で働いて待っていたのか……?
いつでも書類を出せるよう準備して……?
グイグイくるのがメリーティカなら、死角からぶん殴るのがナナシですね。奇襲が上手い。

予想外だったのはコーラルの反応もです。
彼はナナシに生きていてほしいけど、ちょっと嬉しいとも思っている。
う、嬉しいのか……。
強く説得しないんですね。
ナナシが味わった苦痛を知っているから、安易に「そんなの間違ってる」とか、「生きてれば希望が」とか言えないんだろうな。保護活動の中でHANOI達の悲惨な境遇や絶望を知ることも多かったでしょうし。
ナナシは他のHANOI達よりも死に方を重視しているように見えます。T1でもT2でも。
「ろくでもねぇ」人生を送ってきた彼にとって、「悪くない人生だった」と思いながら死ねるのは最高の幸せなのかもしれません。
「仕方ないから、俺が最期まで面倒みてやるって言ってるんです。……有り難く思えよ?」
釈然としない気持ちもありますが、「アンタが死んだら俺も死ぬから長生きしてください」というエールだと解釈しよう。
コーラルに健やかに過ごしてもらうしかありません。
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